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番外編
番外1 反省はしているが 【後】その2
しおりを挟む「ここ、良いですか?」
「……ァ?」
昼時のピークを過ぎ、客もまばらになった酒場の片隅で。
すっかり冷めたチキンソテーをフォークで八つ当たりのように突き、不貞腐れていたシャルトーに問いが投げかけられる。
視線を上げれば、己と近い齢の、癖のない紺碧の色の髪をした青年が一人。
店内を見渡せば他にも空いた席があるにもかかわらず。
わざわざ自分のテーブルの向かいを選ぶ理由はなんだと眉間に皺を寄せかけ、ふと見覚えのある顔だと気づく。
「ン、あんた……」
「こんにちは、同じギルドの正所属員をしてる、ルード・リングランドです」
「知ってる。新人のお守りしてる、珍しいヤツ」
「あはは、知って頂いて光栄です」
座れば、と顎で指すシャルトーの半分嫌みの入った言葉にも、ルードは笑って流しテーブルの向かいに腰掛けた。
ギルドに登録している者の7割は、シャルトーのように他のところから流れてきたり、新たに参入したりする流動的な者が多い。
多くは何処かへ流れたり、個人と専属の雇用契約を結んだり辞めたりして、5年以上一つのギルドに居座る人間なんかは一握りだ。
そんなものだから、ギルドは継続的な仕事の消化と存続のために仮所属員を勧誘し、なんとかギルド専属の正所属員になって貰おうとするのだが。
腕前が上がれば上がるほど、個人で依頼を請け負う傾向が高く。わざわざ正所属員になるのは何かしらの事情がある者や、それほど実力のない者、一点特化や変わり者かお人好しといった部類だ。
その中で、このルードは『お人好し』の部類だとシャルトーは記憶していた。
シャルトーの所属するギルドは比較的胡散臭い仕事の割合が少ない、わりと『模範的なギルト』の枠組みに入る。
100%後ろ暗い仕事がないとは言わないが、それでも表に開示出来る仕事な分、集まってくる人間もそれなりに『マシ』だ。
とはいえ、ギルドの新参者というのは大概煩わしく厄介なもので。
新参者でも、流れてきた人間はある程度ギルドの流儀がわかっているから、適度に『締めあげれ』ばコントロールはそれなりに容易い。
だが新人は暗黙のルールや、相手の力量を測る術どころか己の実力を自覚出来ていない者もいるため、色々と『やらかす』者が度々発生した。
だから新人の世話をギルドの正所属員といえども忌避しがちだ。
しかしそういった新人の相手がルードは上手いらしい。
実力は丁度真ん中くらい。弱くもないが、強いか? と言われるとやや悩む。評価が強いと弱い、両方に分かれるようなそんなレベルだが。ただギルドに所属するのならこういう癖の少なくある程度の実力のあるルードは使い勝手は良いのだろう。少なくとも、正所属員になったばかりのシャルトーとて小耳に挟むくらいには。ギルドのメンバーとしての覚えは悪くなかった。
しかしながら。
「それデ、わざわざ俺に何の用?」
正直なところ、ルードが話しかけてきた理由が思いつかない。
いままで顔を見たことはあっても、関わりなどなかったはずだ。
訝しげなシャルトーの反応を、ルードはさも当然だというように眉を下げると。
「急にすみません、とある依頼でジグラスさんに声をかけさせて頂きました」
「シャルトーでいいよ」
「じゃあ、俺もルードで」
自分と同じ職業のはずなのに、随分と穏やかで丁寧な物腰になんだか警戒心が緩みそうになる。ルードの体格はしっかりと傭兵としての筋肉のを備え、シャルトーより幾分上背もあるのに、もしも『実は街のパン屋で働いていて』なんて言われても信じてしまいそうだ。この男の気質なのだろうが、やたら顔が笑っているようにみえる大型犬が頭に浮かんだ。
