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貴方はアラサーで女教師でそんでもって魔法少年です?

ほ、ほら!RPGゲームでも主人公が死んで生き返っても王様は何も言わないわよね!?

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「それじゃあ学校に行くから、留守番頼んだぞ」

「ういー」
浩太こうた...車に気をつけて...」

そう居間から聞こえてくる二人の声を聞いて玄関を開ける。
今では当たり前になった出来事だが、一年前だったら考えもしなかっただろう。
俺の名前は《神崎かんざき浩太こうた》。何処にでもいる男子高校生をしている普通の学生だと思う。
多分...。
さっきの女の子達は俺の命の恩人で居候だ。いや俺の監視なのだろうか...。
なんて考えてたその時



その音と共に自分の体が宙に浮かんだ。
新学期早々に俺は車に轢かれた。
車に気をつけてとは言われたけどそれがフラグだったなんて誰も思わないでしょ....。
などと考えてたら頭から落ちた。

「グエッ...」

頭から血がドクドクと流れている感触がして、そこで俺の意識は薄くなって途切れた。

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気がついたら俺はベッドの上で寝ていた。

「知らない天井だ...」

いや知ってるわ。ここ、うちの学校の保健室だわ。

「あら?起きたかしら」

そう女性の声が聞こえて俺はカーテンの奥に目を向けた。
カーテンがシャーと開くと、そこには白衣を着た見知らぬ教員が立っていた。

「もう頭は痛くない?」

「え?あぁ...はい...」

俺が頭の上に「?」をのせていると彼女は自己紹介をはじめた。

「私は《田村たむらかえで》、今日から前任の保険の先生に変わって私になったの。宜しくね?」

彼女がそういうとニコッとこちらに笑いかけた。何故、自分がここに居るのか訊こうとしたが俺の言葉を遮るかのように彼女は話を続けた。

「そ、そう!貴方!道路で頭から血を流して倒れてたのよ!だから私がここまで運んで看病したの!」

成る程...って納得するところで俺はちょっとした疑問を持った。

「なんで病院じゃなくて学校に来たんですか?」

俺がそういうと明らかに彼女の目が泳ぎ出した。

「えぇっとぉ~...それはぁ~...」

俺は疑うような目でまさか彼女が轢いたんじゃないかと思っていたら、
彼女はギクッとした表情で手をわたわたしながら説明し出した。

「ち、違うのよ!いや違わないんだけど...。私が確かに注意してなかったって言えばしてなかったけど...そもそも貴方がいきなり曲がり角から出てきたっていうか..................ほんっとごめんなさい!!」

と、彼女は土下座しながら言った。
マジかよこの人!?ほんとに轢いたのかよ!?
こういう時って警察か!?警察に連絡すればいいのか!?

「うぅ...ほんとごめんなさいぃ...。
でもほら!生きてたし!ノーカンって事で!!ほ、ほら!RPGゲームでも主人公が死んで生き返っても王様は何も言わないわよね!?」

「あんたヤベェな!?」

そして彼女は続けてこう言った。

「でも、貴方...頭からあんなに血が出てたのに傷口も塞がって普通じゃないわね。『まるでじゃないみたい』」

その瞬間彼女の目つきが変わった。
今までの彼女の慌てた雰囲気が全くなく落ち着いていてそれで冷静に。
俺のなにかを探っているような目をしていた。

「な、何言ってるんですか俺は...」

その時、鼻の奥にツンと嫌な匂い...。生ゴミみたいな嗅いでいい気持ちにはならない匂いがした。

「チッ...失敗した...!こっちは囮かッ...!!」

そういうと、田村 楓という教員は急いで保健室を出て行った。
何処に向かったのかは俺にもわかる。この匂いの根源だろう。
ただ一つ、気になることといえば先生が眼の色を変えて保健室を出て行ったことだ。
比喩ではなく彼女の綺麗な瞳は一瞬だけ紅く、赫く変わっていた。

「俺も一応行くかな...。まだ頭ぼーっとするけど...っとその前に窓開けとこ」

なんて独り言をしながらいそいそと匂いのする方に向かう。

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匂いの元は二階の使われていない無駄に広い教室からしているようだった。

すると教室には濃い霧がかかっていて二つの影があった。
一つは大きなモノで蛸の触手のようなものが『ウニョウニョ』と動いている。
もう一つの影は小さい。そして蛸の触手に掴まれて振り回されている。

「あ”あ”あ“あ”あ“あ”ぁ!?!?!?たしゅけてぇえええええええええ!?!?」

え?何が起てんの?
霧がかかってよく見えないな。うん。
などと考えてたら振り回された勢いで霧が晴れて全貌が見えてきた。

8歳くらいの男の子が蛸のバケモノに触手で振り回されてついでに履いている短パンを脱がされかけていた。

え?何が起きてんの?
さっぱりだった。
いや言って仕舞えばそのままの出来事だがだとしても!

「どういう状況だよ!!なんでズボン脱がされてんだよ!!てか誰だよ!!!」

気付けば全部言葉に出ていた。

「い“い”か“ら”ぁ“た”す“け”て“ぇ”ぇ“ぇ”ぇ“!!!!」

ボロッボロに泣きながら助けを求めてくる。

「あの、流石に素手じゃ無理だからちょっと待ってもらっていい?」

「む”ぅ“ぅ”ぅ“ぅ”ぅ“り”ぃ“ぃ”ぃ“ぃ”!!!」

はは、愉快。

なんて思ってたら窓ガラスが割れ刃物が俺の頭にぶっ刺さる。

「うわっなによ、気持ち悪い奴が出たわね」

「あのなぁ!ヒナ!!毎回、毎回言ってるけど俺に当てるんじゃねぇって!!」

「うっさいわね!!わざわざ届けてるんだから文句言うんじゃないわよ!!」

などとプンスカ怒っている。
こりゃ何言っても無駄だな...。

「にしてもこれは刀か...?でもは無いんだな」

「それは、全く...そんなもの何処で覚えたんだか...はぁ...」

確かに言われてみればよく極道モノの漫画に出てくる刃物の長い版みたいなものだった。

「ユリ、今度は何に影響されたんだ?」

『ル○ンの五○門...』

まぁそうだよね。かっこいいよね。斬鉄剣。

「は“や”く“た”す“け”て“え”ぇ“ぇ”ぇ“ぇ”!!!!」

あ、やべすっかり忘れてた。
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