一時間の約束【完結】

moa

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第三章

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彼女が現れない日もある。



最初は、気にしていなかった。



「今日は来ない日なんだな。」



それだけだった。



でも、ある日。



四時を過ぎても、ブランコをこぎながら何度も入り口を見ている自分に気づいた。



来ない。



五時が近づいても、来ない。



なんだよ。



少しだけ、つまらなかった。



その次の日。



入り口に白い影が見えた瞬間、胸の奥がふっと軽くなった。



なんでだろう。



別に約束しているわけでもないのに。



彼女はいつも通り、少し遅れて歩いてきた。



「昨日、来なかったね。」



なんとなく言うと、



「うん。」



それだけ。



理由は聞かなかった。



聞いたら、来なくなる気がしたから。



その日、砂場で山を作っているとき。



ふと、思った。



「名前、なんだっけ?」



今さらだった。



彼女は一瞬だけ目を丸くして、それから笑った。



「今さら?」



「だって、聞いてなかったし。」



「……りん。」



「りん?」



彼女はうなずいた。



「うん。ひらがなで、りん。」



「りん、か。」



早速呼んでみる。



「りん」



すると、彼女は少しだけくすぐったそうに笑った。



「そっちは?」



「俺? れお。」



彼女はそれを一度、小さく復唱した。



大事にするみたいに。



「れお」



もう一度。



「れお」



その呼び方が、なんだかくすぐったかった。



その日から。



「ねえ」



じゃなくて、



「れお」



と呼ばれるようになった。



たったそれだけで、
公園の景色が少し変わった気がした。



帰り際。



「りん、またな。」



初めて名前をつけて言う。



彼女は、ほんの少しだけ驚いてから、



「うん、れお。またね。」



と笑った。



その笑顔は、今まででいちばん明るかった。

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