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1章 旅立ち
プロローグ 大妖怪の力
しおりを挟む人間、窮地になると異常な力を発揮するもの。
だが、それにしても――
(……限度ってあるよね!?)
襤褸の狩衣姿の童――刀伎清士郎は、自分の起こした惨状に顔を引きつらせた。
襲ってきたモノノ怪から身を守ろうとしただけ。
簡単な術を放っただけなのだ。
それがまさか周囲五間もの地面を椀の形にえぐり、小さな家屋ほどはある巨体のモノノ怪を吹っ飛ばし、はるか先の築地をぶちぬくとは思うまい。
こんな芸当ができるのは陰陽師でも一握り。それこそ従三位以上の上等陰陽師ぐらい。元服も済んでいない齢十三の清士郎ができることではない。
(いや……これぐらいはできて当然、なのか)
前世の記憶が戻った今となってはそう思う。
百鬼夜行を率い、人々を恐怖におとしいれた大妖怪の記憶が戻った今となっては。
(こんなとてつもない力があったら……)
一国を滅ぼすことすら可能だろう。
世界を揺るがすような――いや、実際に揺るがした力なのだから。
使い方によっては、あらゆる欲を満たせるはず。
しかし。
記憶とともに戻った力で、清士郎が最初に満たしたいと願った欲は――
(……たんまり稼いで、山盛りのごはんを食べたい!!!)
食欲、であった。
先ほどまで死闘が繰り広げられていた広小路に、じゅるりと場違いな音が響いた。
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