公爵令嬢を溺愛する護衛騎士は、禁忌の箱を開けて最強の魔力を手に入れる

アスライム

文字の大きさ
13 / 77

13話 魔導超越者の初陣(バトル回)

しおりを挟む
「女の尻を追っ駆けるとる奴は威勢がいいのう」

 ゼンじいが横からヒョッコリ現れる。

「いえ、俺は……」
「誤魔化さんでええわい。ボーナス取ったら好きなモンでも買うてやれ」

 そう言うゼンじいの目は、やる気に満ち溢れている。

「さあやるぞ! 気合入れんかい皆の衆!」
『おおおおおおおお!』

「ゼンじい。妙に張り切ってない?」
「何を言うか。わしゃいつも通りじゃ」

 ヴェイナーは「怪しいわね」と言って、胡散臭げにゼンじいを見る。

「賭けてるでしょ?」
「賭けらいでか! ギャンブルは人生の活力よ!」
「ハイハイ。そうね」

「ワシが魔力枯渇で倒れるまでは、止めてくれるなよヴェイナー? 今日は魔法使い共に《魔力回復マジックヒール》を掛け続けにゃならんのでな」
「止めないわよ。止めたら暴れそうだし」

「ワシの邪魔をする奴は地獄の果てまで追い込んでやるからな!」
「だから邪魔なんてしないって。ゼンじいとは一蓮托生だろうしね。どうせ超大穴のウチに賭けてるんでしょ?」

「分かり切った事を訊くな。当然、我等が《鷹の眼ホークアイ》が最優秀ギルドに選ばれるに全財産ブッ込んどるわ」
「うへぇ。相変わらずの狂いっぷりね」

 ゼンじいは「フン」と言って口角を上げる。

「ヴェイナー。ワシとお前の利害は一致しておる。手を抜くなよ?」
「全力でやるに決まってんでしょ。ほら行くよゼンじい」
「おうともよ! いざ戦場じゃ!」

「行くぞ野郎ども!」
『おおおおおおおお!』

 ギルドメンバー達は、街の外へと向かって突き進む。

「スッゲェ―数のワイバーンだな」
「腕が鳴るぜ」
「毎年のことながら壮観ね」

 遠方には千体超えのワイバーンの群れがいた。

『皆さーん。ワイバーンが来る前に、攻撃態勢を整えてくださいねー』

 冒険者総括協会の女性職員が、拡声魔法を使って注意事項を伝達していく。冒険者総括協会は、冒険者ギルドの取り纏め組織だ。

 街の城壁近辺には、どんどんと物資が運び込まれていく。強弩や投石器や攻城兵器等の大型武器もあれば、手槍や弓のような人力に頼る普通の武器もあった。

 通常それらは、上空を飛ぶワイバーンには届かない。なので様々な付与魔法や身体強化魔法を使って、標的まで届くようにしてやる必要がある。

「《身体能力強化フィジカルブースト》」
「《射程延長ロングスナイプ》」

 補助系の魔法が使用可能な者は、次々に魔法を発動させていた。彼等は忙しく動き回っており、まるで鉄火場のような状況だ。

『使い魔を使役される方は、味方の射線上に入らないように注意してくださーい』

 着々と準備は進んで行く。

「どうライル? 気負わずにいけそう?」
「大丈夫ですよヴェイナーさん」

 力を失う前のライルは修羅場も経験している。緊張で身体が震えるような事は無い。

「落ち着いてるならいいわ。無理だけはしないように。怪我の元よ」
「はい。あの、ヴェイナーさん」

「何?」
「ワイバーンは将来の脅威に成り得るんですよね?」

「なるわ。国内のワイバーン被害は年々増えてるし。今日撃ち漏らした個体が、いつかアンタやティリアちゃんを襲うかもよ?」
「……分かりました」

 ライルは深刻な顔で頷いた。

『それでは、攻撃開始!』

 女性職員の声を合図に一斉攻撃が始まった。そこかしこで魔法の光が輝き、物理的な武器も次々に空へと放たれていく。

(ティリア様の障害は排除する!)

