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第五話 覚醒

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何故真人は狂気の沙汰に走ったのか?
理由は単純だ,,,,もう二度と薬の快楽を味わえないという恐怖に突き動かされたのだ。

薬が全ての彼にとって、薬の快楽が得れないことは死ぬ事よりも怖いのだ。
それに二度薬を味わえないなら今のうちに味わっておこうという事もあの一瞬で考えていた。

クラスの中にいる全ての生徒が真人の狂気に目を奪われていた。

「あぁ,,,,,,あ,,,,,,あぁ,,,,,,」
徐々に快楽に染まっていく真人の表情だが,,,,,,異変が起こる。

「ゥ!?,,,,,,ヴゥエエェエエ!!」
突然血を大量に吐き始めたのだ。
明らかに異常な量だ。
彼をいる場所を中心に血が教室中に広がって行く。

生徒達が悲鳴をあげて逃げようとする。
まさにその瞬間だった。

「,,,,,,はぁ,,,,,,はぁ,,,,,,は,,,,,,あぁ,,,,,,あ,,,,アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!??」
突然真人が叫び出した。
虚ろだった真人の目から黒い液体が流れてきた。
逃げようとしていた生徒達が釘付けになっている。

「ギィィィィィイヤヤアアアアアアア!!!!」
再び叫び出した真人の喉からは、まるでこの世の物とは思えないような叫びが響いた。

体から蒸気が発生して真人の体を包む。
蒸気で見えなくなった真人の方から異音が響き始める。

痛々しい叫び声が響いていたが少しすると静かになっていった。

「,,,,,,フシャャャァァァァ,,,,,,」
煙が消える。
真人のいた場所には口から白い息を吐いている化物がいた。

頭はまるで蜥蜴のようになり、体はがっちりとして、尾てい骨の辺りから立派な尻尾が生えてくる。
皮膚は硬質化して黒い鱗に包まれる。
長い腕や足には鋭い爪が生えている

まるで創作に出てくる化物,,,リザードマンが禍々しくなった様な姿だ。

その姿は化物その物であり、真人が人では無くなった事を物語っていた。


「グガアアアアアア!!!」
化物は雄叫びあげると近くで固まっていた不良の取り巻きの一人に突っ込む。

「ヒィ!?やだ!やめ,,,,,『バァンン!!』
対応できずに怯えて命乞いをした取り巻きだったが化物は容赦なく無防備な腹に腕を突き立てた。

鋭い爪は腹を容易に貫通する。
まるでトンネルの様に綺麗な風穴が生まれた。

腹から手を抜き出した化物は腹に穴のできた死体を生徒達の方に投げる。

「,,,,,,あ,,,,,,あ,,,,,,あ!!」
そのあまりにも恐ろしい光景に教室に残っていた生徒達が恐怖の声をあげる。

そんな様子の生徒達を化物は舐め回す様に見渡す。

そうしてこの化物の一方的な殺戮が始まった。
理性なき化物はひたすら暴れまわった。

逃げようとした生徒は鋭い爪で切断され、命乞いをする生徒は容赦なく蹴り殺された。

そのうち楽しくなってきたのか、化物は弄ぶように手足を切断したり、わざと時間をかけて上半身と下半身を切り離したりしていた。
振り回されて死亡した者もいた。

「待ってくれ!頼む!俺が悪かった!許してく,,,『グサァ!グサァ!グサァ!グサァ!!』

命乞いをしてたのは最後に残っていた金髪の生徒。
彼を苛めていた不良だ。
他の不良達や生徒は、なす術もなく殺害されてしまった。
自分だけでも生き残ろうと醜く命乞いをする。

だがその返答は容赦のない爪の斬撃だった。
顔や腹を何度も何度も切り裂いて原型を無くす。
そのうち腹を重点的に切り刻んでいった。

辺り一面地獄絵図。
生きていた者は全て無機物に変貌した。
真っ赤に染まった教室が事の凄惨さを物語る。

数分経った後,,,,,,彼は急に正気を取り戻す。
こうしてこの教室は物語冒頭の惨劇へと変貌した。

さぁ,,,,,,物語はここから始まる。
怪物となった真人には過酷な生存競争が待ち受けているのだった。
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