36 / 181
サンタさん、目標を決める
36 聖地イオナ(5)
しおりを挟む
「これって魔術具だよね?」
ペタペタと銀色の扉のような物を触りながら、アレス君が問う。
「うん、私もそう思う。きっとこの赤と黒のスイッチを押せば・・・あれ、斜めから見たら、このスイッチも魔核みたい。
この遺跡っていうか施設は、全て移動する度に魔力が必要ってこと?
私の魔力って、あとどのくらい残っているのかなぁ? ねえサーク爺分かる?」
赤と黒のスイッチを睨みながら、私は魔力量についてサーク爺に質問する。
「サーク爺? あれ、トキニさん?」
「どうしたのサンタさん?」
「ど、ど、どうしようアレス君、サーク爺とトキニさんが居ない・・・」
「えっ? いつから?」
私は凄く不安になって、アレス君の腕を掴んで2人の守護霊がいないことを知らせる。
「最初の扉を開けて階段を登っている時は一緒だった。
2つ扉の空間に居た時は・・・微かに2人の話が聞こえていたと思う」
「それじゃ、ひとつ前の空間に戻ってみよう。あっ、此処って元の場所に戻れないんだったっけ?」
そう言いながらアレス君は、元の空間に戻るため、閉じた扉を開けることができるかどうかを調べ始めた。
アレス君の言葉を理解したかのように、光猫のシリスがにゃ~んと鳴いて、扉の下の部分をガリガリと引っ搔いて何かを知らせてくれる。
よく見たら、この扉には内側にも魔核が埋め込まれていた。
アレス君がその魔核に魔力を流すと、綺麗な紫色になって再びガチャリと音がして、ゆっくりと扉が開いた。
開いた途端、サーク爺とトキニさんの「聞こえるかサンタや」というサーク爺の声と、「サンタさん、無事でよかった」というトキニさんの声が聞こえた。
『どうやらこの先には、何かの結界が張ってあるようじゃ。
わしの見解じゃと、この空間までは超古代文明紀に作られたものじゃと思うが、この先は魔術具が使われておるから、高度文明紀に作られたものと思われる』
私はサーク爺の見解を、直ぐアレス君に伝える。
「この先に進みたいけど、私とアレス君の魔力が足りるかどうか分からないんだけど、どうかなあサーク爺」
『この先の魔術具に、どれだけの魔力が必要なのか、わしが確かめることができんから、今日はここで諦める方がいいじゃろう。
どうしても先に進みたいなら、高位・魔術師くらいは同行させるべきじゃ。
わしらはこの先にすすめんから、何かあっても助けられん』
「そうだね。もしかしたら帰れなくなるかもしれないし・・・」
先に進みたい気持ちは強いけど、アレス君を危険に晒すことはダメだ。
あっ、アレス君のアロー公爵家は、祖父も父親も高位・魔術師だ。
トレジャーハンター協会の魔術師では、この先の扉まで進むことはできないだろうから、ホッパーさんに頼んで公爵様に来てもらおう。
そう言えば、毒を盛られて療養中のお父さんは大丈夫かな?
「アレス君、今回はここまでにしよう。魔術具がきちんと作動しない可能性もあるし、魔術具のことをもっと勉強してから出直すか、高位・魔術師の信用できる大人を連れてきて再挑戦しよう」
「うん、そうだね。その方がいいかもね」と、少し残念そうだけど、アレス君も同意してくれた。
先程ファーズさんが開けた扉の魔核に、今度は私が魔力を流す。
そして、ガチャリと開いた扉から地上に出た。
「何ここ!」って、私とアレス君の声が揃う。
そこは【聖なる地】の、あの巨大な三角の遺跡の石段の途中だった。
高さで言えば遺跡の3分の1くらいの地点だけど、地上からは5メートル、いや8メートルはあると思う。
閉じた扉を振り返ると、そこに扉があることが分からないくらい、表面は周辺の巨石と同じ素材で作られていて見分けがつかない。
扉らしき装飾もなければ、取っ手や魔核も埋め込まれていない。
……ここも完全に一方通行だ。外からは入れそうにない。
私はアレス君に頼んで、扉があった場所の下方に目印となるよう絵具で太陽と月を小さく描いてもらった。
「どうしよう・・・私、こんな大きな石積みを一人じゃ下りれない」
「僕も無理だと思う。ファーズさんは何処だろう?」
2人でファーズさんの姿を探していると、トキニさんがこの場所の裏側には、子供でもギリギリ上り下りできそうな階段があると教えてくれた。
落ちないよう気を付けながら裏というか表?側に回ると、地上に下りたファーズさんがイオナロードの方に向かって歩いているのが見えた。
……ああ良かった。
「ファーズさーん!」
