文化祭の破壊

月這山中

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屋上

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 絵を描いている。

 絵を描いている。

 絵を描いている。文章は昔から苦手だった。

 言葉がうまければこんなことはしてないと思う。でも絵を描いている時は楽しい。

 絵を描いている。

 絵を描いている。


  ◆

 大きな絵を描いて来たヤツがいた。
 ベニヤ板のカンバスが二十枚。
 申請書類はもうとっくに受付を終わってる。

「どうするんだよ、これ」

 副部長が頭を抱えてる。

「面白いじゃん、展示しよう」

 絵のパーツの上に『美術部はこちら』を乗せた。
 看板に混ぜてしまおう。
 ゲリラ展示を進行している最中に、作者からお礼を言われた。

「ありがとう」

 オレは恥ずかしくなって、ニヤリと口元だけで返した。


  ◆

 絵を描いている。

 絵を描いている。

 文化祭当日も絵を描いている。それ以外にやることが思いつかない。

 差し入れに貰ったたこ焼きを描いている。
 やきそばをかき込んでいる部員を描いている。
 青い顔で腹を痛めてる副部長を描いている。

 校内放送のチャイムが鳴った。その音も絵に描き込む。絵を描いている。

 マサオカケイジクン、ブカツニシカカオヲダサナクテタンイガアブナイマサオカケイジクン、タイイクカンマデキテクダサイ

 絵を描いている。

 絵を描いている。

 部屋の外が騒がしい。

 なにやらひと悶着あったらしい。
 噂話が届く。
 演劇部員と放送委員が結託して文化祭を壊そうとしたらしい。

 気付かなかった。絵を描いてたから。惜しいことをした。
 自分の絵を見たら自分の名前が書きこまれていた。
 俺も呼ばれていた。気付かなかった。

 それと同時に、そんなことをしたそいつらを描きたくなった。



 主犯の演劇部員を探し当てる。

「春原周良!」

 オレは名前を呼んだ。

 逃げられた。

 絵のモデルになって欲しいだけだ。

 そのことを周りの生徒に言って周った。



 騒動には新聞部もかかわっていると聞いた。

「小林茜!!」

 オレは新聞部を直撃した。

 カメラを構えたそいつを描いた。

 終始震えていて描きづらかった。



 騒動に協力した放送委員はなかなか見つからなかった。

 放送室からはもう逃げだしたあとだった。

 オレはそいつを、鈴木小鳥を探した。

 学校中を走って、走って、たまに絵を描く。

 雨が降って来た。スケッチブックを服の中に入れる。

 学校中を走って、走って、たまに絵を描く。

 禁止されてる屋上に入った。

 そこにちいさな女子生徒が立っていた。

「鈴木小鳥」

 オレは名前を呼んだ。

 屋上が開いてたのも、そいつがカギを持ちだしたからだ。

「何?」
「絵のモデルになってくれ」

 オレは答えも聴かず、スケッチブックを開いた。

 鉛筆で構図を探る。

 雨上がりの空は輝いている。

「なんで?」
「描きたくなった。それだけ!」

 こういう話をするのは恥ずかしい。

 とくに女子相手は難しい。

「いいよ」

 彼女は上履きを履き直して、縁に座った。


  ◆

 描き終わった頃に先生たちが、鈴木小鳥を連れて行った。

 俺は満足して鈴木小鳥を見送った。

 美術部へ戻ったら、扉に封筒が貼られていた。

 春原周良の写真が入ってた。

 本人じゃないのは残念だが、それの絵を描いている。


  了
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