窓野枠 短編傑作集 1

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宇宙人

　高校３年生の田中純一たなかじゅんいちは、朝食を食べながら、器用に新聞を読む父に聞いた。
「お父さん、宇宙人っていると思う？」
　父親の持つ新聞紙がプルプル震えた。彼は新聞紙をたたむと、怖い顔をして純一をにらんだ。
「純一、そんな事を聞いてはいけない。いいかい、他の人にも、そんなこと決して聞いてはいけない」
「え？　ど、どうして？」
「そりゃー　おまえ、私たちが宇宙人だからだよぉー」
「はぁ？」
　純一は父の言った事に一瞬戸惑った。
「お父さん、冗談がきついよ」
「お父さんが宇宙人だったら、お前は子どもだから、お前も宇宙人だ。理屈で言うとそうだろう？」
「それはそうだけど、お父さんが宇宙人だって言う証拠はあるの？」
　父親はむっとした顔をして席を立ち、部屋を出ていった。しばらくして、父親は段ボール箱を抱えて戻った。その箱の中から一通の手紙を出して、テーブルの上に置いた。
「私の父の手紙だ。お前のおじいさんだよ」
　純一はその手紙を広げて読んだ。

渉へ
お父さんは今まで黙っていたが、宇宙人だった。ごめんよ。秘密にしていて悪かった。お父さんも実はお父さんから聞かされるまで知らなかったんだ。だから、黙っていたこと、許してほしい。
父より

　宇宙人だったことを秘密にしていたことへの謝罪が書かれていた。ダンボールの中はすべておじいさんのおじいさん、こりゃまたおじいさんのものがずっと、何代にもわたり、貯められていた。
　すべての手紙を読み終えた純一は、父の顔をじっと見つめてから口を開いた。
「ねえ、筆跡がみんな同じなんだけどぉー」