対異世界防衛学園

くノ一

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メインストーリー

43.チェスプレイ6

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 後方へ下がっていくと逃げ道はほぼ無い。追い込むだけ追い込み、そして狩る。
 相手の作戦が分かれば、もうこちらの配分で攻められる。白が元から警戒してないところから攻める方がこちらとしてスッキリするとかは本人には言えないけど。
「さて、白殿はどのように動くのやら」
 機体数も幅が出来、囲むかのように追い詰めているのだ。銃撃で足止めしようが、こちらが有利には違い無い。
 カメラを転々と切り替えながら、状況を探る。配置からするとこうかな。
 東中央側でこちらを足止めしていた敵機は、2機を引き上げてくれたおかげで、残っていた機体を殲滅する事が出来た。
 こちらの残りは東側5機とその後方に3機、西側では森に1機と突撃させた5機のみ、最初に突撃させた無人機である2機は行動不能にされ、森と正面から突撃された機体の内1機ずつ戦闘不能にされた。
 でもその分、6機程度は行動不能にさせたし、相手の残りは10機いないだろう。まあ、途中から数えてないから正確な数は分からないけど。
「正確にはこちらが遥かに有利だ。孤立せずに二、三機ずつで行動しつつ攻めるんだ」
『敵の位置で正確に分かってるのは』
「一機程度だが、多分その周りにもう一機はいるだろう」
『了解』
 一応このように指示は出したけど、大丈夫かな。既にあちらは窮地に達している。動ける範囲も絞り込めてるから、慎重かつ冷静に潰していく必要がある。
 銃撃戦を展開しても時間の問題、じわじわと追い詰めてあげるか。

 こっちの数は残り7機とかない。本来なら8機だけど、一機のライフルが弾詰まりの暴発で行動不能になるとか予想も出来ない。防御作戦も簡単に潰されるし、状況は悪くなる一方。多分向こうはこちらの倍はいる感じはするし……、
『隊長、指示を』
 逃げ場なしは流石にきつい。ここから逆転する程の機体も無い。多分零は冷静にこちらが動けなくする為に、じわじわと近づいて来ている。
「ここで攻防をするしか方法は無いわ。見てみる感じでは逃げ場なしよ。抜け道作ろうにも多分近距離間隔に配置してそうだから一瞬で全滅よ」
『でも我々には突撃以外はもう勝つ道は無いと思いますが』
 流石に私も分かってるわよ。でもそれもいつもの零のやり方。突破しても多分後方に予備機体など配置して待ち伏せしている点もある。
 でも最後に花火を鳴らすにはいいかもしれない。そういえば、霧って時間間隔では濃くなったりするはず、設定では30分間隔。
 時刻は試合開始からちょうど30分が経とうとしていた。試合開始と同時に起動する仕組みの為、そろそろ装置が起動する。ならー、
「仕方ない。全機今からマーキングするところに集結、そろそろ霧が濃くなる時間だから一か八だけど、相手の想定外のルートを通って奇襲するわよ」
『『『了解』』』
 有人機4機、無人機3機で何処までやれるかは分からないけど、最後ぐらいは花火を鳴らさせてもらおうじゃない。2機はいる事を示す為に残しておいた方がいいかもしれない。

