公爵令嬢を溺愛する護衛騎士は、禁忌の箱を開けて最強の魔力を手に入れる

アスライム

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18話 女戦士ルーシー・カトルレイア(別視点)

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 私はルーシー・カトルレイア18歳。淡い赤毛のショートでサファイアブルーの瞳。どちらかと言えば、容姿は整っている方かな。

 伯爵家の次女として生まれたけど、どうしても家に馴染めなかったんだよね。そんなこんなで、今は冒険者やってる。

 パンは小さく千切って食べなさい(まどろっこしいんだって)
 淑女は走ってはいけません(だって走った方が速いじゃん)
 詩を書いてください(つ・ま・ん・な・い!)

 それでも教育係は「淑女とはこうあるべき」だの「貴族としての矜持は」だのって言って説教してくるし。
 プッツンしちゃって、書き置き残して家を飛び出したんだ。

 そんな昔を唐突に思い出したのは、私の目の前にティリアちゃんがいるからだ。

「ティリアちゃんって、どこの貴族? お忍びで来たんなら街を案内したげよっか? スリルがあって面白い場所もあるよ?」
「えっと、その……」

 1コ下の後輩がガンガン攻めるけど、ティリアちゃんは戸惑ってるみたい。こんなに距離感無視する人間なんて、今までいなかったんだろうね。

「あの、私は貴族ではありません」
「あはははは。そんなの誰も信じないって」

 先輩がズガンと事実を突き付ける。あれ、おかしいな? 何気に私の時との差が凄い。

 私が先輩に自己紹介した時は「あんたが貴族? 馬鹿も休み休み言え」とか言ってたのに。うわぁ、思い出したらなんかモヤっとしてくる。
 なんて事を考えてたら、ティリアちゃんと親交を深める流れになった。

「じゃあ座って。ティリアちゃん」

 奥の部屋へ行き、後輩がニコニコしながら椅子を勧める。

「失礼いたします」

(おおっ!)

 思わず拍手を贈りそうになる。高位貴族はやっぱり違うね。椅子に座っただけなのに、もの凄く綺麗な所作だった。

「同じ貴族なのに……野生児のルーシー先輩と全然違う」
「あんたは一言多いんだよ!」

 確かに私は野生児だけども! 私も本物の所作に感心したけども!
 まあ、私が野生児扱いされるのは日常茶飯事なので、ぶっちゃけ許してあげるけどさ。

「じゃあ自己紹介ね。私は――」

 そんなこんなで話が進んで行くと、後輩がスイーツと紅茶を並べ終わった。

「さあ、どうぞティリアお嬢様。存分にお召し上がりくださいませ」

 どうやら後輩は、変な遊びに目覚めたらしい。

「お気遣いありがとうございます。ですが、あの……先程も申しました通り、私は貴族ではありません」

「えっ? 貴族じゃないって本当だったの? もしかして王族とか?」
「いえ、違います。私は廃籍されましたので、貴族籍ではないのです」

『ええぇっ!?』

 皆の声が揃った。こんなに性格良さそうな子が廃籍ってのが信じられない。私でさえ大丈夫だったからだ。

「野生児の先輩だって廃籍なんてされてないのに……」
「そこに直れ!」

 私も同じ事考えたけどさぁ!

「ティリアちゃんって、もしかして『月』だったりしない?」
「月とは何でしょうか?」

 先輩の発言でキョトンとしてる。それがまた可愛い。

「ああっ! 西の国の『月と太陽』ですね! 月の令嬢の名前って、確かティリアでしたよね?」

 後輩の説明で私も思い出した。西の国には、それぞれ月と太陽に例えられる公爵令嬢姉妹がいるらしい。超美人姉妹として近隣諸国では有名だ。

「姉のティリアと妹のミリーナね。もしかしてティリアちゃんって、公爵家の長女なの?」
「は、はい。廃籍される前はフローレンス公爵家におりました」

 私の質問に戸惑いながら答えてくれた。なぜ名前が知られているのか、本人は分かっていないみたいだけど。

「私は――」

 そう言って語られたティリアちゃんの過去は、幸せとは言い難いものだった。

「ティリアちゃんは精一杯やったよ。浮気者とも婚約破棄出来たんだし良かったじゃん」
「……ルーシーさん」

 ティリアちゃんは目に涙を浮かべてる。

「先輩もたまには良い事言いますね。もしかして野生の勘ってやつ?」

 指摘するだけ無駄なので、もう黙っておく。

「でもライル君が他の女にそっけない理由が分かったなぁ」

 すっごいウキウキしながら、後輩はティリアちゃんへとにじり寄る。

「ライル君とはどんな関係? ぶっちゃけ彼の事どう思ってるの?」

「ラ、ライルは幼馴染です。護衛として傍にいてくれますので、私は嬉しく思っております」
「うんうん。それで?」

「私が廃籍される時も、苦労を厭わずついて来てくれました」
「それも嬉しく思ってるの?」
「は、はい」

「で、他には? もっとあるよね?」
「あ、あの」

 ティリアちゃんは何も喋れなくなってしまった。ああ可愛い。ライル君が羨まし過ぎる。

「ケーキでも食べよっか」

 先輩の一言でケーキを食べ始め、一息ついて皆満足したのか解散となった。今はティリアちゃんと2人きりの状況だ。

「ティリアちゃん。疲れがとれなかったりしない?」

 図星だったのか、少し眉根を寄せている。
 後輩から野生児と言われる私でさえ、市井の生活を始めた頃はそれなりにキツかったくらいだからね。

「ライルには黙っていてもらえませんか?」
「いいよ」

 心配かけたくないんだろうし。

「もし良かったら、これ使ってみない?」

 香草をティリアちゃんに渡した。

「寝る時に炊いてみて。凄く疲れが取れるから。冒険者でも使ってる人が多いんだよ」
「ありがとうございます。ルーシーさん」

 ティリアちゃんは、お辞儀をして部屋を出て行った。
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