「で? どんな依頼で俺に声をかけたノ?」
「俺の依頼主がシャルトーさんに会いたいと。現在探されている『藍の庭』に関することで」
「っ!?」
テーブルに肘をついていた姿勢から思わず身を起こす。
なんたってこの2週間、ギィドが惜しむレベルの酒について各種のツテをあたってみたがろくに成果が上がらず。次の手立ての案すら行き詰まって、酒で機嫌を取るという計画が暗礁に乗り上げているところだったのだ。
それなのにルードが口にしたのは、手に入らないと言われた酒蔵の一つで。
「誰――?」
「ここでは」
「……」
「俺の言葉で信用してほしいっていうのは難しいと思いますが、決して悪い相手ではないかと」
警戒するシャルトーに、ルードは困った様子で言葉をのせる。
依頼主を明かさない点では怪しい案件だが、はっきり言って会わないという選択肢を選べるほどの余裕はない。
「……で、どこに行けばいいノ」
「ありがとうございます。コレを」
シャルトーの返答にルードがいかにも安心した、というようにほっと息を吐き、小さなカードを伏せてテーブルに置く。
それを手の中にたぐり寄せてのぞき見れば、別段珍しくない宿屋名と部屋番号、明日の日付と午前中の時間が書かれていた。
「大丈夫でしょうが、なるべく誰にも知られないようにお願いします」
注意の割にルードの口調は変わらず穏やかだ。
それ程危険視をしなくてもいいと油断を誘う演技なのか、素なのか。
推し量るにもルードという人物の情報をシャルトーは知らない。調べるにも明日のタイムリミットまでには時間が足りない。
結局の所。
こういった、手の込んだ呼び出しを受けるほど恨みを買った覚えはないが。万が一を考え、シャルトーは腹をくくっていつよりもほんの少し用心した装備を調える。
そうして翌日、指定の部屋を訪ねた先には。
「ごきげんよう、私はジル・グラインと申します。どうぞお気軽にジルとお呼びください」
「――アンタ、……?」
シンプルだが上品なデザインの木綿のワンピースに身を包み、さらりと艶やかな黒髪を揺らして少女は優雅にお辞儀をする。
己を呼び出した相手がただの町娘とは思えないが、未だ十代を抜けきれぬ年下の女というのに驚きながら。
ジルと名乗った少女の顔と声にシャルトーは引っかかりを覚え、わずかに顔をしかめる、と。
「一度、お会いしたことがあるのですが、その時のジグラスさんは調子が悪そうでしたので……『あの時』は『私のジャグ』が少しやり過ぎてしまって、改めて謝罪いたしますね」
謝罪という割には全くもって申し訳そうな様子もなく。頬に手をあて首を傾げるジルの言葉に、シャルトーの脳裏にうっすらとした記憶が蘇る。あれはタチの悪い娼婦に当たり、間抜けにも安物のドラッグでラリってギィドに絡み、失態を犯した日の事だ。
あの日、ギィドの横に居た女は目の前の少女だった気がする。
そして何より、後日ジャグから「次、俺の娘に手を出したら今後一切情報をやらねぇから覚悟しておけよ」と釘を刺され。……ジャグのファミリーネームは先ほどこの女が名乗ったものと同じグラインだ。
「悪いけど、アンタにはジャグから関わるなって言われててネ。どんな用か知らないけど他を当たってくんない?」
ただでさえ手詰まりな状態だというのに、貴重な情報源であるジャグまで失うのは痛い。
もしかして「シャルトーに何かされたとジャグに言う」なんて脅しでもする気かと、そんな嫌な予感も浮かび、じりっと入ってきたばかりの扉へ一歩、後退をすれば。
「疑われるお気持ちは分かりますが、話も聞かず去るのは後悔されますよ? 少なくとも私はギィおじさまがとてもお気に召される様なお酒を手に入れるツテがいくつもありますから」
