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32話 ギルドの元エースとの闘い(別視点あり)
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「お前が、新しくギルドに入った冒険者か?」
「はい。そうです」
目の前に現れたのは、中肉中背で茶髪の戦士だった。
軽い雰囲気で20代半ばの男だ。
「俺はリンドル。Aランクの冒険者で、さっき遠征から帰って来たばかりだ。ギルド《鷹の眼》に所属してる。まあよろしくな」
「よろしくお願いします。俺はライルです」
「はじめましてリンドル様。私はティリアと申します」
ティリアはライルの後ろから進み出てカーテシーをすると、ハッとして困った顔をした。今はもう貴族ではない為、カーテシーは不要だったからだ。
「うおっ! メッチャ可愛いじゃん! 俺の遊び仲間にでもならねー?」
「リンドルさん!」
ライルは、ティリアの肩に触れようとしたリンドルの手首を掴む。
「なんだライル? 先輩に文句でもあんのか?」
「大ありですが?」
一触即発の雰囲気だ。
「許可なくティリア様に触れないでください」
軽く睨んでから手を離す。
「へぇ。そういうワケね。じゃあいいや。今日は元々、お前の方に用事があったんだからさ」
「俺に?」
ティリアから矛先が変わった事で、ライルは冷静になった。
「俺って、これでも一応Aランクなワケよ。このギルドでエース張ってんの。で、久しぶりに帰ってきたら、とんでもない新人が入ったって言うじゃねぇか。ワイバーンを千体撃ち落としただの、あのビルダーを剣で捻じ伏せただのってさぁ。信じらんねーっての」
リンドルは腕を組んでライルを見定める。
「こりゃあ1回手合わせしとくべきだと思って、ここに来たんだよ。つーわけだからライル。俺と剣で打ち合え」
「別に構いませんよ。お受けしまします」
こうしてライルとリンドルの野良試合が始まった。
△
リンドルはSランクへの昇格が目前だ。現在のランクはAランクの上位に分類され、名実ともにギルド《鷹の眼》を支えてきた。
剣の腕は高レベルで、同年代には負け無しだ。そんなリンドルが冒険者を目指す切っ掛けとなったのは、剣の天才ビルダーとの出会いだった。
試合でビルダーに叩きのめされたリンドルは、初めて敗北の味を知った。それが悔しくてたまらず、家族を説き伏せて家を出たのだ。
そして晴れて冒険者になってからは、魔物相手に厳しい修練を積んできた。だが……。
「バケモンかよオメェは」
思わず愚痴が出た。目の前には息一つ乱さずに、涼しい顔で立っている黒髪の美剣士がいたからだ。
リンドルがどんな技を繰り出そうと、どれだけフェイントを織り交ぜようと、その攻撃は身体にかすりもしなかった。
「もういいですか?」
ライルの言葉に、リンドルはギリッと歯噛みする。
「ビルダーに完勝したってのは、ブラフじゃねぇみてぇだな」
リンドルはライルの実力を認めた。というより認めるしかなかった。ライルの剣の腕が、壮絶な努力の結果によるものだと分かったからだ。
「憎らしい程につえぇ。ムカつくけど褒めてやるよ」
「ありがとうございます」
全く嬉しそうじゃない顔で、ライルは礼を述べる。。
(どんだけ剣を振ってきたんだ? 俺の比じゃねぇのは間違いねぇだろうけどよ)
ライルと同じく騎士の家系に生まれたリンドルは、とにかく家が窮屈だった。性に合わなかったと言ってもいい。
剣術の鍛錬に身が入らなかったのも、厳格な騎士となる事を強制されたからでもある。そんな時にビルダーと出会って負けたのだ。
手っ取り早くビルダーと同じ強さを得るには、同じように冒険者になるしかないと思って家を出た。
単純で考え無しだが、冒険者としての自由な生活はリンドルに合っていた。数多くの魔物を討伐し、少年時代とは打って変わって修練にも身が入った。
だが目の前に悠然と佇むライルは、リンドルが目標としてきたビルダーでさえも、霞んでしまう程に圧倒的に強かった。
(どうやれば、こいつみたいに強くなれる?)