 ライルは呼吸を整えると、詠唱しながら魔法の印を切る。

「《印詠省略ロジックカット》」

 古代上位魔法だ。しばらくの間、魔法の発動に印や詠唱が不要となる。

「《魔法混合創成クロスマジック》」

 こちらは魔法の融合を可能にする古代上位魔法だ。
 そしてライルは魔法を次々と重ね合わせていく。

威力増幅ダメージブースト
身体能力低下フィジカルダウン
特殊防御解除シールドキャンセル
氷属性付与アイスエンチャント
魔法分裂ディヴィジョン
自動追尾オートトラッキング

(身体が燃えそうだ)

 魔法を追加していく度に、ライルの体内を流れる魔力が膨大になっていく。

「《雷光の射手ライトニングシューター》」

 攻撃の核となるのは、古代においても最上位となる雷魔法だ。
 ライルの左手には神々しい弓が、右手には光の矢が現れる。その矢には氷属性を含む諸々の追加効果が付与されており、凄まじい魔力が圧縮融合されていた。

 ライルは矢をつがえて弓を弾き絞り、

「滅せよ!」

 高らかな声と共に矢を放った。雷光となった矢は瞬時にワイバーンの群れへと到達し、数千本の光に分かれて一斉に貫く。

 直後に雷鳴が轟き、致命傷を受けた数多の個体が落下していった。数十体のワイバーンは辛くも生き残ったが、すぐにその肉体が凍り始める。満足に羽を動かす事も出来ず、成すすべもなく地上へと落下していった。

 ワイバーンは傷を負って翼が凍り、いくつものデバフ効果を受けている。そんな状態では、上空からの落下に耐えられるはずもない。全滅だ。

「終わりましたよティリア様」

 魔導超越者マジックマスターライルは、冒険者としての初陣を勝利で飾る。
 歴史的瞬間に居合わせた者達は、ただただ呆然とするしかなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

地味で役に立たないと言われて捨てられましたが、王弟殿下のお相手としては最適だったようです

阿里
恋愛
「君は地味で、将来の役に立たない」 そう言われ、幼なじみの婚約者にあっさり捨てられた侯爵令嬢の私。 社交界でも忘れ去られ、同情だけを向けられる日々の中、私は王宮の文官補佐として働き始める。 そこで出会ったのは、権力争いを嫌う変わり者の王弟殿下。 過去も噂も問わず、ただ仕事だけを見て評価してくれる彼の隣で、私は静かに居場所を見つけていく。 そして暴かれる不正。転落していく元婚約者。 「君が隣にいない宮廷は退屈だ」 これは、選ばれなかった私が、必要とされる私になる物語。

どうぞお好きになさってください

みおな
恋愛
学園に入学して一ヶ月。 婚約者の第一王子殿下は言った。 「学園にいる間くらい自由にさせてくれないか。君が王太子妃になることは決定事項だ。だから、せめて学園に通う二年間は、僕は恋がしたい」 公爵令嬢はその綺麗な顔に冷酷な笑みを浮かべる。 「好きになさればよろしいわ」

『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~

スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」 王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。 伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。 婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。 それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。 ――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。 「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」 リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。 彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。 絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。 彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。

さようなら、私を「枯れた花」と呼んだ貴方。~辺境で英雄を救って聖女と呼ばれたので、没落した元婚約者の謝罪は受け付けません~

阿里
恋愛
「お前のような見栄えの悪い女は、俺の隣にふさわしくない」 婚約者アレクに捨てられ、辺境へ追いやられたセレナ。 けれど、彼女が森で拾ったのは、アレクなど足元にも及ばないほど強くて優しい、呪われた英雄ライアンだった。 セレナの薬草が奇跡を起こし、王都を救う特効薬となったとき、かつて自分を捨てた男との再会が訪れる。 「やり直そう」と縋り付くアレクに、セレナは最愛の人と寄り添いながら静かに微笑む。 ――あなたが捨てたのは、ただの影ではなく、あなたの未来そのものだったのですよ。

処理中です...