対異世界防衛学園

くノ一

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メインストーリー

45.この色は何色に見える2

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 ここはどこだ・・・。
 何もない空間が広がっているだけの世界。さっき俺はベットで寝てたはずでは・・・まさか、
「ここは夢の世界ってことか」
「正解であり、正解ではないわよ」
 聞き慣れた声が耳元に届いてくる。声の方角には金髪の女性が立っていた。
「レイネ・イリーザ。あなたの仕業ですか」
「久しぶりね。2年か3年振りかしら」
 彼女は色々と教えてくれた師匠であり、四獣神の1人でもある。そんな彼女が何故に俺をこの世界に入れたのかは分からない。
「ここは意識だけの世界よ。夢の世界であり、記憶は起きた時もはっきりと覚えている」
 難しいが簡単に言うと、意識だけの架空世界って事だろう。
 しかし、そんな大事おおごとをやろうにもかなりの準備が必要になってくる。その原理が未だに分からない。
「種明かししてくれないかな」
 流石にこの世界を作るには特有の能力も必要になってくるのは分かっている。彼女の能力を使用した可能性だってある。
「しょうがないなあ。まあ、いつかバレるだろうし言うよ」
 彼女は腕を組みながら、語り始めた。
「前猫送りつけた時に鈴を付けてたでしょ」
 確かにいた時から鈴はしてあった。だけど、鈴の音は一度も耳にした事はない。
「あの鈴はちょっと特殊な加工をしてあって、中には方式が入れられているわ」
 方式が組み込まれている…。だとしたら音は鳴らないのも納得する。それでもあの小さなサイズにここまで膨大なスケールを組み込むのは無理があるだろう。いや、不可能に近い。
「最もかなりコンパクトにするの凄い大変だったんだよ」
 彼女の能力は空間移動。ある意味何処へでもワープする事が出来る能力だ。戦闘でもこの能力は真に発揮するに等しい程怖い。
「コンパクトにした空間を作り出す方式にあなたの能力を合わせてこの様に出来たって事ですか」
「正解。私の能力は空間を伝って移動する事だからね。そこに空間を作り出す方式と睡眠状態の意識転移の方式が組み込まれてるわけ」
 二重による方式展開とあなた様の能力を使ってるわけですか。よく考えられたやり方だ。
 てか、何故にこんな空間を作り出す必要性があるのだ。普通にリアルで話せばいいと思うのだが。まあ、そこは彼女の都合とかあるのだろう。
「それで要件は何なの」
 なんかこの人の雑談に付き合わられそう。さっさと要件だけ聞いておきたいものだ。
「せっかちさんは嫌われるよ」
 いやいや、せっかちも何もここに拉致した人に言われたくないんだけど!そこまでする重要な事でもあるのかよ!
 彼女は突如として現れた椅子に座りながら語り始めた。
「近いうちに何かが起ころうとしている」
 さっきまでとの顔とは別に真剣に語りだす。そんな事言われても意味が分からない。何が起こるんだか。
「何かって何が起こるんだ」
「そこまでは分からないわ。私の知人の予知者がそう言ってるのよ」
 予知って言っても未来の複数起ころうであろう出来事の一つを見たに過ぎないだろう。それに複数のルートがあったとしても一つの一点を通過する事もありえる。
「その知人はどのような未来を見ようと同じ事が起こる。確実にあなたも関わる出来事だそうよ」
 確実って事は一点の出来事は重なるって事だろう。どんな未来が待っていようとも、俺は切り抜けるつもりだ。どんな方法でもその時の最善の手を尽くしてでもだ。
 それとは別に一つの疑問が出来たんだが……、
「それだけの要件でこれだけ大規模にするのかが分からん。それだけ重要なのか、あるいは遊び感覚でやったのか」
「簡単に言うとただの暇つぶしだけどね」
 うぉい!それだけでここまで大規模にする必要性無いでしょ!
「それとは別に監視されてるように感じたから、バレないようにこうやって別空間を作ったわけよ」
 監視されてる?まあ、テロ犯も四獣神は警戒する対象は分かるが、空間移動する彼女さえ監視されてるって言っている。
 彼女さえ警戒する能力者がいるって事なのか。
「いい年してるのに、何故だ。遊ばれてる気しかしない」
「いい年って、見た目は10代後半に見られるけど。年齢は100歳超えるわよ」
「不老不死はさぞかしお暇なんでしょう」
 その通りと言わんばかりに胸にポンと叩いていた。時たまに不老不死の人いるよなあ。四獣神も今いる三人も不老不死って聞くし…。
「そうそう、出口はそこの扉だから」
「不本意にあるあの扉が出口かよ…」
 ただ扉だけだったのは、現実と空間の出入り口だったわけか。部屋風にしても良かったんじゃないのかなこれ。
 そして俺は出口へと向かう。扉を開けようとした時、
「また何かあれば、次は拉致らないで下さいね」
「そう、考えとくわ」
 その言葉は正直言って心配だった。

