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58話 孤児院の少年少女(別視点)
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俺はアーレス。12歳。
親の顔なんて知らない。物心つく前に、俺は裏街に捨てられたらしいから。神父様は「アーレスの両親は不慮の事故で亡くなった」と言っていたけど、それは嘘だと知っている。
街の大人達が本当の事を話しているのを聞いたし、ムカつく酔っ払いが何度か俺を揶揄ってきたからだ。
それによると、平民の生まれなのに強い魔力持ちだったのが、俺が捨てられた原因らしい。両親は俺を気味悪がって裏街に捨てて、そのままどこか別の街に移り住んだんだと。
だから俺は、そこそこ強い魔力持ちの自分が嫌いだった。平民に似つかわしくない魔力なんて持ってるから、捨てられて不幸になったんだ。
だけど、そんな俺の心を変えたのがライル兄ちゃんだった。ワイバーンの群れを撃ち落としたって聞いた時は心底驚いたし、夜空に咲いた魔法の花火を見た時は、信じられないくらいに綺麗だと思った。
魔力には無限の可能性があるんだって知ったその日から、興奮して中々寝られない日が続いた。
けれどライル兄ちゃんが凄いのは魔法だけじゃない。剣技だって凄腕だ。Sランク冒険者を倒せるくらいの剣士なんだ。
悪い大人達をあっという間に倒したりもするし、強い魔物を倒して国の姫様に感謝されたりもしてる。ライル兄ちゃんは勇者みたいだ。
剣と魔法で戦う冒険者。そんなライル兄ちゃんみたいになるのが俺の目標だ。だから、そこそこ強い魔力持ちとして生まれた事を今では感謝してる。
憧れのライル兄ちゃんみたいになりたくて「どうやったら、そんなに強くなれるの?」って聞いてみた。そしたら、
『守りたい人がいれば、アーレスも強くなれるよ』
って答えが返ってきたから、なるほどなって思った。ライル兄ちゃんは、ティリア姉ちゃんの為に強くなったんだ
俺も神父様や皆を守れるように強くなりたいと思った。
△
私はミーナ。13歳。
両親についての記憶はない。だって私は、最初の記憶がある時には裏社会の組織にいたから。
買われて来たのか攫われて来たのかは知らないけど、組織の歯車となるべく教育を受けて来た。
語学、薬学、小剣術、体術その他の訓練を、朝起きてから夜寝るまで散々やってきた。諜報員にでもなるんだろうなって思ってたんだけど、ある日王国の部隊の人達に踏み込まれて、組織は壊滅してしまった。
幸か不幸か犯罪に手を染める前だった私は、孤児院預りとなった。そうして、ここへとやって来た。
人心掌握術なんかも深く学んでいたから、ここに来てからも猫を被って上手くやっていた――つもりだったんだけど。
「私はティリア。貴女の名前を教えてもらえるかな?」
「私はミーナです」
見た事ないくらいに綺麗な人だったけど、私の心は何も動かない。今までと同じように波風を立てず、薄っぺらい笑顔を張り付けてやり過ごすだけ。
「ミーナちゃん。もしも辛い事があるなら、私に話してみない?」
「辛い? 私、辛そうに見えますか?」
「ええ。見えるわ」
そんな風に言われたのは初めてだったから、どう答えていいか分からなかった。
「泣いたら心が軽くなるのよ。だから、辛いのに無理に笑わなくてもいいの」
そう言われた時、私は辛かったんだって自覚した。そのまま馬鹿みたいに縋って、初めて泣いた。何故だか知らないけど、涙が止まらなかったんだ。
「私――」
ティリアお姉ちゃんは、面白くもない私の話を最後まで聞いてくれた。
「頑張ったね」
「……うん」
私は辛くて苦しくて悲しくて、泣きたかったんだ。でも心の中を読ませないようにって訓練をずっとしてきたから、思った事なんて何も言えなくなっていて。
「どうして私の気持ちが分かったの?」
「ミーナちゃんが、昔の私と同じ顔をしていたからよ」
「同じ顔?」
「私も、そういう教育をされてきたの。感情を読まれない為の教育をね」
そう言って私の頭を撫でて、ティリアお姉ちゃんは自分の話をしてくれた。ティリア・フローレンス公爵令嬢の話なら知っていた。組織にいた頃に「太陽と月の令嬢」についても教えられていたから。
初めて話したその日から、私はティリアお姉ちゃんの事が大好きになった。特に私が好きなのは、時折見せてくれる最高の笑顔かな。
組織では「月は笑わない」って教えられたけど、それは間違ってるんだって今では分かる。
「ティリア様」
ほらね。凄く嬉しそうに笑ってる。でも残念ながら、あの笑顔を見せてくれるのはライル兄ちゃんが傍にいる時だけなんだけど。それが少し悔しい。
