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【34】いくよ、ディル君
しおりを挟む――アムルちゃんの居場所は不明。
アクセサリーを残したのは私たちに対する挑発だった。
冒険者さんたちは、街の同業者と手分けして、近場の封印地をしらみつぶしに回るという。
だが、それも奴らの手のひらの上であることは否めない――唇を噛む彼らの表情が、胸に響いた。
「カナデのお嬢。頼みがある」
ギルドの受付ホールが慌ただしくなる中、冒険者さんが言った。
「俺たちと一緒に来て貰いたい場所があるんだ。もしかしたら、誘拐犯たちが目指す本当の目的地はそこかもしれない」
「そんな場所が?」
「ああ。かつて魔王すら退けたという大聖女。その人が眠る城がここからずっと北にあるらしい」
……ん?
「あくまで伝承だが、その城は伝説級の魔物を封印する役割もあったとか。もし、奴らの本当の狙いがそこなら……」
……おや?
「頼む、カナデお嬢! 俺たちと一緒に、伝説の大聖女の城まで来てくれないか? あんたの力が必要なんだ!」
「ええっと」
ちらりとディル君を見る。
人懐っこい弟わんこ君は、いつものニコニコ顔で耳打ちしてきた。
「俺です俺。伝説級の魔物」
「お前かい! いやちょっと納得しちゃったよ!」
「今は神獣ですよ。ほら、どこからどう見ても神なる獣でしょ」
「その余裕はどこから……」
げんなりする私。その様子を冒険者さんたちが怪訝そうに見ている。
「カナデのお嬢?」
「こほん。すみません。それでしたら、私とディル君で様子を見てきます。たぶん、その方がずっと早い。皆さんはここで待っていてください」
いくよ、ディル君――と声をかけ、私はギルド本部を飛び出した。
レギエーラの外を目指し、走る。
「アムルちゃん。無事でいて……!」
「主様、急ぎましょう。面白いところを見逃してしまう」
「そうね。……え?」
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