居候は厨二病。

Musk.

文字の大きさ
上 下
15 / 45

厨二病、風邪をひく。

しおりを挟む
「さ………寒い…………。」

「そりゃそうでしょ、39℃あるもん。」

次の日。クリスは見事に風邪をひいていた。

「くっ!まさか俺が風邪をひくなんて……!!」

「そりゃ濡れた格好で夕方までウロウロしてたらねぇ。」

「風邪をひくなんて軟弱な証拠だ……!それよりまどか学校行くぞ。」

「はぁ!?何言ってるのそんな高熱でダメだよ!!」

「あら?やっぱりクリスちゃん熱あったのね?」

お母さんが心配そうにクリスの部屋に入ってきた。

「うん、39℃。」

「まぁそんなに!?困ったわぁ今日お母さん休めないの。」

「大丈夫だお母さん、俺は学校に行く。」

「ダメだよ!!お母さん大丈夫、私も休んで看病するから!」

「はぁ!?ダメだまどか!お前は学校行け!!」

「そうねぇまどかが居るなら安心かな。クリスちゃんの事頼むわね。」

人の話を聞けと騒ぐクリスを寝かしつけてお母さんは仕事に行った。


「クリス、お粥作ってくるからちゃんと寝ててね。」

「要らん。俺はお腹すいてない。」

「薬飲むなら何か食べないとダメだよ。」

「薬なんて飲まなくても薬草を持ってきてくれれば大丈夫だ。なに、俺は薬草学もしっかり学んでいるから調合なら問題ない。」

「いや、私が薬草詳しくないから。薬草探しに行ったら1年は戻ってこないよ。」

そう言うとクリスは仕方ないな…と布団に潜った。


「はい、クリスお待たせお粥だよ。」

「悪いな…ほう、これがお粥という物か。白いな。」

「そうかお粥なんて知らないよね。熱いから気をつけてね。」

言い終わる前にクリスは熱い!と涙目になった。ああ、もう。

「うん、素朴だが美味しいな。この赤いものはなんだ?」

「良かった口にあって!それは梅干し。酸っぱいけど美味しいよ。」

クリスは梅干しを頬張り、酸っぱいが上手い。と感激していた。

「食べ終わったらこの薬飲んでね。で、寝てなさい。」

「ああ………。…まどか、お前に聞きたいことがある。」

クリスが突然神妙な顔をした。えっどうしたの。

「何?何かあったの?」

「正直に言ってくれ。…俺はただの風邪じゃないんだろう?」

「えっ………ええ!?いやいや風邪だよ!!」

突然のクリスの問いに私は驚愕した。

「嘘をつかないでくれ。俺は…厨二病という病気なんだろう?」

「………………は?」

「この間田中に聞いたんだ、厨二病が何かって。そしたら病気だって言ってた。人によっては一生治らないという恐ろしい病気だって……。」

私は猛烈に田中くんを殴りたくなった。なんて余計な事を!!

「異世界に来てそんな恐ろしい病気にかかるとは思わなかった…どうなんだまどか。俺の寿命は短いのか?」

「いや…いやいやいや!!大丈夫!!厨二病は死ぬ病気じゃないから!!」

「そうなのか?しかし治りにくい恐ろしい病気なのだろう?」

「人によっては一生こじらすかもしれないけど、大体の人は大人になるにつれて自然治癒するから大丈夫だよ!!」

「そうなのか……安心した、ありがとうまどか。」

うっ…クリスの笑顔が良心に響く。いや嘘は言ってないもん。

「しかしこの病気は珍しいものなのか?」

「いや、そんな事ないよ!!思春期にはかかりやすいんだよ。」

「なるほど。まどかもかかった事あるのか?」

「私はないけど……田中くんはかかった事あるんじゃない?」

とりあえず田中くんに嫌がらせをする私。

「そうなのか!田中は克服したのか!凄いな田中…俺も田中を見習って早く克服しよう。」

そう言うとクリスは薬を飲み寝る、と言って布団に入った。

「おやすみなさい、クリス。」

私はクリスにそう言うと食器を持って出て行った。


翌朝元気になり登校したクリスが、同じく風邪を引いて回復して来た田中くんに「お前も辛かったんだな…俺もお前のように克服するよ、厨二病を。」と言って、田中くんが青い顔して「ええ!?俺、厨二病じゃないよ!?アレクくん!?」とクリスを追いかけ回していたのは、見なかったことにしよう。


しおりを挟む

処理中です...