泥状のギギルコン「と」

がら がらんどう

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パセリ乗せるだけ

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吉井とみきは予備村から直接村長の家に行き、コンコンとみきがドアをノックすると、ドアを開けた村長は、おお、来たか。と2人を招き入れた。
 
 村長の家は20畳程度の部屋が1つの平屋の木造建築で、吉井は村長に促されるまま隅に置いてあった薄い座布団と取り、みきに、さすがにわたしのも取りますよね?と言われ、吉井は無言のまま一枚みきに渡した。

「副村長の知り合いと聞いていたが。そういうことか」
「そういうこと?」
 みきは村長、吉井を交互に見る。
「黒髪、それと肌の感じ。よく似ている」
「あー。そこはですねえ。一言でいうと、うーん。偶然?」

 ねえ、そうだよね?そう付け加え、みきは吉井の肩を叩いた。
「ええ、そうですね。たまたまっていうか」
「それでヨシイと言ったか。あなたはなぜここ」
 と村長が言い終わる前に、玄関の扉がどんどんと鳴り響いた。

 みきは、再び吉井と村長の顔をちらちらと見て、それではわたくしめがと言い、立ち上がった。

「はい、なんでしょうか」
 みきは扉を開けながら言った。
「取り立てです。前から言われてたやつです!」
 10代の男と思われる男が慌てながら、すでに開いている扉をどんどん叩いた。

 うーん、わたしはそういうの苦手なんだけどなあ。みきはぶつぶつ言いながら10代の男に、
「おいおい。女の部屋をノックするときは、なんとかのように扱えってママに教わらなかったか?」
 みたいな感じでいい?みきは不安そうな目で吉井を見た。

「いや、無理に上手く言わなくてもいいんじゃないの。というか、そのなんとかの例えをアメリカ風に言うのが大事なんじゃ」
 
 しょうがないでしょ、そんな急には思いつかないんですよ!だから無理にやれって言ってないし。とその後も二人が何度かやり取りしていると、
「今日中にどうにかしろって言ってますけど・・・」
 と扉を叩いた青年が遠慮がちに村長に言った。

「ああ。それならみきが」
 ほら、前言ってたやつだ。きみが処理するって。村長は吉井越しにみきに声を掛けた。

 はっ、としたみきは、くいくいっと手首を動かして吉井を立たせた後、部屋の隅に誘いこみ、吉井は、なんだよ?と呆れた表情を浮かべながらみきの前に立った。

「で、なに?」
「やばいってもんじゃないぐらいやばい。こうやってわざとらしく端っこにきて小声で言うぐらいやばい」

 ううぐう。みきは一瞬座り込みそうになるぐらい膝が曲がったが、ゆっくりと立ち上がった。

「言いますよ。やばいこと短めに言いますよ。要はですね、副村長として実績を積み上げてきたわたしは相談されたんですよ、村長に。村に借金的なものがあって、それの取り立てに近々国っていうか公的なのが来ると」
「ほう、それで?」
「で、言っちゃったんですよ。それ、わたしに任せてもらえませんか?って。なんかノリで・・・」
「はっは、なんだそのやり取り」
 吉井は小声で笑って、みきの肩を叩いた。

「本来なら今のセクハラとも捉えられる接触行動について、村の会議で取り上げるんだけど」
 みきはそう言って一瞥した後、村長の近くに向かい、
「すいません、一旦自分の家に帰ってきます。対策はある程度考えてるんで、最後の仕上げっていうか。パセリ乗せるだけぐらいの感じなので」
 
 村長はパセリ?と呟いた後、10代の男に、副村長がやるから下がっていい。と告げた。
 10代の男は素早く頭を下げて部屋から出て行き、みきは吉井を促しながら村長に、今日は裏口から出たい気分なので、こっちから。と村長の背後の扉を指差しながらそそくさと家を出た。