親の顔なんて知らない。物心つく前に、俺は裏街に捨てられたらしいから。神父様は「アーレスの両親は不慮の事故で亡くなった」と言っていたけど、それは嘘だと知っている。
街の大人達が本当の事を話しているのを聞いたし、ムカつく酔っ払いが何度か俺を揶揄ってきたからだ。
それによると、平民の生まれなのに強い魔力持ちだったのが、俺が捨てられた原因らしい。両親は俺を気味悪がって裏街に捨てて、そのままどこか別の街に移り住んだんだと。
だから俺は、そこそこ強い魔力持ちの自分が嫌いだった。平民に似つかわしくない魔力なんて持ってるから、捨てられて不幸になったんだ。
だけど、そんな俺の心を変えたのがライル兄ちゃんだった。ワイバーンの群れを撃ち落としたって聞いた時は心底驚いたし、夜空に咲いた魔法の花火を見た時は、信じられないくらいに綺麗だと思った。
魔力には無限の可能性があるんだって知ったその日から、興奮して中々寝られない日が続いた。
けれどライル兄ちゃんが凄いのは魔法だけじゃない。剣技だって凄腕だ。Sランク冒険者を倒せるくらいの剣士なんだ。
悪い大人達をあっという間に倒したりもするし、強い魔物を倒して国の姫様に感謝されたりもしてる。ライル兄ちゃんは勇者みたいだ。
剣と魔法で戦う冒険者。そんなライル兄ちゃんみたいになるのが俺の目標だ。だから、そこそこ強い魔力持ちとして生まれた事を今では感謝してる。
憧れのライル兄ちゃんみたいになりたくて「どうやったら、そんなに強くなれるの?」って聞いてみた。そしたら、
『守りたい人がいれば、アーレスも強くなれるよ』
って答えが返ってきたから、なるほどなって思った。ライル兄ちゃんは、ティリア姉ちゃんの為に強くなったんだ
俺も神父様や皆を守れるように強くなりたいと思った。
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私はミーナ。13歳。
両親についての記憶はない。だって私は、最初の記憶がある時には裏社会の組織にいたから。
買われて来たのか攫われて来たのかは知らないけど、組織の歯車となるべく教育を受けて来た。
語学、薬学、小剣術、体術その他の訓練を、朝起きてから夜寝るまで散々やってきた。諜報員にでもなるんだろうなって思ってたんだけど、ある日王国の部隊の人達に踏み込まれて、組織は壊滅してしまった。
幸か不幸か犯罪に手を染める前だった私は、孤児院預りとなった。そうして、ここへとやって来た。
人心掌握術なんかも深く学んでいたから、ここに来てからも猫を被って上手くやっていた――つもりだったんだけど。
「私はティリア。貴女の名前を教えてもらえるかな?」
「私はミーナです」
見た事ないくらいに綺麗な人だったけど、私の心は何も動かない。今までと同じように波風を立てず、薄っぺらい笑顔を張り付けてやり過ごすだけ。
「ミーナちゃん。もしも辛い事があるなら、私に話してみない?」
「辛い? 私、辛そうに見えますか?」
「ええ。見えるわ」
そんな風に言われたのは初めてだったから、どう答えていいか分からなかった。
「泣いたら心が軽くなるのよ。だから、辛いのに無理に笑わなくてもいいの」
そう言われた時、私は辛かったんだって自覚した。そのまま馬鹿みたいに縋って、初めて泣いた。何故だか知らないけど、涙が止まらなかったんだ。
「私――」
ティリアお姉ちゃんは、面白くもない私の話を最後まで聞いてくれた。
「頑張ったね」
「……うん」
私は辛くて苦しくて悲しくて、泣きたかったんだ。でも心の中を読ませないようにって訓練をずっとしてきたから、思った事なんて何も言えなくなっていて。
「どうして私の気持ちが分かったの?」
「ミーナちゃんが、昔の私と同じ顔をしていたからよ」
「同じ顔?」
「私も、そういう教育をされてきたの。感情を読まれない為の教育をね」
そう言って私の頭を撫でて、ティリアお姉ちゃんは自分の話をしてくれた。ティリア・フローレンス公爵令嬢の話なら知っていた。組織にいた頃に「太陽と月の令嬢」についても教えられていたから。
初めて話したその日から、私はティリアお姉ちゃんの事が大好きになった。特に私が好きなのは、時折見せてくれる最高の笑顔かな。
組織では「月は笑わない」って教えられたけど、それは間違ってるんだって今では分かる。
「ティリア様」
ほらね。凄く嬉しそうに笑ってる。でも残念ながら、あの笑顔を見せてくれるのはライル兄ちゃんが傍にいる時だけなんだけど。それが少し悔しい。
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