シャルトーの考えなどお見通しだという様に。つらつらと言葉にする内容は腹立たしいほど足を止めるしかないもので。
「……要件は」
「立ち話もアレですから、どうぞ、そちらにお掛けになって」
「ココで良い」
「あら、では私は座らせて頂きますね」
牽制も兼ねた、シャルトーの放つ刺すような殺気は、普通の人間なら縮こまって怯えるはずだ。
なのにまるで何事も無いかのようにすらりとジルは腰掛ける。いくらあのジャグの娘はとはいえ、こうも堂々とした振る舞いをする事が出来るだろうか。もしかして上品な装いの見目から目眩ましで、実際は傭兵として育てられているのか、などと頭を回すが。
「面倒な探り合いは無しに、率直に申し上げましょう。今回ジグラスさんをお呼び出ししたのは、私と共同戦線の締結しないかというご提案です」
「……は?」
「更に平たく言うのなら、ギィおじさまに関わる情報とジャグに関わる情報の、相互交換という意味です」
「…………は??」
「貴方はジャグに関する情報を調べて私に提供する、代わりに私はギィおじさまに関する情報を貴方に提供する。情報の対価の差分は都度相談の上、物品や金銭で補う物とします。どうです? 条件として悪い話ではないでしょう?」
「いや、いやいやいや、意味がわかんないんだけド??」
急に振られた話の流れが読めない。
シャルトーがギィドに絡んでいる事を把握しているのは噂を流しているのだから分かる。
しかし提案された話の内容を反芻してみるが、なぜジルがジャグの情報をわざわざシャルトーに求めるのか意味が分からない。
だいたい『ギィおじさま』ってなんだ、アレが『おじさま』なんて呼ばれる柄かよ、なんて関係の無いツッコミまで思い浮かぶぐらい訳が分からない。
そんなシャルトーの態度に、ジルは初めてその形の良い眉をきゅっと眉間に寄せて崩し、唇を引くと。
「私も『貴方と同じ穴の狢』だからよ。少し攻め過ぎてしまって、ジャグの行方が掴めないの。だけど貴方ならジャグは警戒せずに会うわ。ジャグは貴方と私が繋がっていつなんて思わない。だって普通なら私が怖がると思うし、貴方だってさっきみたいに私を避けるでしょう? また、その逆もしかり、ギィおじさまは私を疑わない」
そう言ったジルには、今までの悠々とした余裕のある態度が崩れ、年相応の少女の顔が垣間見えた。
「ん、ぁ? アンタ、ジャグの娘――」
「義理よ、血は繋がってないから。何の問題も無いのに」
シャルトーの言葉に被せるように否定して。続いた苛立ちの滲む呟きに、シャルトーは目を瞬かせる。そしてやっと脳味噌が自体を把握し始めていた。
「……つまり、あんたはジャグを狙ってて、だけどヘマをしたってコト?」
「貴方と同じようにね」
「ナルホド」
どうやらこのジルと言う少女は、ジャグの事を突っつくと上手く取り繕えなくなるらしい。
シャルトーの質問に、事実を認めたくないというように目を眇め、ツンとした態度でやり返してくる。
「アンタの提案はワカッタ。だからってなんで俺に? ジャグの情報を知りたいなアンタのお使いをしてくれたルードでも十分でショ」
「貴方の方が『効率が良い』からよ」
「効率が良い??」
「私は、ジャグの一番になりたいの。ギィおじさまは好きよ? けど『邪魔』でもあるの。初めはギィおじさまに協力を依頼しようとしたわ。……でも、ギィドは最終的に『私よりジャグの味方』なの。貴方なら『分かる』でしょう?」
シャルトーに問いかける、すうっと細められたジルの目には見覚えがあった。
あれは、獲物を誰にも渡さないと決めた者の目だ。目的の為に切り捨てるモノを決め、使えるものは何でも使って手に入れると自分の欲の先を見据えている。
「……つまり、俺がギィドをジャグから引き離すのはアンタにとって利益がアル訳か」
