窓野枠 短編傑作集 7

窓野枠

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巣立ち

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子ども「ぼく、もうすぐ飛べるんだね」
母  「そうね、楽しみね」
子ども「はやく飛びたいなあ」
母  「すぐよ」
子ども「でも、お母さんはどうしていつも飛んでないの?」
母  「いつだって飛べるからよ?」
子ども「じゃ、今、見せてくれる」
母  「ほら」  
 母はそう言うと、その場で軽くはねてみせるが全く足は地上を離れてはいない。
子ども「何? それ? 」
母  「いい、ぼうや。飛ぶというのは、空とは限らないのよ」
子ども「へええ、そうなの? え? ぼくたち、空を飛ぶのではないの?」
母  「そうよ。私たちは海の中を飛ぶの」
子ども「そうなの、僕らは海の中を飛べるんだ。おぼれたりしないの?」
母  「もう、十分力が付いたから溺れたりしないわ。可愛い坊や、これから自分の力で生きていくのよ」  
 そう言うと、母は子どもの背中を押した。ペンギンの子は海に頭から入ると、溺れないように、母のことを忘れて夢中で泳いだ。瞬く間に母のいる場所から離れていった。ペンギンの巣立ちであった。
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