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絶望と希望
290ー1 同時襲撃の恐怖(6)ー1
バルバ山の南、シルクーネ先輩の父親が治めている町に向かっていた魔獣の群は、ランドルとシルクーネ先輩が頑張り、町の1キロ手前で討伐できた。
冒険者たちは決死の覚悟で魔獣を待ち構えていたが、幸運にも死傷者を出さずに済んだ。
ワイコリーム公爵が率いる魔獣討伐専門部隊は、スノーウルフの大きな群に遭遇したが、無事に討伐を完了していた。
念のため領都に向かう街道沿いを進行し、今夜は湖の畔で野営をするらしい。
エイト率いる覇王軍は、バルバ山に向かいながら魔獣と戦い、明日の午後にはこの町に到着する予定だと報告があった。
明日はバルバ山の北側を確認してもらうよう指示を出しておく。
ノエル様が率いる王立高学院特別部隊には、ブラックドラゴンの炎の攻撃で被災した町に向かってもらうよう連絡済みだ。
他にも被災している町や村はあるが、今回は最も被害の大きかった町を優先する。
……今回は覇王軍も同行できない。ノエル様には、いつも苦労をかけっぱなしだ。
現在俺は、シルクーネ先輩にギルマスたちへの状況説明を任せて、早目の夕食をとっている。
「南に向かった魔獣の群は3つあり、各群れの数は30~50頭でした。
炎の攻撃で洗脳を解くことは可能ですが、洗脳された魔獣は人や家畜を襲わず走り続けるので、魔法攻撃や一斉攻撃を仕掛けるのなら、洗脳を解かない方がいいでしょう」
以前にも覇王軍としてワイコリーム領に来ていたシルクーネ先輩は、冒険者と共闘し指揮を執っていたので、ギルマスや冒険者から信用を得ている。
なんといっても領主の娘だし、領民を守りたいという先輩の思いが伝わるから、冒険者たちも進んで協力してくれる。
「勇者とマサルーノが、ブラックドラゴンに打撃を与え追い払ったが、山にはまだ上位種の殆どが残っている。
直ぐ次の氾濫は起こらないだろうが、確認の必要はある。シルクーネさんは、明日エイトたちと合流してください」
「承知しましたアコル様」
なんとか自領の民を守れたシルクーネ先輩は、安堵の表情で返事をした。
マサルーノ先輩に次いで魔法陣作成が得意なシルクーネ先輩は、本日上空からでも使える新しい魔法陣を試した。
散らばって走っていた大型魔獣たちを、移動式の竜巻で次々と巻き上げ、100メートルの高さから落とすという容赦ない攻撃だった。
南に溢れた魔獣は、ホーンブルやビッグボアが主で、胴体から落下する魔獣だったから効果は抜群だった。
こんな凄い魔法陣が作れたのも、弟のラノーブと婚約者のスフレさんが、古代魔法陣の記号を解読したからだ。姉弟揃って大活躍である。
『アコル、ルフナ王子の契約妖精から新しい緊急連絡よ。
王都に現れたブラックドラゴンは1頭で、北門には魔獣の群も来たみたい。
ブラックドラゴンの攻撃で、北門の下級地区で火災が発生してるって』
突然現れたエクレアの話を聞き、その場に居た全員に緊張が走る。
少し前に学院長からブラックドラゴンが飛来したという連絡は受けていたが、新しい情報をルフナ王子が送ってきた。
冒険者ギルドの食堂内は、ワイコリーム領の危機を回避できたことを喜び、明るい表情で食事をしていたのだが、ブラックドラゴンが王都を襲撃中との知らせを聞き、食事の手が完全に止まってしまった。
「もう日が暮れる。ブラックドラゴンも魔獣も動きを止めるはずだ。
王都のことは、残っている者に任せるしかない。
ランドルとエリスには休息が必要だし、我々も無理をすべきではない。予定通り今夜はこの町に泊まる」
どうされますか覇王様? という視線が俺に集まったので、予定に変更はないと告げておく。
……今後も同時襲撃は起こるだろう。王都には戦える者がたくさん居る。信じて任せることも必要だ。
ギルマスには、今以上にバルバ山の監視をするよう指示しておく。