ジルがジャグからギィドを離したいように、シャルトーはギィドからジャグを離したいだろうと。己の目的が達成されることは、互いに良く働くだろうと、だから手を組もうという訳か。
ギィドがジャグから離れるのではなく、ジャグがギィドから離れる、というのは些か気に食わないが。
「俺はジャグがいようと関係ないけど、納得はしたヨ」
「あら、素直な人の方がギィおじさまは好きよ」
「別に俺はあのオッサンの好みとかどうでもイイ」
「そうなの。……でもそうね、好みとは関係なく一番になるのはずっと魅力的ね」
ぽつりと呟かれた言葉はシャルトーへの皮肉かと思ったが、瞳を逸らしたジルの顔から見るにどうやら独り言らしい。
言葉だけは恋する乙女のようだが、表情はいかにして次の手を打つかに考えを巡らす狩人のそれで。ジャグに避けられている、と言った割に豪胆な目標をたてるものだ。
しかし、ただの色ぼけた小娘ならやっかいだが、コレなら、とシャルトーは考えを改める。
「最後に確認、どうしてアンタは入手が難しい酒のツテを持ってる?」
シャルトーの言葉で、ジルは己の提案が受け入れられた事に気づき、口の端を上げる。
そうして語るは、彼女の先日までの滞在場所だ。
――エリストリリア女学院。
本来は貴族や名のある商家の令嬢を預かり、才色兼備なる淑女へと磨き上げる場だ。そこにはいくら金銭があるとは言え、一介の傭兵の娘たるジルの居場所などない。
だが女学院にはジャグにも、入学するまでジルにも知らないもう一つの顔があった。
政治や商売において、しばしば利用される政略結婚の『大切な道具』たる令嬢。それを『守る事ができる侍女』を育成する、という顔だ。時には情報や知恵だけでなく、それこそ身体を張ってという意味で。
そこでジルは鍛錬の賜物もあるが、幸運にも類い希なる武の才能と令嬢達への扱いの上手さに恵まれたのだ。
才のある者というのはどのような場所でも一目置かれる。ジルは程よい見目の良さと頭の回転も相まって、侍女として己の側に置きたいと令嬢から渇望される程となり。
しかして誰に対しても礼を尽くしながら距離を置き、また「己には心に決めた相手が」という立ち回りは功を奏した。己を「高尚な道具」である事に自覚と同時に縛りを覚えている令嬢達は、自由恋愛に一種の憧れを持っている。
ジルの本来ならもっと容易く相手を選べるだろうに、あえて叶う事が難しい恋情を選ぶ様は、物語めいた物で、一種の娯楽のようにジルに好意的な令嬢達はその行き先を応援することに盛り上がりをみせたのだった。
「幸運にも、在学中に私を応援して下さるお友達ができまして……」
「そのなかにツテが? 随分と、出来すぎジャない?」
いくらなんでも、簡単に酒の融通先が見つかるほどの人数が居るのか、と鼻白めば。
「だって、ギィおじさまと言えばお酒が好きでいらっしゃるでしょう?」
流石にお付き合いする相手は選びましたわ、とジルは微笑む。
どうやら、想像以上に随分と昔からの計画のようだ、とシャルトーは眉を歪めながら。
もしかしたら目の前の少女は己よりずっとその執着心が強大なのかも知れない。
手を組むには頼もしいが、些か背筋の寒くなる心地から目を背け。
なにはともあれ、ひとまずは最悪を抜け出す当てが出来たことにコッソリと胸をなで下ろしつつ、シャルトーは改めて思う。
「あのオッサン、どんだけ酒で釣られると思われてんだヨ……」
自分が利用する分には良いのだけれども。
もしかしてやっかいなのはジャグより酒の方なのでは、と思い付いた考えに溜め息を吐いて呟けば、その言葉を聞き止めたジルが「あら」と、可笑しそうに声を上げた。
「ギィおじさまはお酒があれば『ある程度』頼みは聞いて下さいますけど、だからと言っても『全部』じゃあないんですよ?」
