勇者として召喚されたはずだけど、勇者として歓迎されませんでした

王都異変

72.奪還する為

　正門へと向かう道は流石に兵士が多い。魔王軍がどれほどいるかは分からないが、先程撤退した数からすると相当な数が守備にいるのだろう。

「敵が多いのは予想はしていたが、ここまで進行しているとは」

　倒せば倒すほど次々とやってくる。敵の侵攻は止まらない。
　魔法『バーニング・エレキスワイプ』を唱える。両方のチェーンブレードが電気と炎に包まれる。それに更に追加魔法として『バーン・レギスト』を追加する。
　この魔法は一定時間触れた相手を爆破させるというハンマーなどに使われる魔法だ。
　最初にかけた魔法が無意味になると思うが、バーンが触れた相手に対象なら、エレキスワイプは衝撃波を飛ばし遠くにいる敵に狙う攻撃になる。

「強行手段に出る。援護頼む」
「分かった」

　チェーンを振り回しながら、兵士へと当てる。すると爆発し、後ろへと吹き飛んだ。
　その後、チェーンを地面へと叩き込み電流の衝撃波を遠くへと飛んでいき、兵士へと当たり爆発が起こる。数が多いなら周辺を巻き込む魔法攻撃が有効になる。
　そんな時トルゥが何かに気づいたかのように叫んだ。

「上にも複数、魔導士かと」
「矢はもう無いぞ。ベラニア魔法で撃ち落としてくれ」
「ファイアボール・スナイプ」

　ベラニアがファイアボールを作り出し、狙いを定めて放った。屋上を歩いていた魔導士周辺に命中し、煙が上がる。

「よし、先へと急ぐぞ」

　先へと進む最中、近くから振動が伝わってくる。上空を見上げると煙が上がっていた。
　誰か戦っている。だが、ここからだと遠回りしないといけない。助けに行けず先に進むしかなかった。

「トルゥ、魔法追加」
「OK、剣の刃よ、己に力を与えくだされ……。ソードライトストライク」

　トルゥの刃が光り出し、そして閃光を生み出す。そしてトルゥは一瞬で前方へと移動していた。
　閃光で相手の行動を一時的に封じた後、早い動きで突っ込む魔法攻撃だ。ほぼ物理に近い攻撃だが、一応光と風の魔法がかかっている。

「ここを乗り越えれば目の前です」

　広場からだとここまでは道のり的には長かったはずだ。疲労回復薬も飲んでいるし、まだまだ余裕がある。このまま走って行った方がいいだろう。


「何が行っているんだ。魔導士部隊は何をしている」
「予備の部隊が行ったがやられたようだ。救援の翼竜部隊も期待出来そうにない……」

　正門前、数多くの兵士がいた。慌ただしく先へと向かっていく。

「セイラン様はどうされるのですか」

　兵士の1人が敬礼をしつつ、女性に話す。

「簡単です。私はあとから向かいます」
「は、我々は命令通り進行いたします」

　数人の兵士を連れ、先へと進んでいく。その姿を見ながらメガネをかけた女性は呟いた。

「……行ったとしても死が待っているだけですから」