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第三章 謎の男
第32話 安原
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朝の校舎はざわめきに包まれていた。
地下室の端で腕を組み、防犯カメラで二人の動きを一時間以上追っていた。
遠藤は職員室で淡々とプリントを整理し、安原はただただ穏やかな笑顔で挨拶している。
…不自然な行動はない。接触もなし。完全に“普通”だ
後輩が小声で近づいてきた。
「先輩、何か怪しい動きありました?」
「ない」
「そっちは?」
「改めて過去の行動分析しましたがやはり何も…」
思わずため息が出る。
「授業から読み取るしかないな…」
後輩もため息をつく。
視線を窓に向ける。
…今日で決める。
チャイムが鳴った。
「最後の最後まであきらめるな!行くぞ!」
「はい!」
―1時限目 社会科 安原健太郎
「初めまして。今日は私、安原が担当します」
チョークを黒板に丁寧に走らせる。
「何か質問はありますか? 何でもいいよ? 好きな映画とか、好きな食事とか…」
クラスが少しだけざわつく。
後輩と目を合わす。
「はい!」
「はい、え~尾田君?」
「先生はいつから教師をしているんですか?」
安原は一瞬右上に目をそらす。
「だいたい2年くらいかな?」
今だ。
「はい」
「え~神崎君」
「先生は教師になる前までは何をしていたんですか?」
安原の経歴の空白は教師になる直前にある。
この状況、どう出るか…?
「まぁ君たちになら話してもいいか…」
急に穏やかな顔が寂しげな顔に代わる。
「実はね…先生は紛争地帯で人質解放の交渉をしていたんだ」
国連?…そうか守秘義務があるな…
安原は続ける。
「とても過酷な仕事だったよ。いわゆる命の採決ってやつだからね」
その声は淡々としているのに、奥に沈んだ重みがあった。
腕時計型うそ発見器は緑色のランプを灯したままだった。反応なし…か。
「だからねもう目の前で罪のない人が死ぬのを見たくないんだ」
クラスに静寂が走る。
安原はふと穏やかな笑みを戻す。
「おっとすまないねくらい話をしてしまって…そろそろ授業に入ろうか」
教室に再びざわめきが戻る。
後輩と再び視線を交わし、指先で小さく信号を送った。
―駄目だ、収穫なし―
後輩がわずかに肩を落とす。
―つまりあいつか―
地下室の端で腕を組み、防犯カメラで二人の動きを一時間以上追っていた。
遠藤は職員室で淡々とプリントを整理し、安原はただただ穏やかな笑顔で挨拶している。
…不自然な行動はない。接触もなし。完全に“普通”だ
後輩が小声で近づいてきた。
「先輩、何か怪しい動きありました?」
「ない」
「そっちは?」
「改めて過去の行動分析しましたがやはり何も…」
思わずため息が出る。
「授業から読み取るしかないな…」
後輩もため息をつく。
視線を窓に向ける。
…今日で決める。
チャイムが鳴った。
「最後の最後まであきらめるな!行くぞ!」
「はい!」
―1時限目 社会科 安原健太郎
「初めまして。今日は私、安原が担当します」
チョークを黒板に丁寧に走らせる。
「何か質問はありますか? 何でもいいよ? 好きな映画とか、好きな食事とか…」
クラスが少しだけざわつく。
後輩と目を合わす。
「はい!」
「はい、え~尾田君?」
「先生はいつから教師をしているんですか?」
安原は一瞬右上に目をそらす。
「だいたい2年くらいかな?」
今だ。
「はい」
「え~神崎君」
「先生は教師になる前までは何をしていたんですか?」
安原の経歴の空白は教師になる直前にある。
この状況、どう出るか…?
「まぁ君たちになら話してもいいか…」
急に穏やかな顔が寂しげな顔に代わる。
「実はね…先生は紛争地帯で人質解放の交渉をしていたんだ」
国連?…そうか守秘義務があるな…
安原は続ける。
「とても過酷な仕事だったよ。いわゆる命の採決ってやつだからね」
その声は淡々としているのに、奥に沈んだ重みがあった。
腕時計型うそ発見器は緑色のランプを灯したままだった。反応なし…か。
「だからねもう目の前で罪のない人が死ぬのを見たくないんだ」
クラスに静寂が走る。
安原はふと穏やかな笑みを戻す。
「おっとすまないねくらい話をしてしまって…そろそろ授業に入ろうか」
教室に再びざわめきが戻る。
後輩と再び視線を交わし、指先で小さく信号を送った。
―駄目だ、収穫なし―
後輩がわずかに肩を落とす。
―つまりあいつか―
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