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第32話 海からの帰宅 ~貝殻のキス~

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俺は海岸線道路をゆっくりと流していく。
夏美を見ると、何か名残惜しそうに海の方を見ている。その顔はどこか寂し気だった。
俺もこのまま帰りたくないという思いがあった。
そこで、夏美にある提案をする。

「夏美、帰る前に、もう一カ所行こうか」
「え、どこに?」
「それは内緒。でもそうなると帰りが少し遅くなっちゃうかも。大丈夫かな?」
「うん、大丈夫。友達の家で夜9時くらいまで遊んでたことあるし。それにその友達に、今日は私と遊んでることにしてってお願いしてあるから」
「そっか、じゃあ少しだけ寄っていこう」

そうして俺は海岸線を走り、青が浜漁港へと向かう。
青が浜漁港は、旭海岸から15分ほどの所にある。車はすぐに漁港に到着した。
俺は駐車場に車を停め、夏美に声をかける。

「夏美、着いたよ」
「ここは、なに?」
「ここはね、青が浜漁港って言うんだよ。とにかく行ってみよう」

青が浜漁港の魚市場はテレビでも時々紹介される人気スポットで、沢山の鮮魚店が軒を連ねている。
そして鮮魚店が直営する回転寿司屋が併設されており、ネタが大きく新鮮で美味しいと評判だ。
他に屋台なども出ており、少し散策するには丁度いいと思って夏美を連れて来たのだ。

「夏美、さあ、行こう」
「うん」

俺達は車から降り、市場へと歩き出した。

「わあ、すごい、お魚がいっぱい」

市場へ着くと、夏美が魚市場の店の中を覗き込んで驚いた表情をしている。
店内には、マグロ、ブリなど各種の鮮魚やホタテなどの貝類、カニなどがこれでもかという程大量に並んでいた。

「いらっしゃーい、みてってねー」

店員の大きなダミ声が店外まで響く。

夏美は『すごーい』を繰り返しながら、店内を見て回っている。

「あ、これはマグロの柵だね。夏美はお刺身好き?」
「うん、私、お刺身も、お寿司も大好き!」
「お土産に何か買ってあげるよ」
「拓也、私がお魚なんて買って行ったら、お母さんが変に思うから」

「そっか、それはそうだね。じゃあ後で、あそこにある回転寿司屋さんでお寿司食べようか?

俺は寿司店の方を指さしながら言った。

「うん、食べてみたい」

夏美がニコニコ笑顔でこたえていると、マグロの奥から店員が話しかけてきた。

「いらっしゃーい!お父さん、マグロどうだい?今なら500円引きにしとくよー」

ん?お父さん?俺?

「新鮮なマグロだよー。お父さん、娘さんベッピンさんだねえ。マグロ買ってってよー」

ああ、やっぱり俺のことだ。俺が夏美のお父さん・・・

俺の隣で夏美がクスクスと笑っている。
いやいや夏美、笑ってる場合じゃあないだろ。
俺は少しイラッとして、マグロおやじから離れて行く。

そして一通り市場を見て回った俺達は、回転寿司屋へと入って行った。

中へ入ると、けっこう客が多かったが、待つことなく席に着くことができた。
二人並んで席につくと、俺達の目の前を寿司がどんどん通り過ぎていく。
マグロを始め、びんとろ、ブリ、えび、ホタテなどネタは様々だが、どれもとても大きかった。

「なにこれ、おっきい」

夏美は驚いた表情を見せた。
夏美は街によくある100円回転寿司店にしか行ったことがないらしく、ネタの大きさに驚いているようだ。

「夏美、どれでも好きなもの食べな」

俺がそう言うと、夏美はマグロの皿を取った。そして醤油をつけて一貫を口に入れる。

しかし夏美の小さな口には入りきらず、ネタの半分まで入ったところで、夏美は手を使って無理やり寿司を口に押し込んだ。
夏美の頬が大きくなり、口の中が寿司で一杯になっているようだった。

「モグモグモグ、ゴクン」
「うん、美味しい。でも私にはおっきすぎるわよ」
「そうだね。これはさすがに、あーんゴッコはできないね、ふふ」

俺は寿司を食べるのに悪戦苦闘している夏美を見て、可愛くて仕方がなかった。俺は笑みを浮かべながら、夏美を見ていた。

その後夏美はできるだけ小さめの寿司を選んで食べている。
結局、夏美は4皿、俺は6皿でお腹が一杯になってしまった。

「お昼にお弁当食べて、いまお寿司食べて、私、太っちゃうんじゃないかしら」
「あはは大丈夫だよ!このくらいじゃ太らないから」
「なんか食べ過ぎてお腹がおっきくなった気がする」

夏美、大丈夫だよ。今日1日大食いしたからって、君のくびれた腰とお腹は変わらないから。
そうして会計を済ませ、俺達は寿司店を後にした。

「さて、そろそろ帰ろうか」
「うん、私もう、お腹いっぱい、満足。帰りましょう」

俺達は腕を組み寄り添いながら車へと向かう。
しかし、あのマグロの店員、俺達を親子と間違えやがって。俺はそのことをまだ根に持っていた。

駐車場に戻った俺達は、車に乗り込む。
エンジンをかけて数分で、車内が冷えてきた。

「夏美・・・帰ろう」
「うん・・・」

俺は今日一日の楽しかった思い出に浸りながら車を走らせた。
夏美との初めての海。海の中で二人で遊んだこと。お弁当の、あーんゴッコ。夏美との濃厚なキス。
そして・・・二人で見つけた渦巻形の貝殻。縦縞と横縞の貝殻。二人の宝物。

