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第18章 沢子
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沢子は屋敷の正門を飛び出した。彼女は立ち止まり右に行くか、左に行くか、2年余に亘り座敷牢に監禁され鉄格子から出たことがなかった。それでもいつかこの牢から出ることを描きトレーニングしてきた。
しかし、以前のような筋肉は消えてしまった。彼女はわずかな距離の廊下を走っただけで息が切れた。彼女は正門の前で立ち止まり呼吸を整えつつ目をこらした。深夜の町は静まりかえり街灯がないところは闇だ。彼女はいっそこの闇の中へ娘の義美とともに消えてしまえたらどんなに楽か、と思った、が。
「この子のために生きてやるわ」
そう思いながら沢子は抱いた義美の顔を見た。目を大きく開いて笑っていた。
「まあ、なんて子なの?」
沢子に絶対的な信頼を抱いているからこその笑顔なのだ。沢子はそう思うと不安ながらも闘志をわかした。
「奥さま、お出かけでございますか?」
掛け声に驚いた沢子は声の方向に顔を向けた。街灯の影に30歳台くらいの男が竹箒を持って立っていた。座敷牢に入れられている沢子に毎回、食事を運んでくる男だ。海星から座敷牢に唯一近づくことを許されていた男だ。彼女は今まで海星とこの男以外、だれも見たことはなかった。きっとただ者ではない男だ。沢子は男の挙動を警戒した。深夜、この男はこんな所で何をしているのか。竹箒を持って掃除するにはあまりにも暗い。箒を持って警備しているとは思えない。不審の目で見つめる沢子を男も口を開けて珍しそうな目で見つめていた。沢子はこのとき、男が沢子の裸を見つめていたことに気付いた。海星は屋敷の外へ逃げられないよう服を与えてくれなかった。檻の中に入れられ、鍵で出られないようにしているのに裸にして辱めているのは、単に海星の悪趣味でしかない。あいつは鬼畜だ。彼女は恥ずかしくて鉄柵の前にこの男がやってくると体を小さくして薄暗い牢屋の奥へ隠れた。
「沢子さま、お逃げになるのですね?」
途方に暮れていた沢子は男の言葉に救われた。
「そうよ、あいつから逃げるの…… あなた、知らせたりしないわよね」
「もちろんです。その前に…… そのお姿ではお困りでしょう」
男は着ていた上着を脱いで沢子に着るよう差し出した。
しかし、以前のような筋肉は消えてしまった。彼女はわずかな距離の廊下を走っただけで息が切れた。彼女は正門の前で立ち止まり呼吸を整えつつ目をこらした。深夜の町は静まりかえり街灯がないところは闇だ。彼女はいっそこの闇の中へ娘の義美とともに消えてしまえたらどんなに楽か、と思った、が。
「この子のために生きてやるわ」
そう思いながら沢子は抱いた義美の顔を見た。目を大きく開いて笑っていた。
「まあ、なんて子なの?」
沢子に絶対的な信頼を抱いているからこその笑顔なのだ。沢子はそう思うと不安ながらも闘志をわかした。
「奥さま、お出かけでございますか?」
掛け声に驚いた沢子は声の方向に顔を向けた。街灯の影に30歳台くらいの男が竹箒を持って立っていた。座敷牢に入れられている沢子に毎回、食事を運んでくる男だ。海星から座敷牢に唯一近づくことを許されていた男だ。彼女は今まで海星とこの男以外、だれも見たことはなかった。きっとただ者ではない男だ。沢子は男の挙動を警戒した。深夜、この男はこんな所で何をしているのか。竹箒を持って掃除するにはあまりにも暗い。箒を持って警備しているとは思えない。不審の目で見つめる沢子を男も口を開けて珍しそうな目で見つめていた。沢子はこのとき、男が沢子の裸を見つめていたことに気付いた。海星は屋敷の外へ逃げられないよう服を与えてくれなかった。檻の中に入れられ、鍵で出られないようにしているのに裸にして辱めているのは、単に海星の悪趣味でしかない。あいつは鬼畜だ。彼女は恥ずかしくて鉄柵の前にこの男がやってくると体を小さくして薄暗い牢屋の奥へ隠れた。
「沢子さま、お逃げになるのですね?」
途方に暮れていた沢子は男の言葉に救われた。
「そうよ、あいつから逃げるの…… あなた、知らせたりしないわよね」
「もちろんです。その前に…… そのお姿ではお困りでしょう」
男は着ていた上着を脱いで沢子に着るよう差し出した。
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