「あー。まじでやばいってー!」
 みきは自分の家に着いた瞬間膝から崩れ落ち、そのままゴロゴロと床を転げ回った。

「いくらなの?借金って」
 吉井は部屋に置いてあった木彫りの雪だるまのようなものを触りながら、転がっているみきを見ていた。

「300枚。この国の一番でかい貨幣で300枚。200枚ぐらいは用意できてるんですけど、あと100枚足りないんですよ」
「ふーん。それってどれぐらいの感じ?」
「この村60人ぐらいいるんですけど、全世帯の所得を合わせて、でかい貨幣で換算すると年間120枚」
 みきは転がるのを止め、立ち上がって部屋の中をうろうろしている。

「ごめん、いまいちすっと理解できない」
「村人全員で働いて2年ぐらいのお金ってことです。ほら、ちゃんと見て下さいよ!この壁メモ!こうやって書いてたのに!」
 
 みきは木の壁を指差した。そこには「100枚ぐらい、取り立て、来る」と彫られており、吉井は、
「よくわからないけどさあ。あと100枚だろ、なんとかなんないの?」
 と壁を触りながら言った。

「吉井さん。なんか100枚だからなんとなく100万ぐらいの感覚かもしれないけど、こっち換算だと気持ち1,000万ぐらいだから!」
「いや、じゃあさ。それわかっててよく引き受けたな」
「それはまあ。その現代知識を生かしてですね。とんち的なやり方で切り抜けられるかなって・・・」
「3年もいて大変だったっていう割にはなめてんなあ。こっちの世界」
「もう来てるんですよねえ、取り立ての人。ちょっとどんな感じか見てきてもらっていいですか?とんちが効きそうな人かどうか」
「それは外見では判断できないと思うけど。でもいいよ、ちょっと見てくる」
 吉井は靴を履いてみきの家を出た。

 家を出ると3人の男が村を案内されており、1人は平服の中年、残りの2人は鎧を着て槍を持っている。
 洞窟にいた兵士みたいなのと同じだな。あれが標準装備なのか。吉井は家の前に立ち、目の前を通り過ぎる3人を観察した。

 中年の男、2人の兵士は共に大きな荷物いくつか肩に掛けていた。そして3人共に足取りが重く、強い疲労の色がにじみ出ており、1人の兵士の背中にはもろに血がべっとりと付着している。
 
 吉井は3人が通り過ぎた後も、しばらく後ろから様子を眺め、村長の家に入ったのを確認してからみきの家に戻った。

「ねえ、どうでした?わたし金の斧と銀の斧の話でなんとかしのげるかな、と思ってるんですけど、大丈夫そうですかね!?」
「うーん、斧がどうのこうのっていう雰囲気じゃないかな・・・」
 
 みきは家に入ってきた吉井に四つん這いで近寄って来たが、吉井はそれを制止して座り込みさっき見た光景を思い出した。

 まあ普通に襲われたんだろうなあ。荷物多かったのは途中で死んだ人の使えそうな物を取りあえず持ってきたのかね。あ、そうか。荷物あるんだったら魔物か。物目当ての人間に襲われたんだったら盗られそうだし。
 しかし、あれだけいい感じに返り血が付いてるんだったら、兵士は1人死んだってことじゃないよな。3人、いや5人ぐらいか。
 それにみきは国とか公的なものが取り立てに来るって言ってたけど、1人普通の中年っていうのはおかしいな。こんなとこまでわざわざ事務方連れてくる意味ないし。あ、大体にして。

 吉井は再びドアを開けてなんとなく村長の家を見た。

 あの人達、回収したところで帰れんのか?来た時より少ない人数で。

 ふと視線を感じた吉井はみきを見ると、うんうん。と頷いており、
「いいですねえ、これでもかっていうぐらい考え込んだあげく無駄にドアを開ける。そしてその顔、解決策は見つかったようですな」
「解決はしてないな。でもやり方はいろいろあるだろ」
「よろしいよろしい。では先方もお待ちだ。我々も村長の家にお邪魔するとしよう」
 みきは先に立ち上って手を差し伸べ、吉井は、はいはい、ハラスメント以上にこういうのやりたいのね。と言いながらその手を掴んだ。
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