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2章 Queen ANT (アリの女王編)
24.Ant burrow(アリの巣)
しおりを挟むマイクロバスの車内では、日向 月斗と本庄 陸が外の様子を伺いながら次の行動を決めかねていた。
顧問の堂島達の乗るバスと距離がある為、状況が全く掴めない。
月斗の炎の魔法を使えば混乱に乗じて逃げ出す事も可能かも知れないが外にいるあのアリに似た乗り物が厄介だ。
猛スピードで走り去るトリに一瞬で追いつき、太く丈夫そうな足をいとも容易く切り落とした薙刀の様な武器の前ではバスのタイヤなど簡単に切り裂いてしまうだろう。
しかも、トリ達を仕留めた手際の良さから軍隊の様な統制力の取れた部隊であることに違い無かった。
更に驚くべき事は、月斗の炎で倒れたトリ達を次々と解体して巣穴らしき場所へと運び込む行動も、自然界におけるアリそのものだった。
ほんの1時間程でトリの解体が終わり堂島達の乗るバスとマイクロバスがそのアリに似た乗り物の丈夫な上顎の様なモノにしっかりと掴まれて2台が続いて引きずりこまれていく。
巣穴の中は高速道路のトンネルの様な大きさで、20mほど進むと陽の光が一切入らず真っ暗闇となった。
幸いにも2台が連なる様な形になったことで、伏見の「異次元パケット」が発動した。
少し能力が上がっているのだろう以前はバスの車内のみの通信だったのがマイクロバスの方まで電波が届く様になっていた。
月斗は手にしたスマホから顧問の堂島からのメッセージを受け取った。
―――――――――――――――――そっちは無事か?―――――――――――――――――
ええ、今のところは…でもコレって非常にマズイ状況って事ですよね?
―――――――――――――――――
真面目な内容のメッセージなのに、堂島のふざけたアイコンに目が行ってしまう。
いつでも行動出来る様にスタンバっておけ!
スタンばっておけ?って何だ?スタンプまでついている?
とにかく、月斗は堂島の気になるスタンプの事は置いておいて、アリ達の様子を伺った。
奥に進むほどに暗闇が深まると思いきや、意外にも中は明るくなっていき、長いトンネルを抜けるととても広い空間へと到着した。
バスとマイクロバスは解体されたトリとは別方向へと引きずられる。辺りは地底とは思えない明るさで2台が向かう先には土で出来た立派な塔の様なモノが建っている。
地面はまるで舗装でもしてあるかの様に穏やかで揺れは全く感じなかった。
どうやら車体はアリの様な乗り物の上顎に掴まれて持ち上げられている様だ。
ゆっくりと2台は、アリの様な乗り物の顎から外されタイヤが地面へと接する。
すると塔の真ん中の入り口から、人間サイズの黒いアリの怪物の様な姿をした者たちが現れ、2台の周りをずらりと取り囲んだ。
手には先ほど目にした先端の尖った槍の様なものを携えている。
「しっかり取り囲まれてるな…」
堂島の額に汗が滲む。
「どう見ても、言葉が通じる相手では無さそうですね。」
「ああ、しかも知能は相当高そうだし、規律もしっかりしていて統制が取れている。大人しく投降した方が良さそうだ。」
堂島が覚悟を決めて、バスのドアの前に立った。
「三原さん、私が出ます。もしチャンスがあるならいつでもバスを動かせる様お願いします。」
「はい、いつでも行ける様にスタンばっておきます!堂島先生、お気をつけて!」
三原はそう言うとバスのドアを開いた。
堂島がゆっくりと両手をあげてバスのステップをゆっくりと降りて行く。
その様子をマイクロバスの中から月斗達も息を殺しながら見守った。
緊張からか、その僅かな動作がとても長く長く感じられた。
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