 誰もいない空間にレイネ1人が立っていた。彼は扉から出て行った。
「全く気付きませんでした。いつからそこにおられるのですか」
 彼女しかいない空間でレイネは後ろの方へ向き直し、響くように声を出した。
「いつからって最初からぐらいだな」
 幽霊のように突如として姿を現す1人の女性の姿があった。
「そもそもこの空間自体、私を呼ぶ為の物じゃないの」
「そうですけど、あなた様もたまにはこちらの世界に来られたらどうですか」
「私は空間の管理をする大事な役目があるからそう簡単には出れないわ」
 白い髪にふわっとしている獣耳をピクピクと動かす彼女に対してのレイネは丁寧な口調で答えていた。
「あなた様は神に等しい存在の方です。時たまには息抜きも大事かと」
「もう神でも何でもないよ」
 レイネの言葉に彼女はそっと言葉を返す。
「四獣神で居座っていても、私は四獣神になれなかった存在。次の候補…、いえ彼女が生まれてくれたお陰で、私は役目をこちらに移せたものですから」
 彼女はレイネの方へと近づいた。レイネは姿勢を崩さないまま、目線を離さない。
「それにくらべて私はまだまだ未熟です。英雄であるあなた様の指示にも満足な結果になりませんでしたから」
「あれはしょうがないわ。私が厳重に封じ込めたせいでもありますから。能力の解放愚か、一部のスキルも今でも使えてませんから」
 レイネの隣を横を通り過ぎる。彼女はそう答える。
「でも近いうちに必ず覚醒するでしょう」
 扉へと向かう彼女をレイネは止める事は無かった。扉を開けた時、レイネの方を振り向きながら、
「あなたは彼女の色は何色に見えるの?」
 レイネはその意味が分からなかった。それが顔に出てたのか、優しく言葉を掛ける。
「いきなりだと分からないわよね。また何かあれば会いに来るわね」
 そう言い残し、彼女は扉を通って行った。
 1人空間に残っていたレイネはふと感じたように呟いていた。
「ーーあなたと同じ白だと思います。私にとってはあなたから与えられたこの運命は幸運だとそう感じています」
 彼女は誰もいない空間でそう呟いていた。

 ベットから目を覚ました俺は座り込む。朝の太陽の光がカーテンの隙間から俺の顔に反射しながらも先程の出来事を思い浮かべていた。
「今後何かが起こる…か……」
 師匠は何が言いたいのかは分からないけど、俺自身も関わる何かがあるって事だろう。
 でも今じゃない。それだけははっきりと分かる気がする。
「まあ、そんな事考えても……お腹の減りには勝てないか」
 考えている時にお腹が空いてくる。時計をふと見ると朝の6時半を過ぎていた。ちょうどいい時間帯だし、歯を磨いてパンを焼いておくか。
 そう考えてから、ベットから立ち上がり部屋を後にした。
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