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序章〜観測者
22. Manish Report 1章〜完結
しおりを挟む特異点=1が特異点=2への接触を確認。
報告:観測者マニス=マニシュ
巨人世界の最果てにて
――――――――――――――――――――――――
赤いクーペが猛スピードで走っている…前日の大雨で地面が水を多く含み、あちらこちらで水溜まりとぬかるみがある。
それを物ともせずに、クーペは水飛沫も巻き上げずに一定の早い速度を保っていた。
乾いた大地だとタイヤが土煙をあげながら走っていくのが普通だが、本来地面に接しているはずのタイヤは、地面から少し浮き、車輪は回転していない。
車体が地面から数10センチ浮いた状態を保ったまま滑走している様な形で、まるでリニアモーターカーの様な原理で異常なスピードを維持しながら移動をしていると言った方が正しい。
しばらくすると、辺りの景色が一変して草木が群生する場所へとやって来た。
緑の中をゆっくりと走り抜けて行く真っ赤なクーペ。
草木の大きさも、先程の場所とはうって変わって、高い木でもせいぜい20mといった高さで枝と枝が重なり合うように群生している。
道は無く、辺りは新緑の様な鮮やかで活きいきとした色合いの草花があちらこちらに咲いていた。
赤いクーペがゆっくりとした速度でその森の中を進んで行くと、立派な鋳物の門が現れた。
門は、赤いクーペを招き入れる様にゆっくりと開き、車はそれに答える様に中へと進んでいった。
さらに奥に進むと手入れが行き届いた中庭が広がっている。
門を通り抜けたアプローチに、テラコッタの様な平板が中庭の真ん中に位置する噴水の周りに放射線状に敷き詰められている。
薄い素材のテラコッタは、車両が乗り入れると簡単に割れてしまうのだが、赤いクーペはそのままゆっくりと中庭のアプローチを抜けて噴水の周りを時計周りに移動をする。
奥に進むと一層鮮やかな中庭が広がり、イングリッシュガーデン風のその中庭には、ラベンダーやセージ、タイム、ミントといったハーブなどの赤や、黄色、青、紫といった、花々で溢れていた。
ゆっくりと赤いクーペは中庭を抜けて西洋風の洋館に着いた。
赤いクーペが洋館の車寄せに似たスペースに止まると同時に待ち兼ねた様に洋館の大きめの立派な扉が音を立てて開き、中から亜麻色の束ねられた髪の真紅のワンピースを着た少女が赤いクーペに駆け寄った。
その少女は、赤いクーペの助手席の窓から中の様子を伺うと、
「可哀想にこんな姿になって…」
と呟いた。
――――――――――――――――――――――――
報告:観測者マニス=マニシュ
特異点=1と特異点=22が御伽世界への移動を完了。
プロローグ~観測者
完
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