公爵令嬢を溺愛する護衛騎士は、禁忌の箱を開けて最強の魔力を手に入れる

アスライム

文字の大きさ
16 / 77

16話 最強の冒険者はBランク

しおりを挟む
 渋るライルを説き伏せて、今日のティリアはギルドまで付いて来ていた。共同生活者として、ライルの職場環境を把握しておく必要があるからだ。

「あら、いらっしゃいティリアちゃん」
「こんにちはヴェイナーさん」

 ティリアは美しく微笑んだ。こういう何気ない所作を見ただけで、ティリアが一般人に成りきるのは無理だろうなとライルは思ってしまう。

「まさかティリアちゃんが来てくれるとは思わなかったわ」
「どうしてでしょうか?」
「護衛が過保護だからさ。ほらライル! そのヤバイ目を止めな!」

 ライルは威嚇するように周囲を警戒していた。ギルド内には荒くれの冒険者もいる為、ティリアを守らなければいけないと感じたからだ。
 しかしそんな事は関係ないと言わんばかりに、若い女達がティリアに迫る。

「わぁ可愛い。ティリアちゃんって言うの?」
「綺麗な子ねぇ」
「冒険者になりたいの? お姉さんが手取り足取り教えてあげようか? そりゃあもう手取り足取りね。ふふふ」

 複数の女性が相手では、さすがのライルも簡単には手を出せない。

「サラサラの白銀の髪に紫の瞳。白い肌に美しく整った顔。こんなに綺麗な子、初めて見たわ。お人形みたい」

「ティリアちゃんって、どこの貴族? お忍びで来たんなら街を案内したげよっか? スリルがあって面白い場所もあるよ?」
「えっと、その……」

 ティリアは何故こうなるのか分からずに困惑している。

「その子は箱入りのお嬢様なんだからね。手加減してやりなよ」
『はーい』

 ヴェイナーへの返事とは裏腹に、女性冒険者達は容赦がなかった。普段凶悪な魔物を相手にしている為、貴族が相手だろうと物怖じしないからだ。

「紅茶でも飲みながら向こうで話そうよ」
「好きなんでしょ紅茶? 貴族の人ってよく紅茶飲んでるもんね」
「美味しいケーキもあるしさ」

「あの、私は貴族ではありません」
「あはははは。そんなの誰も信じないって」
「そうそう。身分なんて誰も気にしないから、隠そうとしなくていいよ」

 ティリアは多少なりともショックを受けていた。普通の街娘として振舞っていたつもりだからだ。

「私、ティリアちゃんとライル君の話を聞いてみたい」
「恋の話ね!」
「えっ? えっ?」

 そうしてティリアは、成すすべなくギルドの奥へと連れられて行く。

「ティリア様。ご武運を」

 ライルはティリアを見送った。

「あの子がいると、ギルドがグッと華やかになるわね。いっそここで働いてもらいたいわ。彼女、計算や帳簿付けが得意なんでしょ?」
「確かに得意ではありますが」

 ライルは言葉を濁す。ティリアがやっていた収支計算は国家規模のものだ。権謀術数渦巻く王城では、時に奇抜な手口を使って数値の改竄や不正が行われる。

 それらを何度も見破ってきたティリアであれば、冒険者ギルドの机上仕事など余裕でこなしてしまうだろう。

「家の中と違って、ギルドには時として危険もありますし……」
「それは建前で、本音は他の男が近寄って来るのが嫌だから、ギルドで働かせたくないんでしょ? 独占欲ってやつ?」

 自覚しているライルは黙ってしまう。

「ここにはティリアちゃんの友達になってくれそうな子達もいるし、頼りになる年配の冒険者もいるわ。1人で家にいるより、充実していて安全だと思わない? それこそ、アンタと一緒にいる時間だって増えるわけだしさ」

 ライルもそれは考えていた。家にいてほしいのは確かだが、家に閉じ込めておくのが間違っているのも分かっている。

「即決しなくていいから、一応考えておいて」
「はい」

ライルは、後でティリアの意見も聞いてみようと思った。

「それで話は変わるけど、どうやらアンタの冒険者ランクはBランクになるらしいわ」
「そうですか」
「え? それだけ? 不満はないの?」

 ヴェイナーは驚いているが、ライルは特に何とも思わなかった。

「俺は別に高ランクを目指しているわけじゃありませんから。ティリア様が不自由なく暮らせればいいんです。Bランクなら、それが出来るんですよね?」

「ええ。アンタならソロでもやっていけるしね。仲間内でモメて冒険に出られないって事もないし」

 ヴェイナーは「意見が纏まらないパーティーは結構多いからさ」と言って苦笑する。

「Bランクのソロで請けられる依頼だけをこなしても、普通に暮らしていく分には困らないわ」
「それなら十分です」

「無欲ねぇ。アンタの力ならSSSスリーエスランクだっておかしくないのに。人から崇められたいとか、伝説になりたいとか思わないの?」

「全く思いません」
「ふーん。でもあたしは、アンタがBランクなのは納得いかないけど」

 しかし冒険者総括協会が間違っているわけではない。「ワイバーンを討伐した冒険者はAランクと認定する ※ただし産卵期の討伐はBランク相当とみなす」と規則に定めてあるからだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

地味で役に立たないと言われて捨てられましたが、王弟殿下のお相手としては最適だったようです

阿里
恋愛
「君は地味で、将来の役に立たない」 そう言われ、幼なじみの婚約者にあっさり捨てられた侯爵令嬢の私。 社交界でも忘れ去られ、同情だけを向けられる日々の中、私は王宮の文官補佐として働き始める。 そこで出会ったのは、権力争いを嫌う変わり者の王弟殿下。 過去も噂も問わず、ただ仕事だけを見て評価してくれる彼の隣で、私は静かに居場所を見つけていく。 そして暴かれる不正。転落していく元婚約者。 「君が隣にいない宮廷は退屈だ」 これは、選ばれなかった私が、必要とされる私になる物語。

どうぞお好きになさってください

みおな
恋愛
学園に入学して一ヶ月。 婚約者の第一王子殿下は言った。 「学園にいる間くらい自由にさせてくれないか。君が王太子妃になることは決定事項だ。だから、せめて学園に通う二年間は、僕は恋がしたい」 公爵令嬢はその綺麗な顔に冷酷な笑みを浮かべる。 「好きになさればよろしいわ」

『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~

スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」 王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。 伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。 婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。 それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。 ――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。 「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」 リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。 彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。 絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。 彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。

さようなら、私を「枯れた花」と呼んだ貴方。~辺境で英雄を救って聖女と呼ばれたので、没落した元婚約者の謝罪は受け付けません~

阿里
恋愛
「お前のような見栄えの悪い女は、俺の隣にふさわしくない」 婚約者アレクに捨てられ、辺境へ追いやられたセレナ。 けれど、彼女が森で拾ったのは、アレクなど足元にも及ばないほど強くて優しい、呪われた英雄ライアンだった。 セレナの薬草が奇跡を起こし、王都を救う特効薬となったとき、かつて自分を捨てた男との再会が訪れる。 「やり直そう」と縋り付くアレクに、セレナは最愛の人と寄り添いながら静かに微笑む。 ――あなたが捨てたのは、ただの影ではなく、あなたの未来そのものだったのですよ。

処理中です...