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2章 Queen ANT (アリの女王編)
29. We all die! (全員死ぬ!)
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堂島 海里を先頭に一行は一列になり腹這いでアナの奥へと匍匐前進を続けた。
月斗の魔法による灯りの無い暗い中、無言でただただ前へと進む。
しばらくするとやや暗闇に目は慣れて来るものの列の1番後方にいる道修空太は前を進む淡路駿の姿さえ視認出来ずにいた。
前に微かに感じる駿の気配…それを頼りにひたすら前へと進んでいく。
時折、自分だけが1人取り残されているんじゃ無いか?という不安がよぎる。
空太は、月斗、本庄 陸、淡路 駿と同じ元応徳学園中等部のハンドボール部員で中学3年の時には全国大会で他の選手を圧倒したチームのCBを務めた。
的確な判断力と分析力、そして瞬発力をも兼ね揃えてはいたが淡路 駿と同様、能力的にはチームのエースである本庄 陸やキャプテンの日向 月斗をも凌ぐポテンシャルを持ちながら、やや控えめな性格の為、常に目立つ事は無かった。
ハンドボールのポジションの一つであるCBは、その名の通りコートの中央に位置し司令塔としての役割を担っている。
的確な状況判断が問われるポジションだ。
そう言った面では道修空太は適任だった。
CBは小柄でも判断力とパスセンスを持つものが有利と言われる中、体格面でも他の選手に引けをとらず恵まれている。
応徳学園中等部が全国大会初出場で活躍を見せた要因として彼のゲームメイクセンスが大きく一役をかっていた。終始目立つプレーをしていた月斗を陰ながら支える。
抜群のパス回しで相手チームを翻弄し両翼である月斗と陸の能力を最大限にまで引き揚げた。
常に目立とうとする「ワイがワイが」「オレが、オレが」の性格の月斗と違って常に周りに気を配り洞察力に長けている。
空太は匍匐前進を続けながら先程の堂島 海里と月斗のやり取りを思い返した。
月斗に預けていた鏡の様なサングラスと竹刀を受け取った堂島先生の手の甲の怪我の跡がキレイに無くなっていた。
確かに大した傷では無かったが、間違い無く堂島先生は利き腕である右手の甲に怪我を負っていた。
そんなすぐに傷が治る事なんてあるのか?時間にして1時間も経っていないはずだが…
この事を月斗に伝えるべきか?
一体どうやって?
道修 空太は考えを巡らす。
もし仮に月斗に伝えた場合…月斗はちょっとアホやから、思った事をすぐに口に出してしまう。
そして考え無しに
「先生!手の怪我治ってますね!」と言ってしまうだろう。そうして先生に化けたアリに攻撃されて…
全員死ぬ!
もし仮に陸に伝えた場合…陸はちょっとアホやから衝動的に行動をしてしまう。
挙句、考え無しに先生に化けたアリを攻撃をして返り討ちにあい…
全員死ぬ!
もし仮に駿に伝えた場合…駿は無言でコクンとうなずくだけ…
全員死ぬ!
では梶はどうだ?
梶は1年だが割と思慮深い…梶ならば!
しかし一体どうやって?
空太が考えを巡らしていると前を進む駿の気配が遠くなるのに気付いた。
慌てて空太はポケットからスマホを取り出しライトで前方を照らした。
やはり駿との距離が随分開いてしまっている。
⁉︎ふとスマホの画面を見つめる。
WiFiが繋がっている?伏見雷蔵の魔法である異次元パケットが使用可能って事か?
て事は、雷蔵は無事って事か?
だとしたら…
いや…今はそれよりもこの状況を何とかしなければ…
このまま出口を出て堂島先生に化けたアリに月斗が気付いてしまったらそれこそお終いだ!
異次元パケットを利用してLINEで月斗に知らせるか?
もし仮に月斗にLINEで知らせた場合…月斗はちょっとアホやから…長い文章を読むのが嫌いなので一行目だけを見て
「先生、怪我治ったんですね!」と不用意にスマホの画面を見せるだろう。
そして先生に化けたアリに攻撃されて…
全員死ぬ!
もし仮に陸にLINEで知らせた場合…陸はちょっとアホやから…長い文章を読んでも内容が理解出来ない。本能のまま先走って先生に化けたアリを攻撃して返り討ちにあい…
全員死ぬ!
もし仮に駿にLINEで知らせた場合…駿はLINEの返信が異様に長い!スタンプや絵文字を沢山使って更に長文で返そうとしてくるので待ってられない…
全員死ぬ!
なら梶はどうだ?梶なら…梶ならば…梶ならばきっと……
……… … …… ………… …。
うーん、そう言えば梶とはLINE交換して無かった………。
全員死ぬ!