2人で手を振りながら叫んで、ゆっくりと階段を下りていく。
地上に下りて合流した私たちは、他のメンバーが来るまで巨大な柱だけが残る神殿のような場所で待つことにした。
「あの巨大な三角遺跡の中に、まさか道が通じてるとは思わなかったね」
「そうだよね、びっくりだよねアレス君。しかも、魔法使いしか入れないってとこが、ワクワクするよね」
「そうなんだが、協会の魔術師だけでは調査ができないってことだ。
どうしたもんかなぁ・・・しかも、一方通行だからなあ。
あれだけのお宝・・・じゃなくて、あの扉の魔核を使った開閉技術だけでも、未知の魔術具として認定される大発見だぞ。まあ、解体できそうにないが」
ファーズさんは浮かれている私たちとは違い、協会の幹部として今後のことを考えているみたい。
最初の金や宝石や魔核まで使った扉は、どうやら魔術具扱いになるらしい。
待つこと20分、仲間の半数が地上に出てきた。
私たちの姿を見たサブチーフが、最初の扉の前で待っている他のメンバーを呼びに戻った。
……お爺様やホッパーさんを、心配させちゃったな。
再会したお爺様によると、最速踏破者のメンバーが日頃の私の無茶ぶりを暴露し、絶対に大丈夫だと言ったらしい。
うちのメンバーの中ではサンタさんが一番強いとか、サーク爺とトキニさんも付いてるから、私は1人でもパーティーを組んでいるに等しいとか、本当に何を言ってくれてるのかしら?
……うぅぅ、お爺様の笑顔が怖いんだけど。まだ王都には行きたくないのに。
思わぬ発見やハプニングはあったけど、全員が揃って【聖なる地】をぐるりと視察し、今日のところは帰ることにした。
……あの扉のことは、暫く公表されないだろうな。
ペタペタと銀色の扉のような物を触りながら、アレス君が問う。
「うん、私もそう思う。きっとこの赤と黒のスイッチを押せば・・・あれ、斜めから見たら、このスイッチも魔核みたい。
この遺跡っていうか施設は、全て移動する度に魔力が必要ってこと?
私の魔力って、あとどのくらい残っているのかなぁ? ねえサーク爺分かる?」
赤と黒のスイッチを睨みながら、私は魔力量についてサーク爺に質問する。
「サーク爺? あれ、トキニさん?」
「どうしたのサンタさん?」
「ど、ど、どうしようアレス君、サーク爺とトキニさんが居ない・・・」
「えっ? いつから?」
私は凄く不安になって、アレス君の腕を掴んで2人の守護霊がいないことを知らせる。
「最初の扉を開けて階段を登っている時は一緒だった。
2つ扉の空間に居た時は・・・微かに2人の話が聞こえていたと思う」
「それじゃ、ひとつ前の空間に戻ってみよう。あっ、此処って元の場所に戻れないんだったっけ?」
そう言いながらアレス君は、元の空間に戻るため、閉じた扉を開けることができるかどうかを調べ始めた。
アレス君の言葉を理解したかのように、光猫のシリスがにゃ~んと鳴いて、扉の下の部分をガリガリと引っ搔いて何かを知らせてくれる。
よく見たら、この扉には内側にも魔核が埋め込まれていた。
アレス君がその魔核に魔力を流すと、綺麗な紫色になって再びガチャリと音がして、ゆっくりと扉が開いた。
開いた途端、サーク爺とトキニさんの「聞こえるかサンタや」というサーク爺の声と、「サンタさん、無事でよかった」というトキニさんの声が聞こえた。
『どうやらこの先には、何かの結界が張ってあるようじゃ。
わしの見解じゃと、この空間までは超古代文明紀に作られたものじゃと思うが、この先は魔術具が使われておるから、高度文明紀に作られたものと思われる』
私はサーク爺の見解を、直ぐアレス君に伝える。
「この先に進みたいけど、私とアレス君の魔力が足りるかどうか分からないんだけど、どうかなあサーク爺」
『この先の魔術具に、どれだけの魔力が必要なのか、わしが確かめることができんから、今日はここで諦める方がいいじゃろう。
どうしても先に進みたいなら、高位・魔術師くらいは同行させるべきじゃ。
わしらはこの先にすすめんから、何かあっても助けられん』
「そうだね。もしかしたら帰れなくなるかもしれないし・・・」
先に進みたい気持ちは強いけど、アレス君を危険に晒すことはダメだ。
あっ、アレス君のアロー公爵家は、祖父も父親も高位・魔術師だ。
トレジャーハンター協会の魔術師では、この先の扉まで進むことはできないだろうから、ホッパーさんに頼んで公爵様に来てもらおう。
そう言えば、毒を盛られて療養中のお父さんは大丈夫かな?