 そういえば、霧って久々に使われたから忘れていたけど、確か時間置きに濃くなっていたっけ。
 もし、霧が濃くなって相手が動き出したらこちらとしても対処しづらい。最初からその位置に居させて、濃くなった数秒後に撃てば何か歯ごたえあるかもしれない。
「ここの三箇所かな」
 地形的には南に向かって進軍してくるとしたらここの三箇所だけになる。東側から攻めたとしても攻防戦に展開され、時間を掛けさせればこちらとして進軍させ、裏取りも容易になる。
 だが、南側沿いに攻めてきたら勝敗は五分五分だろう。東の進路が一つだけとすると、南側は三つ程の進軍ルートがある。
 どこから攻めてきてもおかしく無いのだ。三つのルートを塞ごうにも一方集中されたら簡単に突破されてしまう。
「今は順調だけど、攻められたらやばいなこれ」
 そのまま五つから出るとしたら一つのルートだけ、確率は3分の1程度だ。戦力を集中させてくるなら、防衛は二つに絞らないといけない。
 なら左右のルートにするか。選んだ理由は簡単だ。もし真ん中選んで突っ込んできた場合、左右から呼び寄せて左右挟んで攻撃する。
 もし左右のどちらか選んだ場合はすぐには突破はされないだろう。なのでもう片方から急ぎ向かわせれば対処は可能。
 問題は白が何を考えてるかだ。それくらいは白も分かっているはずだ。東側には4機をいさせて、1機はこちらの援護に向かわせる。
 そうすると左右に4機、真ん中に偵察として2機が左右の近くに配置となる。
「これなら少しは足止めにはなるかな」
 たった四機では時間稼ぎにしか出来ない。マップで誘導をしながら指定の位置に向かわせる。これなら少々やられても大丈夫だろう。
 そして移動し終わった時に霧が濃くなり視界が悪くなる。
 それを計らったのか、銃声が止み、静寂が一時訪れた。
「全機構え、敵はあと数秒後にはやってくるだろうから」
 どこから出てくるかは分からないが、出てきたとしても5分ぐらいで決着が付くだろう。
 3分だったとしても出てくる気配がなかった。霧が濃くても影までは薄く見えるはずだが、それさえも複数の機体のカメラワークからは確認出来なかった。
「あれ、敵機が突っ込んで来ない。ここ以外に別ルートあったっけ」
 四箇所以外にあるとしても、そこは魔力で浮いていてもほぼ通行出来ず、歩かないと行けない。もし、白がそのような手を使っていたなら、
「左側周り警戒!多分だが、既に近くまで来ている可能性がある」
『敵機は四つのルートを通っていませんが』
「俺も使ってくるとは思ってなかったルートを使っている可能性がある。今から指定するところに射撃を頼む。それと右側四機は前進」
 一気に指定座標などを打ち込んでいく。まさかと思うが、俺が迂回ルートで奇襲させたように想定外のルートを通っている可能性がある。例えばこの瓦礫の山とかだ。
 指示した有人機のカメラワークを見る。その機体は射撃をしており、霧が濃く奥まではちゃんと届いてるかどうかも見えない。
 さて、これが正しかったら敵は既にこちら側に全機移動している。

「敵機は探るように撃っているだけだから、止むまで待機」
 最初は気づかれたと思ったけど、そうでも無かった。まだ敵機はこちらを確認出来てない。でもあっちに何機いるのか、私達は分からない。
 だけど、大体四、五機程度だろう。もしかしたら裏側から攻めてきているかもしれない。念の為二機は足止めで置いているけど、多分向こうも今頃は銃撃戦だろう。
『敵機が4機ほど突っ込んで来ました。今は銃撃戦ですが、いつ攻めてきてもおかしくないです』
『横からいつの間にー』
 点滅していた味方機のアイコンが消滅する。どうやら東側からも攻められて、落とされたようだった。
 ますますやばい。私達がいない事が分かれば、裏を取りに来るだろうし、ここを集中的に撃ってくるだろう。
『そろそろ反撃しないとやばいですよ。敵機が徐々に距離を詰めて来ています』
「反撃して、多分もう敗北までのカウントダウンが始まっているわ。一機でも多く仕留めて」
 残していた2機がやられたお陰で、裏をすぐに取りに来そうだからだ。まだそんなに距離を離してないのもある為、ある程度来ると撃ってくるだろう。
 ここが修羅場って事なのかな。