ですのでお酒を手にしても安心せずにどうぞ私の為にも頑張って下さい、という言葉は現状にトドメを刺しに来ているのか、鼓舞しているのか。
その後、ジルのツテを使い、藍の庭を手に入れて。
ギィドの様子を定期的に確認していたらしいジャグから、ようやく「アレなら大丈夫だろ」という苦笑付きの言葉がかかったのは実に三週間ぶりだった。
「よし、殴らせろ」
てっきり顎を狙ってくると思いきや、一瞬のフェイントを知覚した時には、胃が持ち上がるような衝撃と共に鳩尾へ激痛が走る。
脂汗が吹き出る。こみ上げてくる吐き気に、胃酸が喉の奥を焼く。
我慢しきれずに膝が崩れて、床に転がりながらもシャルトーの口は自然と笑みを浮かべていた。
チラリと此方を見下ろすギィド瞳は呆れた色を持っているが、しっかりと像を結んでその目にシャルトーを映している。
ギルドのドアをくぐったときに、ピリピリと刺すようなギィドの怒気に一瞬、ジャグが見誤ったのでは、と思う。ここは神経を逆なでしない態度をと、考えつつ、一体自分はギィドにどんな風に応じていたのか、たった三週間のはずなのに分からなくて内心焦る。
しかし声をかければ思いのほかすんなりと返答があった。ギィドの顔にはうっかり返事をしてしまったと書かれているが。それだけ気が緩んでいるのだと確信を得て、畳みかけるように切り札を見せれば明らかに目の色が変わる。
わずかな逡巡のあと、ギィドはシャルトーを殴りつけた。
それはつまり、切り捨てるという一番シャルトーにダメージを与える選択肢を選ばずに許容してしまった、そう言う事だ。
「仕事は受けてやる。だが、この前みたいなのは無しだ」
頭が痛いとばかりに、こめかみを揉みつつ溜め息をついて、ギィドがぼやくように言う。
「一回するも二回するも一緒デショ」
「一回も二回も一緒だが、する意味がねぇ」
「……意味があればいいノ?」
てっきり馬鹿か、と一掃されると思いきや、まるで意味があれば良いような言葉に思わず反応してしまう。
(そういう詰めの甘い事を言うからアンタは)
ギィドは勿論そんなつもりは無いのだから眉間へ盛大に皺を寄せ、酒瓶に手を伸ばす。
その様子をシャルトーは見つめながらジルの言葉を思い出す。
面倒くさい手回しに、年下の少女と手を組み、大枚をはたいて手に入れた酒で機嫌を窺う。
高級娼婦でもない、たかが一晩の過ちに対して、それは全くもって馬鹿らしいほど労力に見合わない。
今回の件に関しては反省する事ばかりだ。痛手が多く失敗だったと、シャルトーは思う。
だから。
(次は、どう攻めようか――)
しばらくはギィドのガードも堅くなるだろう。
やはり油断を誘うことが一番だろうが、無理やりしてはまた今回の二の舞だけは避けねばならない。
非常にやっかいな問題だか、諦めるという選択肢はシャルトーの中にはもうなかった。
手間はかかるが、その分ギィドを組み敷く愉悦を知ったのは今回の収穫だろう。
べつに自分はジルのように、ギィドの一番になんてなりたいとは思わない。
思わないが。
(アンタにどこまで気づかれずに入れ込めるかな)
鍵を閉めるからさっさと出ろ。と、床に転がったシャルトーを一瞥して背を向けるギィドに、シャルトーは自問する。
今まで以上に機会を逃さぬよう。しかし気づかれずにギィドの内側に入り込む為、ほんの少し大人しくしておこう。
そうしていつか。
そうやって目を背けた隙に境目が分からなくなるくらい入り込んで、気づいた時には己を切り捨てたくても面倒になるくらい混ざりあっていることに、途方に暮れるギィドを笑ってやろうと。
そんな事を思いながらシャルトーは身を起こして、ギィドの後を追いかけた。
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