勇者として召喚されたはずだけど、勇者として歓迎されませんでした

くノ一

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異世界へと来た時

5.自分の今の立場

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 この世界で言葉が通じれると分かったので、色々と聞き込みをしていた。その時に冒険者の人が教えてくれた。
 レベル玉、別名レベル宝玉とか言われている物、それがあるとないだけで差が生まれるらしい。
 一般でも入手出来るのがここ魔法店らしい。今俺はその魔法店の目の前まで来ていた。

「レベル宝玉とかここの魔法店で買えるって事ね」

 雑貨屋にも見える場所の中へと入ると、棚には大量の薬品や、地面に本が大量に積もられていた。
 中へと進んでいくと、奥から声が聞こえてきた。

「いらっしゃい」

 先へと進むと、カウンターに座っている一人の女声が声を掛けてきた。ここの店主らしいけど、実際にはそんな雰囲気がしない。
 とりあえず、欲しい物を聞いてみるか。 

「ここにレベル宝玉とかあると聞いたのですが」
「ん?あれね。余ってたか走らないけど、ちょっと探してみるね」

 彼女はそう言いつつ、後ろの棚を探し始める。探しながら、俺の方をちらっと見ては何かに気付いたかのように呟いた。

「その服装は・・・、異世界人ね。いくつもある魔法店でここを選ぶなんてね」

 確かに、俺の服装はこの世界の衣服ではない。ちょっと見ただけで異世界人と思うだろう。あとは見た目などもあるのだろうが、

「この世界にまだ馴染めてないとは思うから、一応名乗っておくわ」

 彼女は何かを手に取った後、こちらへと振り向き、ゆっくり目を開けながら喋りだす。
 
「『リーネ・クラッチェ』よ。みんなリーネと呼んでるからそう呼んでもらっても構わないよ」

 彼女の姿はまるで魔女そのものだった。だけど、その格好は外でも似た服装の人はいたから、何かの役職とかだろう。
 その後、彼女は俺をジロジロと見ながら言う。

「ふむふむ、そういう事・・・」
「・・・何がそういう事なんだよ」
「ちょっとあなたの事を素性を見てただけよ。『東野目和樹』君」

 名乗ってもないのに、いきなり俺の本名を言い当てた。一瞬だが、彼女の目が微かに色を変えたようにも見えたが、これも何かした証なのだろうか。

「一応私は魔法使いだからね。これくらいはやれるよ」

 彼女はカウンターに手に持っていた物を小さい座布団の上に置いた。
 小さなビー玉サイズの球を出してきた。

「はい。これがレベル玉ね。まあ、途中から存在を忘れてしまうけど、序盤だけは役に立つと思うわ」

 序盤だけのキーアイテムって言いたいんだろう。
 使い方は分からんが、数々のレベルが表示されるのかもしれない。

「あとは・・・その籠手を外して見せてくれるかしら?」
「・・・これの事か」

 俺は籠手を取り外し、それをリーネへと渡す。リーネはそれを受け取った後、丸く凹んだ部分にレベル宝玉を装着させた。
 綺麗に装着された後、籠手を見渡す。

「ふむふむ……そういう事・・・」

 彼女は何を見たのか分からないが、どうやら鑑定でもしていたのだろうか。
 それを俺に返した後、

「シンプルな装備でもあり、もしかしたら最強の一角にある装備かもしれない」
「どういう事だ?」
「想像した物を作り出す。更には進化もする。あなたも一度使ったでしょう?」

 籠手を装着した後、何かを想像してみた。すると籠手の先から剣が出現した。

「解除と思ったら解除するわ」

 そう言われたので、解除と思ってみると、確かに剣は粒子になって消えていった。
 これを扱えるようになった時は、相当強いって事か。
 
「生成されるのはその籠手から出現する接近武器だけ、弓やクロスボウとかは今の段階では無理ね」 
「接近武器・・・ねえ」

 魔法は除いて、武装は接近武器とかそういうものだけだろう。
 戦闘技術に加え、魔法も使えるようにならないといけない。

「ま、まあ。慣れるまではいろんな武器を出したりすればいいよ」

 使いやすい武器かあ・・・。まだ、こんな装備は慣れてないに等しいからなあ。
 慣れたら使いやすい武器とかで固定して使用した方がいいかもしれない。

「本来は王都から支給される物だけど、今回は上げるわ」

 レベル宝玉が取り付けられた籠手を俺に返した。
 どちらも同じ形状だし、ここは左手に装着するか。
 装着している時に、更に何かをカウンターへと置いた。

「あと、この魔法の本も持って行きなさい」

 分厚い本が2冊、置かれていた。見た目は辞書に近い。
 ペラペラと見てみるが、やはり読めない。英語でもなければ、日本語でもない。もしかしたら古代文字に近いかもしれない。

「やっぱり読めないか・・・」

 絵なども書かれているが、それが何の魔法かは分かるが、そのやり方などは分からない。
 少し勉強も必要かもしれないな。

「文字読めないの忘れてたわ。普通の勇者様は召喚に成功した時から読めるようになってるけど、あなたは違ったわね」

 そう言いつつ、俺の額へと指を持っていき、思いっきり指ぱっちんしてきた。

「・・・いて・・・いきなり何を・・・」
「暗示をあなたに掛けただけよ。ほら本を読んでみなさい」

 そう言われ、すらすらと文字を見てみる。そこに書かれていたのを読めるようになっていた。
 一体俺のおでこに何をしたってんだ。

「とりあえず、あなたも見てみたけど、魔法はなんでもありね」
「得意分野でもあるのか?」
「えぇ、私の場合は氷と重力、それを得意としてるわ。まあ、ほとんどの者は得意魔法はほぼ固定して使用してるけど」

 なるほど、勇者は本来固定属性系があり、他よりも強力な魔法でも使用出来るのだろうか。

「何個か魔法をこれで覚えろと?」
「最初はね。慣れたら、上級の魔法も覚えてみる事ね」

 この世界に来て、魔法とこの籠手の扱い方からマスターしないと、この先生き残れないか・・・。
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