空太はしばらく自分のスマホの画面を見つめていた。
気付くと前を進んでいる駿の姿が遠くなり出口付近の明かりそばに差し掛かろうとしていた。
マズイ⁉︎
空太は必死に匍匐前進で前へと進もうと試みたが焦って上手く進めない。
空太は全身に力を込め気を高め魔法を使って身体を浮かせる。
さらに出口に向けて一目散に滑空飛行を試みた。スピードがグングン上がり一瞬でパッと目の前が明るくなる。出口だ!
アナから飛び出した空太は勢い余って着地に失敗し地面に肘と膝を激しく打ち付け派手に転んだ。
「大丈夫か?」と月斗と堂島が駆け寄って来る。
「ホラっ!空太!先生の手の甲の傷消えてるんだぜ!」と言ってあろうことか堂島の右手を掴んで空太に見せてくる。
マズイ、遅かった…
空太の目の前の光景がスローモーションに変わる。まるで走馬灯の様にこれまでのことがぐるぐると頭の中を駆け巡った。
空太は咄嗟に目をつむる。
堂島の姿が一瞬で黒くて硬い外殻と大顎を持ったアリの兵士に変わり、手には黒くて大きな鎌を携えている。
それを力一杯大きく振り被り一気に月斗目掛けてゆっくりと振り下ろした。
赤い鮮血と共に首と胴体が見事に離れ、首を失った胴体が2.3歩ゆっくりと歩いたか後、地面にバタンとうつ伏せに倒れ込んだ。床は大量の血で真っ赤に染まる。
全員死ぬ!
――――――――――――――――――――――――
「………」
目の前で突然目を閉じてじっとしている空太に
「おーい、空太!突然目ぇ閉じてどうした?大丈夫か?」
そう言って屈託の無い笑顔の月斗が目の前にアホみたいにボーっと立っていた。
???
「このアリの蜜凄いぞ!先生の右手の甲の怪我もこれで治ったんだって!お前も怪我してんだから舐めとけよ!」と言ってドロっとした白い液体を無理やり口に入れてくる。
空太は、必死に抵抗したが月斗に無理やり口に入れられた。
得体の知れない液体を必死に吐き出そうと試みる。
………が思いの他、甘くてとても美味かった。
一気に空腹が嘘の様に満たされ、魔法を使って疲れた身体に活力がみなぎってくる。
更には今しがた怪我をした肘と膝の傷が一瞬で治った。
空太は自分の顔が赤くなるのを感じながら緊張の糸が切れてその場に倒れ込んだ。
To be contonued in is it cre resource?(クリリソの事か?)
月斗の魔法による灯りの無い暗い中、無言でただただ前へと進む。
しばらくするとやや暗闇に目は慣れて来るものの列の1番後方にいる道修空太は前を進む淡路駿の姿さえ視認出来ずにいた。
前に微かに感じる駿の気配…それを頼りにひたすら前へと進んでいく。
時折、自分だけが1人取り残されているんじゃ無いか?という不安がよぎる。
空太は、月斗、本庄 陸、淡路 駿と同じ元応徳学園中等部のハンドボール部員で中学3年の時には全国大会で他の選手を圧倒したチームのCBを務めた。
的確な判断力と分析力、そして瞬発力をも兼ね揃えてはいたが淡路 駿と同様、能力的にはチームのエースである本庄 陸やキャプテンの日向 月斗をも凌ぐポテンシャルを持ちながら、やや控えめな性格の為、常に目立つ事は無かった。
ハンドボールのポジションの一つであるCBは、その名の通りコートの中央に位置し司令塔としての役割を担っている。
的確な状況判断が問われるポジションだ。
そう言った面では道修空太は適任だった。
CBは小柄でも判断力とパスセンスを持つものが有利と言われる中、体格面でも他の選手に引けをとらず恵まれている。
応徳学園中等部が全国大会初出場で活躍を見せた要因として彼のゲームメイクセンスが大きく一役をかっていた。終始目立つプレーをしていた月斗を陰ながら支える。
抜群のパス回しで相手チームを翻弄し両翼である月斗と陸の能力を最大限にまで引き揚げた。
常に目立とうとする「ワイがワイが」「オレが、オレが」の性格の月斗と違って常に周りに気を配り洞察力に長けている。
空太は匍匐前進を続けながら先程の堂島 海里と月斗のやり取りを思い返した。
月斗に預けていた鏡の様なサングラスと竹刀を受け取った堂島先生の手の甲の怪我の跡がキレイに無くなっていた。
確かに大した傷では無かったが、間違い無く堂島先生は利き腕である右手の甲に怪我を負っていた。
そんなすぐに傷が治る事なんてあるのか?時間にして1時間も経っていないはずだが…
この事を月斗に伝えるべきか?
一体どうやって?
