聖女の死後は引き受けた ~転生した私、新米女神の生前の身体でこっそり生きる~

和成ソウイチ

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【43】どっちからお掃除始めます?

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 いつの間にか完全に日が暮れ、真っ暗になっていた。
 日本に居た頃なら、飲み会の帰り道は「風が気持ちいい」と感じるところ。
 狼形態のディル君の背中で、びゅうびゅう吹き抜けていく風はむしろ冷たかった。これ、酔ってないよね。冷や汗が気化してるよね。

 というか何? 百杯は飲んでないって、五十や六十は飲んだってこと? いや気付けよ私。「こやつ、出来る……!」ってレベルを超えてるでしょ。普通に出禁レベルでしょ。
 ディル君の冗談ならいいけど……あやつがこういう話題で冗談を言うとは……。
 しばらくギルド本部には顔を出したくないです。

 ――などと悶々と考えている私を余所に、ディル君は何事もなく城にたどり着いた。
 自律式のチート城は、元の場所に戻っている。あの光景が嘘のようだ。

 シャワー浴びて、着替えて、カナディア様に懺悔して。

「おやすみなさい、主様」
「うん。おやすみ、ディル君」

 眠りに就く。

 ――そして翌日。

「ディル君」

 朝食の場で、私は真面目な表情を作って言った。

「今日は一日、お掃除をしようと思います」
「掃除、ですか? 誰を」
「違くて」

 言うと思ったのでさらりとかわす。

「これから先、転移魔法って奴が普通に稼働し始めたら、アムルちゃんが頻繁にやってくるようになるでしょ? その前に、めぼしいところをきちんと綺麗にしておきたいの」

 前にディル君は、カナディア様はこの城で過ごした時間が短かったと言っていた。いくらチート城とはいえ、使われなかった部屋は埃が溜まっているはずだ。

「それに私、まだ城の内部をろくに把握できてないし。これを機会に、この城がどんな構造をしているのか、ちゃんと見ておきたくて。いちおう、この城の主だし。私」
「素晴らしい。素晴らしいです主様」

 ディル君が尻尾を振って称賛してくれた。大げさだよ、と私は苦笑する。

「主様自ら、城のマッピングをするということですね。カナディア様ですら成し遂げられなかった偉業にチャレンジするとは、さすがです!」

 嫌な予感がした。

「えーと、ディル君? 偉業って、どういうことかな? カナディア様ですら成し遂げられなかったって……どういう意味?」
「はい! この城は神の遺物に等しいので、内部空間も現世とは違う法則で成り立っています」
「……チガウホウソク」
「つまり無限に変化したり増殖したりできるわけです」
「……ムゲン」
「まだまだ成長途中なんですね。裏庭の稲と同じく、微笑ましいと思いませんか?」
「……」
「あ、そういえば城の未探索箇所には浄化しそこねた魔物が残ってるって聞いたことがあります。それと、呪いの書物や装飾品が一階の倉庫に封印されているとか」
「……」
「未知の魔物の掃討と、呪物の整理。どっちからお掃除始めます?」
「まず稲を見ようか」

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