『裏取り成功。一気に詰めてみます』
『今の所、敵機の確認なし。そろそろボロを出すと思います』
 これで場所は大体掴めたものだ。あの時、間違えて東側にいた4機のうち2機を前進させていたとか本人の前では言えないけど。
「徐々に詰めていって。敵機は壁を利用して隠れているかもしれないから」
 今の所霧が濃くて何があるかは分からない。多分抵抗はしてくるだろうから、そこを狙えばいいか。
『…うわ、肩に被弾。敵機が撃ってきました』
「マシンガンに切り替えて接近戦に持ち込んで。後ろにいる者は援護」
 かなり近くまで攻め込んでたらしく、見つかる前に撃ってきた。今の状況だと逃げ道が完全にないと理解してでの行動なのだろう。
『1機撃破』
『こちらも1機撃破です』
 被害を出しながらも、1機ずつ仕留めていく。あと数機って所だと思うのだが、こちらも既に3機は行動不能にされた。
 被害が少々大きいが、今の所は問題ないだろう。
『1機撃破。敵機の数を確認しました。残り2機です』
「分かった。全機は残りの敵機に突撃し、仕留めてくれ」
『『『了解しました』』』
 もうこれだけ生き残ってたら2機だけでの対処は不可能だろう。
 一気にこちらの陣営の機体が突撃をする。全方向から一気に攻めよってくるのだ。普通は対処出来ないだろう。
 やられたとしても4機程度、もう相手に勝ち目は無いだろう。
 そして突撃から2分後、作戦開始から37分程で作戦終了の合図がなった。

『う……また、作戦負けたあ…』
「防衛としての作戦は良かったけど、気を抜きすぎだよ」
 あそこまでの防衛は良かった。だが、想定外の進路に関しては気づいてない点が多い。そこでバレてたら多分今も続いていたであろう。
『つ、次こそは、次こそは勝ってやるんじゃーーー!!』
「それ前にも言って負けてたじゃん」
『でもその次の試合は勝ったからいいの』
「あの試合はあのままゴリ押ししてその対処が間に合わずに終わったんだよ」
 はあ、過去にも同じ事があったせいか、この人次も負けてくれそうだ。そもそも考えるだけでもゴリ押ししてきそうだなこれ。

         ~その頃春人達は~

 床に倒れている自分の姿が目に浮かぶ。てか、何でこんな事になったんだろう。
「てか、そろそろその尻に刺さった針抜いてくれないですか。継続的に体を麻痺にして動けなくさせるのを止めてもらいたいのですが」
「イヤですね。そもそも発端はあの饅頭を私に食べさせた事が原因ですから」
「あれ僕が作ったんじゃ無いんだけど!てか、それをなぜ僕に八つ当たりするの」
 何だろう。何かの嫌がらせレベルじゃないよねこれ。
「奥様はあなたの妻でしょ?なら、あなたが連帯責任を取らないといけないじゃ無いですか」
 ダメだ。あまりにも筋が通ってるようで通ってないようにしか聞こえない。てか、こんな事があったのはつい数分前、突如針の一時的な痺れでダウンした時に、今刺さっている継続させる麻痺針まひばりを私のお尻に突き刺したのだ。
 無論声と顔しか今は動かせない。感覚が麻痺してるせいで体は動かせない。
「そうですね。では、あと数分間はそのままにいて下さい」
 いや、それでもキツイんだけど。さっさと取ってください。うぅ、あとどのくらいこの体制で居るんだろう。

 終わった終わった。通話も切って、俺は座りながら背伸びをする。なんか一気に疲れがきた感じもあるが、まあそこは顔を洗った落ち着いたらだらけて疲れを癒してもいいだろう。
 では早速顔を洗いに風呂場へ行こうか。そろそろ葵も風呂出ているだろうし。
 扉へと歩き、そしてそのまま洗面所のある風呂場の方へと向かう。ドアに手をかけ、開けた時、
「………」
 そこには下着を着用して今服を着ようとしていた葵の姿が見えた。
 あ……、なんか頭で危険信号が凄い感じるんだけど、即このドアを閉めた方がいいような。
 葵は顔色変えずに何処と無く、ショットガンを取り出し、それを俺に向ける。
 その表情は凄くニッコリしてるが、逆に物凄く怒っているようにしか見えなかった。
 ショットガンから発射された弾は俺のおでこに辺り、勢い良く後ろへと飛ばされる。
 このショットガン、コルク仕様の気絶弾か。そう考えていた後の記憶は突如として途切れた。
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