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厨二病、プール掃除をする。
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「……おい、まどか。」
突然隣に座っているクリスが声をかけてきた。
「なにクリス、質問は後で先生に聞いてよ?」
残念ながら今ではクリスの方が頭がいいのだ。うう…情けない。
「いや、違う。ここの世界は髪が黒いやつが多いんだな。」
「えっああ、うん。染めないと黒だよね基本は。」
「染める?まどかや田中は茶色だが。」
「田中くんは染めてるからね。私は自毛だよ、色素薄いの。」
「色素?確かにまどかの目も薄い茶色だな。」
「ちょ、近付いて来ないで。クリスみたいな青眼はいないの日本には。」
「そうだな…髪もピンクゴールドやグリーンも居ないし…。なんだか新鮮だ。」
「ピンクゴールド?うわぁ素敵だね。羨ましいな。」
「ああ、レイラがピンクゴールドだったな。」
「レイラ?」
「俺の婚約者だ。」
ガタッ
あっしまった!驚いて机を押してしまった。先生睨まないで。
「婚約者!?クリス、婚約者いたの!?」
「一応な。勝手に決められたから気にしていないが。」
そうだよね…クリスみたいな立派な副団長なら婚約者ぐらいいるよね…。
「しかしピンクゴールドは目がチカチカするからな。まどかみたいな落ち着いた色の方がいい…おい、聞いているのか。」
「お前が聞いているのか、アレク。」
気付いたら私達の目の前に先生がいた。
「ひぇ!すみません先生!!ほら、クリスも謝って!!」
「お前ら後で職員室な。」
先生はそう言うと教壇に戻って行った。
うわぁぁ怒られるぅ!!クリスは呑気になんだろうかと言っていた。いや、察しなよ!!
「よし、来たなお前ら。」
「なんだ先生、俺は忙しいんだ。手身近に頼む。」
上から目線のクリスに先生の雷が落ちた。そりゃそうだな。
「なるほど…話を聞いてなかったから呼ばれたんだな。それはすまなかった先生、次回から気をつける。」
「いや、なんでお前は毎回上から目線なの。」
「すみません、先生…悪い子じゃないんです。」
えっ何これなんかお母さんみたいなんだけど。
「本当に反省してるのか?」
「してますよ!!めっちゃしてます!!ね、クリス!!」
「ならお前らプール掃除をしろ。」
はいわかりました……ってえ!?なんでそうなるの。
「どうせ帰宅部で暇だろ?ほら、体育着に着替えて掃除だ。」
「ええ!!待って先生2人では大変です!!」
「大丈夫だろ、アレクは人並み以上の体力があるから。」
「そうだ先生。騎士団の仕事に比べたらどうってことない。」
あああ、余計な事を!!クリスは黙ってて!!
「あのぉ、俺手伝おうか?」
突然背後から声がかかった。
「お?田中か。お前部活があるんじゃないのか?」
「うーん、どうせ軽音部はいつもタラタラ演奏してるだけだし。良かったら手伝うよまどかちゃん。」
「良かったな佐々木、よし3人で頑張ってこい。」
先生はそう言って机の方に向いてしまった。
「ごめんね田中くん…巻き込んで……。」
「いやいや気にしないで。たまには身体動かさないとね。」
「そうだな身体を動かすことは大事なことだ。」
いやいやうちらに付き合ってもらうんだよ!!