道修 空太は考えを巡らす。
もし仮に月斗に伝えた場合…月斗はちょっとアホやから、思った事をすぐに口に出してしまう。
そして考え無しに
「先生!手の怪我治ってますね!」と言ってしまうだろう。そうして先生に化けたアリに攻撃されて…
全員死ぬ!
もし仮に陸に伝えた場合…陸はちょっとアホやから衝動的に行動をしてしまう。
挙句、考え無しに先生に化けたアリを攻撃をして返り討ちにあい…
全員死ぬ!
もし仮に駿に伝えた場合…駿は無言でコクンとうなずくだけ…
全員死ぬ!
では梶はどうだ?
梶は1年だが割と思慮深い…梶ならば!
しかし一体どうやって?
空太が考えを巡らしていると前を進む駿の気配が遠くなるのに気付いた。
慌てて空太はポケットからスマホを取り出しライトで前方を照らした。
やはり駿との距離が随分開いてしまっている。
⁉︎ふとスマホの画面を見つめる。
WiFiが繋がっている?伏見雷蔵の魔法である異次元パケットが使用可能って事か?
て事は、雷蔵は無事って事か?
だとしたら…
いや…今はそれよりもこの状況を何とかしなければ…
このまま出口を出て堂島先生に化けたアリに月斗が気付いてしまったらそれこそお終いだ!
異次元パケットを利用してLINEで月斗に知らせるか?
もし仮に月斗にLINEで知らせた場合…月斗はちょっとアホやから…長い文章を読むのが嫌いなので一行目だけを見て
「先生、怪我治ったんですね!」と不用意にスマホの画面を見せるだろう。
そして先生に化けたアリに攻撃されて…
全員死ぬ!
もし仮に陸にLINEで知らせた場合…陸はちょっとアホやから…長い文章を読んでも内容が理解出来ない。本能のまま先走って先生に化けたアリを攻撃して返り討ちにあい…
全員死ぬ!
もし仮に駿にLINEで知らせた場合…駿はLINEの返信が異様に長い!スタンプや絵文字を沢山使って更に長文で返そうとしてくるので待ってられない…
全員死ぬ!
なら梶はどうだ?梶なら…梶ならば…梶ならばきっと……
……… … …… ………… …。
うーん、そう言えば梶とはLINE交換して無かった………。
全員死ぬ!
空太はしばらく自分のスマホの画面を見つめていた。
気付くと前を進んでいる駿の姿が遠くなり出口付近の明かりそばに差し掛かろうとしていた。
マズイ⁉︎
空太は必死に匍匐前進で前へと進もうと試みたが焦って上手く進めない。
空太は全身に力を込め気を高め魔法を使って身体を浮かせる。
さらに出口に向けて一目散に滑空飛行を試みた。スピードがグングン上がり一瞬でパッと目の前が明るくなる。出口だ!
アナから飛び出した空太は勢い余って着地に失敗し地面に肘と膝を激しく打ち付け派手に転んだ。
「大丈夫か?」と月斗と堂島が駆け寄って来る。
「ホラっ!空太!先生の手の甲の傷消えてるんだぜ!」と言ってあろうことか堂島の右手を掴んで空太に見せてくる。
マズイ、遅かった…
空太の目の前の光景がスローモーションに変わる。まるで走馬灯の様にこれまでのことがぐるぐると頭の中を駆け巡った。
空太は咄嗟に目をつむる。
堂島の姿が一瞬で黒くて硬い外殻と大顎を持ったアリの兵士に変わり、手には黒くて大きな鎌を携えている。
それを力一杯大きく振り被り一気に月斗目掛けてゆっくりと振り下ろした。
赤い鮮血と共に首と胴体が見事に離れ、首を失った胴体が2.3歩ゆっくりと歩いたか後、地面にバタンとうつ伏せに倒れ込んだ。床は大量の血で真っ赤に染まる。
全員死ぬ!
――――――――――――――――――――――――
「………」
目の前で突然目を閉じてじっとしている空太に
「おーい、空太!突然目ぇ閉じてどうした?大丈夫か?」
そう言って屈託の無い笑顔の月斗が目の前にアホみたいにボーっと立っていた。
???
「このアリの蜜凄いぞ!先生の右手の甲の怪我もこれで治ったんだって!お前も怪我してんだから舐めとけよ!」と言ってドロっとした白い液体を無理やり口に入れてくる。
空太は、必死に抵抗したが月斗に無理やり口に入れられた。
得体の知れない液体を必死に吐き出そうと試みる。
………が思いの他、甘くてとても美味かった。
一気に空腹が嘘の様に満たされ、魔法を使って疲れた身体に活力がみなぎってくる。
更には今しがた怪我をした肘と膝の傷が一瞬で治った。
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