公爵令嬢を溺愛する護衛騎士は、禁忌の箱を開けて最強の魔力を手に入れる

アスライム

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45話 魔女のお願い

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「ティリア様。ただいま戻りました」
「……」

 出迎えたティリアは、ムッとしてライルを見ている。

「ティリア様?」
「ライル。私、怒ってるのよ?」
「危険な真似をしてしまい、申し訳ありませんでした」

 誠心誠意頭を下げるとティリアは折れた。ライルが行動したのは、ティリアの為だと分かっているからだ。

「美人さんだね」

 ライルの後ろから、アリサがヒョイッと顔を出す。

「こんばんはー。見るからに怪しい者です」
「変な自己紹介は止めてくださいアリサさん」

 ライルは疲れがどっと出たようにゲンナリしている。

「出会いは先手必勝だからね。怪しいって思われる前に怪しいアピールしとけば私の勝ちだから」

「……意味が分かりません」
「安心してライル君。重要なのはインスピレーションよ」

 アリサはコホンと咳払いをして、改めて自己紹介をする。

「私は『時渡りの魔女』アリサよ。と言っても、ゼレクの馬鹿が子孫に何も伝えてないから、サッパリ分からないだろうけどね」

 アリサの言う通りだった。ライルもティリアも、何も事情を理解していない。

「あの、とりあえず紅茶でも如何ですか?」
「ありがとう。いただくね。話も長くなるし」

 応接室へと向かい、ティリアは紅茶を用意した。するとアリサは砂糖の瓶に人差し指を向ける。

「魔女っぽい事をするから見ててね」

 アリサが指を振ると、砂糖の入ったビンがフヨフヨと浮かんだ。ライルは、その様子を凝視している。

「ティリアちゃんだっけ? 砂糖はどれくらい入れる?」
「私は小さじ1杯です」
「ライル君は?」
「俺は要りません」
「OK」

 ビンの蓋が開き、適量の砂糖がそれぞれのカップに入る。そして紅茶の中に小さな渦が発生して掻き混ぜられていった。

「どう? 面白い魔法でしょ?」
「凄いです。アリサ様の魔法は繊細なんですね」

 感心するティリアとは違い、ライルは何も喋らない。圧倒されているようだ。

「おや? どうしたのかなライル君? 遠慮しないで私を崇め奉ってもいいんだよ?」

「……」
「魔法は高火力でドンパチやるだけじゃないからね。少しずつ学んでいきなさい。

 アリサは紅茶を一口飲んだ。

「で、私がここに来た理由なんだけど。それを理解してもらうには、パンドラの箱について知ってもらわなきゃいけないんだよね」

「パンドラの箱って、あのパンドラの箱ですか?」
「うん。君が開けたあの箱ね。そして私は箱の守護者をやってるの」

「箱に守護者がいるなんて、俺は初めて知りました」
「ゼレクの馬鹿が子孫に何も伝えてないからね。」

 ウンザリとしながらライルに答えた。

「箱は強烈な瘴気を感知して次元を渡るのよ。そして箱を監視するのが私の仕事。アクシデント対応も仕事に含まれるから、今回はシャレになんないくらい働かなきゃいけないけどね。大体さぁ――」

 しばらく愚痴が続いた。アリサは自宅のようにくつろいでいる。

「――で、箱は500年掛けて世界中の瘴気をゆっくりと吸収してくれるのよ。強烈な瘴気が放置されたままだと、超強力な魔物が生まれで危険でしょ? だから、それを防いでくれるのがパンドラの箱なの」

 ライルは得られた情報を吟味していった。

「ではアリサさんは、500年前の時代から今の時代までタイムリープしてきたんですね?」
「そうそう。いやー、魔導に精通してる人は話が早くて助かるわぁ」

 アリサはグッと親指を立ててから「クッキーとかないの?」と言って食糧を要求している。だが、そんな気の利いた物は無い。

「箱に溜まった瘴気は、最終段階になったら取り出さなきゃいけないの。そうしないと、満杯になった箱が暴発して世界に終末が訪れちゃうから。

 箱を開けるにしろ、瘴気を取り出すにしろ、集めた瘴気を『ろ過』するにしろ、どれもライル君の力を使って行うんだよね」
「俺の力をですか?」

 ライルは自らを指差す。

「うん。ライル君は世界から祝福されているから世界最強なの。その祝福された特別な力を使わせてもらって、瘴気の処理を色々やってるんだ」

 ライルは首を傾げた。過大評価だと思ったからだ、

「俺は世界最強なんかじゃありませんよ? 兄上や父上にも力が及びませんし」

 アリサはフフッと笑った。

「ライル君は生まれた時からずっと、箱に力を吸われていたの。だから本来の君はもの凄く強いのに、力を発揮出来なかったんだ。本当は君の家族なんて目じゃないくらいに、君は強いんだよ?」
「はぁ」

「それだけ重要な役割を、ライル君がずっと受け負ってたの。あとは集めた瘴気を君の体内で『ろ過』するだけだったんだけど、それが終わる前にライル君は死んじゃったでしょ?」
「……はい」

 なるべくなら思い出したくない事だったので、ライルは言い淀んだ。

「その時に、瘴気が世界中に散っちゃったんだよね。だからライル君!」

 アリサは両手を合わせてライルを拝む。

「君がなんとかして!」

 いきなりの要望に、ライルは唖然としてしまった。
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