やがて車はインターを通り、高速道路へと入って行った。
横を見ると、どうやら夏美は寝入ってしまったようだ。
そうだね夏美。今日は楽しかったけど、とても疲れたよね。
夏美の寝顔はとても可愛く、まるで幼女の様な寝顔だった。到着するまで夏美を寝かせてあげよう・・・





俺達はやっと夏美の家の近くのいつものコンビニに到着した。
時間は午後7時。

「夏美・・・夏美・・・着いたよ」

俺は軽く夏美の肩を揺すった。夏美はゆっくりと目を開く。

「ふわぁ・・・あれ?ここどこ?」
「家の近くのコンビニだよ。もう着いたんだよ」
「やだ、私・・・ずっと寝ちゃってたのね」
「うん、可愛い寝顔で眠っていたよ」
「拓也ごめん。私、お寿司食べて、お腹いっぱいになって、それで」
「大丈夫だよ。今日は疲れたよね。お疲れさん!」

そう言って俺は夏美の頭をポンポンと軽くたたいた。

「夏美、もう7時だよ・・・遅くなっちゃったね。帰ろうか」
「ううん、まだ大丈夫。私、拓也ともう少しいたい、離れたくない」

夏美は潤んだ瞳で、助手席から身を乗り出し、俺に抱きついてきた。
俺も身を乗り出し、夏美と唇を重ね合う。そして海でしたように、俺達二人は舌を絡め合い、濃厚なキスをする。

お互いの唾液が、お互いの口の中に流れ込む。そしてキスをしているうちに俺の欲望が顔を出してしまった。
俺はTシャツの上から夏美の豊満な胸を撫で、やがて強く揉みしだく。

「ああ、はぁはぁ」

夏美が吐息を漏らし始める。俺はたまらずディープキスをしながらミニスカートの下のパンティに手を差しのべ、秘部を触りはじめた。

「はぁはぁ、拓也、好きっ、愛してる」
「俺も、夏美を愛してる」

俺達は互いの愛を確認し合うように、濃厚なキスを繰り返した。
髪の毛をツインテールに結んだ小柄な幼い顔の少女。まるで小学生みたいな夏美・・・

だめだ、これ以上したら・・・止まらない。俺の肉棒はギンギンに硬直してしまっていた。

俺は夏美から離れてこう言った。

「夏美、俺、これ以上してたら、歯止めが効かなくなる」
「わかってる、拓也、いま、おちんちん、おっきくなってるでしょう?」
「ああ、だから、今日はもう帰ろう」
「いやっ、私を子ども扱いしないで」

そう言うと夏美は俺の短パンとトランクスをずらそうとする。

「夏美、ダメだ、いけない」

「何故?何故なの?私の事、愛してないの?私だって、色々知ってるのよ。男の人の喜ぶ事」

「俺は夏美を愛してるよ。本当に愛してる。だからこそ、車の中でこんなこと、嫌なんだ」

「だったら、どこだったらいいの?拓也の家?ホテル?」

俺は返答に困ってしまった。
夏美は男性経験のない処女だ。その夏美が、こんなに積極的に求めてくるなんて。
本当の俺は、鬼畜ロリコンの屑だ。そんな俺が、純粋な夏美とセックスをしていいのか?
夏美は今迄の少女達と違うんだぞ?夏美は特別な存在なんだ。俺は夏美を心から愛してしまった。
そして俺はそんな夏美から、人を本気で愛すること、相手を思いやる気持ちを教わったんだ。

でも・・・二人がそうなるのは、自然の成り行きなのかも知れない。
そうだ、これは愛なんだ。本気で愛し合う二人だからこそ・・・俺は覚悟を決めた。

「夏美わかったよ、じゃあ、今度の週末、俺の家に招待するよ。だから今日はこのまま帰ろう」
「わかった・・・ねえ拓也、貝殻出して」
「ああ、うん」

俺はショルダーバッグの中から貝殻を出して夏美に見せた。そして夏美も自分の貝殻を手に取った。

「拓也、貝殻、手にもって」

俺は貝殻をつまんで夏美に見せた。すると夏美は自分の貝殻をつまみ、俺の貝殻に重ね合わせた。

「ちゅっ」

「この貝殻は、私と拓也の愛の証だよ。絶対に無くさないでね」
「もちろんだよ、絶対に無くさないよ」
「私と拓也の大切な思い出。大切な貝殻。えへへ」

夏美はやっと笑顔を取り戻した。そして二人はもう一度キスをして、夏美は助手席を降りた。
俺も車から降りて、夏美を見送る。

夏美は自転車の鍵を外し、荷物をカゴに積み込み、笑顔で『バイバイ』と言った。
俺も手を上げて、『バイバイ』と言った。

そして夏美は自転車を押しながら遠ざかって行く。時々後ろを振り向きながら。

俺はそんな夏美の後姿を、見えなくなるまで見送ったのだった。
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