「ほぉ…これがプールか…広いな。」
クリスは初めて見るプールにキョロキョロしていた。
「えっ何アレクくんってプール知らなかったの?泳ぎの練習とかしなかった?」
「泳ぎの練習なら近くの川とかでやる。」
アレクくんって見かけによらず野生児だったんだねぇと田中くんは苦笑いしていた。
「じゃぁ私ホースで水かけるからデッキブラシで擦っていってくださいー!」
私の声にクリスと田中くんは了解!と返事をした。
底一面に水をかけると私もデッキブラシを取り出した。
うん、なんか楽しいなこれ♪
「あはは、まどかちゃん楽しそうだね。」
「うん、プール掃除なんてしたこと無いから楽しい♪」
「俺もまどかちゃんとプール掃除楽し…ぶっ!」
突然田中くんに雑巾が降りかかった。
「おい、床が終わったなら雑巾で周りを擦れ。」
何故か不機嫌なクリスに田中くんは怒りながら床を擦り始めた。
「しかし凄い広さだな。これは確かに2人では大変だったかもしれない。いや、俺はいつも鍛えているから大丈夫だがな。まどかが途中でぶっ倒れるかもしれん。」
私だってそんなに貧弱じゃないのに。
「いやぁ暑いな。今日は涼しいと思っていたが…身体をたくさん動かすとやはり暑くなる……ぶっ!」
汗を拭っていたクリスに突然水が飛んできた。
「あっごめんアレクくん手が滑っちゃったぁ。」
田中くんはホースを持ちながらニヤニヤ笑っていた。
「貴様……!!何をする!!」
「ごめん手が滑っちゃったんだって。いいだろ?暑い言ってたんだし。」
「嘘つけ!!なんでそんなにニヤニヤしてるんだ!!ホースを寄越せ!!」
クリスと田中くんはホースの取り合いを始めた。
「ちょ、やめてよアレクくん!冷たい冷たいって!!」
「うるさいお前がホースを寄越せばいいだろ!!」
クリスはホースを奪うと田中くんに至近距離から水を浴びせた。
「ゔわぁぁぐるじい!!やめでアレグぐん……!!」
「あはは、悪いな田中!!手が滑っているんだ!!」
「こらぁ!!二人ともいい加減にしなさーい!!」
楽しそうに遊ぶ2人についに私の雷が落ちた。
「おっ、プール掃除終わったのか…ってお前らなんでびしょびしょなの。」
先生はびしょ濡れのクリスと田中くんを見て驚いていた。
「すみません、先生…不慮の事故で2人が……。」
「ったく、しょうがねぇ2人だな。まぁいいやお疲れさん。」
先生はそう言ってスポーツドリンクを私達にくれた。
「わ、ありがとうございます。」
「早く着替えてこい。まだ肌寒いから風邪ひくぞ。」
確かに先生の言う通りだ。なんか寒い……と呟く2人を私は急いで引っ張って行った。
突然隣に座っているクリスが声をかけてきた。
「なにクリス、質問は後で先生に聞いてよ?」
残念ながら今ではクリスの方が頭がいいのだ。うう…情けない。
「いや、違う。ここの世界は髪が黒いやつが多いんだな。」
「えっああ、うん。染めないと黒だよね基本は。」
「染める?まどかや田中は茶色だが。」
「田中くんは染めてるからね。私は自毛だよ、色素薄いの。」
「色素?確かにまどかの目も薄い茶色だな。」
「ちょ、近付いて来ないで。クリスみたいな青眼はいないの日本には。」
「そうだな…髪もピンクゴールドやグリーンも居ないし…。なんだか新鮮だ。」
「ピンクゴールド?うわぁ素敵だね。羨ましいな。」
「ああ、レイラがピンクゴールドだったな。」
「レイラ?」
「俺の婚約者だ。」
ガタッ
あっしまった!驚いて机を押してしまった。先生睨まないで。
「婚約者!?クリス、婚約者いたの!?」
「一応な。勝手に決められたから気にしていないが。」
そうだよね…クリスみたいな立派な副団長なら婚約者ぐらいいるよね…。
「しかしピンクゴールドは目がチカチカするからな。まどかみたいな落ち着いた色の方がいい…おい、聞いているのか。」
「お前が聞いているのか、アレク。」
気付いたら私達の目の前に先生がいた。
「ひぇ!すみません先生!!ほら、クリスも謝って!!」
「お前ら後で職員室な。」
先生はそう言うと教壇に戻って行った。
うわぁぁ怒られるぅ!!クリスは呑気になんだろうかと言っていた。いや、察しなよ!!