詮無い事を考えたリンドルは、諦めたようにフッと笑う。
「俺さぁ、実家にいた頃は何もしなくても勝ちまくってたんだよ。だから努力なんて全くしなかった」
そう言うと、一転して真剣な表情になる。
「冒険者になってからは、メッチャ努力してきたけどな」
ライルは口を挟まずに黙って聞いている。
「俺がもし昔から努力していたら、今のお前と良い勝負が出来たと思うか?」
「分かりません。仮定の話には答えられませんから」
「そりゃそうだよな」
(はぁ……お前みたいな奴がいるなんてなぁ)
リンドルは剣を握り直す。
「行くぞオラぁあああああああ!」
リンドルは捨て身覚悟で大きく踏み込んだ。しかし特攻を仕掛けたにも関わらず、渾身の突きはアッサリとライルに防がれる。
そのまま流れるような動きで、ライルはリンドルの後頭部を剣の柄で強打した。
「っ!?」
「おっと」
意識を手放したリンドルを受け止め、試合はライルの完勝で決着した。
「はい。そうです」
目の前に現れたのは、中肉中背で茶髪の戦士だった。
軽い雰囲気で20代半ばの男だ。
「俺はリンドル。Aランクの冒険者で、さっき遠征から帰って来たばかりだ。ギルド《鷹の眼》に所属してる。まあよろしくな」
「よろしくお願いします。俺はライルです」
「はじめましてリンドル様。私はティリアと申します」
ティリアはライルの後ろから進み出てカーテシーをすると、ハッとして困った顔をした。今はもう貴族ではない為、カーテシーは不要だったからだ。
「うおっ! メッチャ可愛いじゃん! 俺の遊び仲間にでもならねー?」
「リンドルさん!」
ライルは、ティリアの肩に触れようとしたリンドルの手首を掴む。
「なんだライル? 先輩に文句でもあんのか?」
「大ありですが?」
一触即発の雰囲気だ。
「許可なくティリア様に触れないでください」
軽く睨んでから手を離す。
「へぇ。そういうワケね。じゃあいいや。今日は元々、お前の方に用事があったんだからさ」
「俺に?」
ティリアから矛先が変わった事で、ライルは冷静になった。
「俺って、これでも一応Aランクなワケよ。このギルドでエース張ってんの。で、久しぶりに帰ってきたら、とんでもない新人が入ったって言うじゃねぇか。ワイバーンを千体撃ち落としただの、あのビルダーを剣で捻じ伏せただのってさぁ。信じらんねーっての」
リンドルは腕を組んでライルを見定める。
「こりゃあ1回手合わせしとくべきだと思って、ここに来たんだよ。つーわけだからライル。俺と剣で打ち合え」
「別に構いませんよ。お受けしまします」
こうしてライルとリンドルの野良試合が始まった。
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リンドルはSランクへの昇格が目前だ。現在のランクはAランクの上位に分類され、名実ともにギルド《鷹の眼》を支えてきた。
剣の腕は高レベルで、同年代には負け無しだ。そんなリンドルが冒険者を目指す切っ掛けとなったのは、剣の天才ビルダーとの出会いだった。
試合でビルダーに叩きのめされたリンドルは、初めて敗北の味を知った。それが悔しくてたまらず、家族を説き伏せて家を出たのだ。
そして晴れて冒険者になってからは、魔物相手に厳しい修練を積んできた。だが……。
「バケモンかよオメェは」
思わず愚痴が出た。目の前には息一つ乱さずに、涼しい顔で立っている黒髪の美剣士がいたからだ。
リンドルがどんな技を繰り出そうと、どれだけフェイントを織り交ぜようと、その攻撃は身体にかすりもしなかった。
「もういいですか?」
ライルの言葉に、リンドルはギリッと歯噛みする。
「ビルダーに完勝したってのは、ブラフじゃねぇみてぇだな」
リンドルはライルの実力を認めた。というより認めるしかなかった。ライルの剣の腕が、壮絶な努力の結果によるものだと分かったからだ。
「憎らしい程につえぇ。ムカつくけど褒めてやるよ」
「ありがとうございます」
全く嬉しそうじゃない顔で、ライルは礼を述べる。。
(どんだけ剣を振ってきたんだ? 俺の比じゃねぇのは間違いねぇだろうけどよ)
ライルと同じく騎士の家系に生まれたリンドルは、とにかく家が窮屈だった。性に合わなかったと言ってもいい。
剣術の鍛錬に身が入らなかったのも、厳格な騎士となる事を強制されたからでもある。そんな時にビルダーと出会って負けたのだ。
手っ取り早くビルダーと同じ強さを得るには、同じように冒険者になるしかないと思って家を出た。
単純で考え無しだが、冒険者としての自由な生活はリンドルに合っていた。数多くの魔物を討伐し、少年時代とは打って変わって修練にも身が入った。
だが目の前に悠然と佇むライルは、リンドルが目標としてきたビルダーでさえも、霞んでしまう程に圧倒的に強かった。
(どうやれば、こいつみたいに強くなれる?)
詮無い事を考えたリンドルは、諦めたようにフッと笑う。
「俺さぁ、実家にいた頃は何もしなくても勝ちまくってたんだよ。だから努力なんて全くしなかった」
そう言うと、一転して真剣な表情になる。
「冒険者になってからは、メッチャ努力してきたけどな」
ライルは口を挟まずに黙って聞いている。
「俺がもし昔から努力していたら、今のお前と良い勝負が出来たと思うか?」
「分かりません。仮定の話には答えられませんから」
「そりゃそうだよな」
(はぁ……お前みたいな奴がいるなんてなぁ)
リンドルは剣を握り直す。
「行くぞオラぁあああああああ!」
リンドルは捨て身覚悟で大きく踏み込んだ。しかし特攻を仕掛けたにも関わらず、渾身の突きはアッサリとライルに防がれる。
そのまま流れるような動きで、ライルはリンドルの後頭部を剣の柄で強打した。
「っ!?」
「おっと」
意識を手放したリンドルを受け止め、試合はライルの完勝で決着した。
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