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第27章 大和田純子と高橋源三郎

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 特別区採用試験の日、純子は最終の試験問題の全問をすでに解答用紙に記入し終えていた。試験開始後、30分経てば、退席が可能だったが、まだ、20分しかたっていない。潤子は演壇で時計を確認する高橋の行動を見つめていた。高橋がこちらをじっと見ていることに気が付いた。
「彼は…… とても、いい目をしている…… あたしに気が付いて、あたしを見ているの?」
 夜の人格・潤子が突然、出現しほほえむ。「純子、試験は全問解答したのね。では、ここからはわたしに任せればいいわ」
 夜の人格・潤子は持っていたペンを机の上に、静かに置いた。

  *

「みなさん、時間になりました。ペンを置いてしばらく着席のままでいてください。スタッフが解答用紙、問題用紙を前から順番に回収いたします」
 スタッフが問題と回答を集め終えると、高橋が受験生に試験の終了を告げ、受験生は退席した。高橋は集めた答案用紙の入ったダンボールの数量を確認した。これを答案採点会場に搬送して本日の業務は終了である。バンに積み込んだ答案用紙を見送った高橋は、構内の係員から原状復帰の報告を本部に一報し、会場スタッフが退勤していくのを見届けた。高橋は腕時計を見てから「ふう、無事に終わったな」あんどの息を大きくはいた。高橋は帰る準備を始めた。
 彼は事務室のドアを開け、廊下に出た。高橋は突然、絶世の美女が高橋の数メートル先に立っているのを見て驚いた。ぼう然と見つめていた高橋は数秒で正気を取り戻した。
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