今日はあまり出番のなかった冒険者たちには、被災地の復興を手伝って欲しいとお願いし、快く了解を得た。
冒険者たちは決死の覚悟で魔獣を待ち構えていたが、幸運にも死傷者を出さずに済んだ。
ワイコリーム公爵が率いる魔獣討伐専門部隊は、スノーウルフの大きな群に遭遇したが、無事に討伐を完了していた。
念のため領都に向かう街道沿いを進行し、今夜は湖の畔で野営をするらしい。
エイト率いる覇王軍は、バルバ山に向かいながら魔獣と戦い、明日の午後にはこの町に到着する予定だと報告があった。
明日はバルバ山の北側を確認してもらうよう指示を出しておく。
ノエル様が率いる王立高学院特別部隊には、ブラックドラゴンの炎の攻撃で被災した町に向かってもらうよう連絡済みだ。
他にも被災している町や村はあるが、今回は最も被害の大きかった町を優先する。
……今回は覇王軍も同行できない。ノエル様には、いつも苦労をかけっぱなしだ。
現在俺は、シルクーネ先輩にギルマスたちへの状況説明を任せて、早目の夕食をとっている。
「南に向かった魔獣の群は3つあり、各群れの数は30~50頭でした。
炎の攻撃で洗脳を解くことは可能ですが、洗脳された魔獣は人や家畜を襲わず走り続けるので、魔法攻撃や一斉攻撃を仕掛けるのなら、洗脳を解かない方がいいでしょう」
以前にも覇王軍としてワイコリーム領に来ていたシルクーネ先輩は、冒険者と共闘し指揮を執っていたので、ギルマスや冒険者から信用を得ている。
なんといっても領主の娘だし、領民を守りたいという先輩の思いが伝わるから、冒険者たちも進んで協力してくれる。
「勇者とマサルーノが、ブラックドラゴンに打撃を与え追い払ったが、山にはまだ上位種の殆どが残っている。
直ぐ次の氾濫は起こらないだろうが、確認の必要はある。シルクーネさんは、明日エイトたちと合流してください」
「承知しましたアコル様」
なんとか自領の民を守れたシルクーネ先輩は、安堵の表情で返事をした。
マサルーノ先輩に次いで魔法陣作成が得意なシルクーネ先輩は、本日上空からでも使える新しい魔法陣を試した。
散らばって走っていた大型魔獣たちを、移動式の竜巻で次々と巻き上げ、100メートルの高さから落とすという容赦ない攻撃だった。
南に溢れた魔獣は、ホーンブルやビッグボアが主で、胴体から落下する魔獣だったから効果は抜群だった。
こんな凄い魔法陣が作れたのも、弟のラノーブと婚約者のスフレさんが、古代魔法陣の記号を解読したからだ。姉弟揃って大活躍である。
『アコル、ルフナ王子の契約妖精から新しい緊急連絡よ。
王都に現れたブラックドラゴンは1頭で、北門には魔獣の群も来たみたい。
ブラックドラゴンの攻撃で、北門の下級地区で火災が発生してるって』
突然現れたエクレアの話を聞き、その場に居た全員に緊張が走る。
少し前に学院長からブラックドラゴンが飛来したという連絡は受けていたが、新しい情報をルフナ王子が送ってきた。
冒険者ギルドの食堂内は、ワイコリーム領の危機を回避できたことを喜び、明るい表情で食事をしていたのだが、ブラックドラゴンが王都を襲撃中との知らせを聞き、食事の手が完全に止まってしまった。
「もう日が暮れる。ブラックドラゴンも魔獣も動きを止めるはずだ。
王都のことは、残っている者に任せるしかない。
ランドルとエリスには休息が必要だし、我々も無理をすべきではない。予定通り今夜はこの町に泊まる」
どうされますか覇王様? という視線が俺に集まったので、予定に変更はないと告げておく。
……今後も同時襲撃は起こるだろう。王都には戦える者がたくさん居る。信じて任せることも必要だ。
ギルマスには、今以上にバルバ山の監視をするよう指示しておく。
今日はあまり出番のなかった冒険者たちには、被災地の復興を手伝って欲しいとお願いし、快く了解を得た。
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