「よし、来たなお前ら。」
「なんだ先生、俺は忙しいんだ。手身近に頼む。」
上から目線のクリスに先生の雷が落ちた。そりゃそうだな。
「なるほど…話を聞いてなかったから呼ばれたんだな。それはすまなかった先生、次回から気をつける。」
「いや、なんでお前は毎回上から目線なの。」
「すみません、先生…悪い子じゃないんです。」
えっ何これなんかお母さんみたいなんだけど。
「本当に反省してるのか?」
「してますよ!!めっちゃしてます!!ね、クリス!!」
「ならお前らプール掃除をしろ。」
はいわかりました……ってえ!?なんでそうなるの。
「どうせ帰宅部で暇だろ?ほら、体育着に着替えて掃除だ。」
「ええ!!待って先生2人では大変です!!」
「大丈夫だろ、アレクは人並み以上の体力があるから。」
「そうだ先生。騎士団の仕事に比べたらどうってことない。」
あああ、余計な事を!!クリスは黙ってて!!
「あのぉ、俺手伝おうか?」
突然背後から声がかかった。
「お?田中か。お前部活があるんじゃないのか?」
「うーん、どうせ軽音部はいつもタラタラ演奏してるだけだし。良かったら手伝うよまどかちゃん。」
「良かったな佐々木、よし3人で頑張ってこい。」
先生はそう言って机の方に向いてしまった。
「ごめんね田中くん…巻き込んで……。」
「いやいや気にしないで。たまには身体動かさないとね。」
「そうだな身体を動かすことは大事なことだ。」
いやいやうちらに付き合ってもらうんだよ!!
「ほぉ…これがプールか…広いな。」
クリスは初めて見るプールにキョロキョロしていた。
「えっ何アレクくんってプール知らなかったの?泳ぎの練習とかしなかった?」
「泳ぎの練習なら近くの川とかでやる。」
アレクくんって見かけによらず野生児だったんだねぇと田中くんは苦笑いしていた。
「じゃぁ私ホースで水かけるからデッキブラシで擦っていってくださいー!」
私の声にクリスと田中くんは了解!と返事をした。
底一面に水をかけると私もデッキブラシを取り出した。
うん、なんか楽しいなこれ♪
「あはは、まどかちゃん楽しそうだね。」
「うん、プール掃除なんてしたこと無いから楽しい♪」
「俺もまどかちゃんとプール掃除楽し…ぶっ!」
突然田中くんに雑巾が降りかかった。
「おい、床が終わったなら雑巾で周りを擦れ。」
何故か不機嫌なクリスに田中くんは怒りながら床を擦り始めた。
「しかし凄い広さだな。これは確かに2人では大変だったかもしれない。いや、俺はいつも鍛えているから大丈夫だがな。まどかが途中でぶっ倒れるかもしれん。」
私だってそんなに貧弱じゃないのに。
「いやぁ暑いな。今日は涼しいと思っていたが…身体をたくさん動かすとやはり暑くなる……ぶっ!」
汗を拭っていたクリスに突然水が飛んできた。
「あっごめんアレクくん手が滑っちゃったぁ。」
田中くんはホースを持ちながらニヤニヤ笑っていた。
「貴様……!!何をする!!」
「ごめん手が滑っちゃったんだって。いいだろ?暑い言ってたんだし。」
「嘘つけ!!なんでそんなにニヤニヤしてるんだ!!ホースを寄越せ!!」
クリスと田中くんはホースの取り合いを始めた。
「ちょ、やめてよアレクくん!冷たい冷たいって!!」
「うるさいお前がホースを寄越せばいいだろ!!」
クリスはホースを奪うと田中くんに至近距離から水を浴びせた。
「ゔわぁぁぐるじい!!やめでアレグぐん……!!」
「あはは、悪いな田中!!手が滑っているんだ!!」
「こらぁ!!二人ともいい加減にしなさーい!!」
楽しそうに遊ぶ2人についに私の雷が落ちた。
「おっ、プール掃除終わったのか…ってお前らなんでびしょびしょなの。」
先生はびしょ濡れのクリスと田中くんを見て驚いていた。
「すみません、先生…不慮の事故で2人が……。」
「ったく、しょうがねぇ2人だな。まぁいいやお疲れさん。」
先生はそう言ってスポーツドリンクを私達にくれた。
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