「アレス君、今回はここまでにしよう。魔術具がきちんと作動しない可能性もあるし、魔術具のことをもっと勉強してから出直すか、高位・魔術師の信用できる大人を連れてきて再挑戦しよう」
「うん、そうだね。その方がいいかもね」と、少し残念そうだけど、アレス君も同意してくれた。
先程ファーズさんが開けた扉の魔核に、今度は私が魔力を流す。
そして、ガチャリと開いた扉から地上に出た。
「何ここ!」って、私とアレス君の声が揃う。
そこは【聖なる地】の、あの巨大な三角の遺跡の石段の途中だった。
高さで言えば遺跡の3分の1くらいの地点だけど、地上からは5メートル、いや8メートルはあると思う。
閉じた扉を振り返ると、そこに扉があることが分からないくらい、表面は周辺の巨石と同じ素材で作られていて見分けがつかない。
扉らしき装飾もなければ、取っ手や魔核も埋め込まれていない。
……ここも完全に一方通行だ。外からは入れそうにない。
私はアレス君に頼んで、扉があった場所の下方に目印となるよう絵具で太陽と月を小さく描いてもらった。
「どうしよう・・・私、こんな大きな石積みを一人じゃ下りれない」
「僕も無理だと思う。ファーズさんは何処だろう?」
2人でファーズさんの姿を探していると、トキニさんがこの場所の裏側には、子供でもギリギリ上り下りできそうな階段があると教えてくれた。
落ちないよう気を付けながら裏というか表?側に回ると、地上に下りたファーズさんがイオナロードの方に向かって歩いているのが見えた。
……ああ良かった。
「ファーズさーん!」
2人で手を振りながら叫んで、ゆっくりと階段を下りていく。
地上に下りて合流した私たちは、他のメンバーが来るまで巨大な柱だけが残る神殿のような場所で待つことにした。
「あの巨大な三角遺跡の中に、まさか道が通じてるとは思わなかったね」
「そうだよね、びっくりだよねアレス君。しかも、魔法使いしか入れないってとこが、ワクワクするよね」
「そうなんだが、協会の魔術師だけでは調査ができないってことだ。
どうしたもんかなぁ・・・しかも、一方通行だからなあ。
あれだけのお宝・・・じゃなくて、あの扉の魔核を使った開閉技術だけでも、未知の魔術具として認定される大発見だぞ。まあ、解体できそうにないが」
ファーズさんは浮かれている私たちとは違い、協会の幹部として今後のことを考えているみたい。
最初の金や宝石や魔核まで使った扉は、どうやら魔術具扱いになるらしい。
待つこと20分、仲間の半数が地上に出てきた。
私たちの姿を見たサブチーフが、最初の扉の前で待っている他のメンバーを呼びに戻った。
……お爺様やホッパーさんを、心配させちゃったな。
再会したお爺様によると、最速踏破者のメンバーが日頃の私の無茶ぶりを暴露し、絶対に大丈夫だと言ったらしい。
うちのメンバーの中ではサンタさんが一番強いとか、サーク爺とトキニさんも付いてるから、私は1人でもパーティーを組んでいるに等しいとか、本当に何を言ってくれてるのかしら?
……うぅぅ、お爺様の笑顔が怖いんだけど。まだ王都には行きたくないのに。
思わぬ発見やハプニングはあったけど、全員が揃って【聖なる地】をぐるりと視察し、今日のところは帰ることにした。
……あの扉のことは、暫く公表されないだろうな。
104
あなたにおすすめの小説
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
スラム街の幼女、魔導書を拾う。
海夏世もみじ
ファンタジー
スラム街でたくましく生きている六歳の幼女エシラはある日、貴族のゴミ捨て場で一冊の本を拾う。その本は一人たりとも契約できた者はいない伝説の魔導書だったが、彼女はなぜか契約できてしまう。
それからというもの、様々なトラブルに巻き込まれいくうちにみるみる強くなり、スラム街から世界へと羽ばたいて行く。
これは、その魔導書で人々の忘れ物を取り戻してゆき、決して忘れない、忘れられない〝忘れじの魔女〟として生きるための物語。
【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!
月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、
花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。
姻族全員大騒ぎとなった
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~
雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。
突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。
多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。
死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。
「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」
んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!!
でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!!
これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。
な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)
政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~
巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!?
////////////////////////////////////////////////////
悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。
しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。
琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇!
※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……?
※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。
※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。
隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる