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【72】十二人乗り
しおりを挟む騙されないなんてひどいです、とぶーぶー言うディル君を先頭に、私たちは城の地下へと降りていく。
後ろにはカラーズ全員も一緒だ。
「ねえ、ディル君や」
オートマッピングで慎重に位置を確認しながら、私は疑心暗鬼になって尋ねた。
「この一週間、影でいろいろと動いてくれてたのは感謝してるけど、敢えて聞くね。……何を企んでる?」
「ひどい言いがかりですねえ。そんなに俺が信用できませんか?」
「そりゃあガスマスク片手に笑ってりゃあね!? 疑いたくもなりますよ!?」
この子のことだから、私が面白い状況に陥るためなら喜んで励みそうだ。
ディル君、寂しそうに微笑む。ガスマスクをスッと顔に近づけ、ポツリ。
「影で頑張ったのに……」
「影で頑張ったから怪しいのよ」
ぴしゃりと言うと、弟わんこはぺろりと舌を出した。
『これが最も付き合いが深い臣下のやり取り……勉強になります』
声を揃えるカラーズちゃんたちに、私は額を押さえた。
良い子は真似しないでね。
――そうこうしているうちに、オートマッピングされていない未知の領域にたどり着く。
いつの間にか、道幅がぐっと広くなっている。
「こちらですよ。主様」
そう言って、ディル君は大きな扉の前に立った。
他とは明らかに雰囲気が違う。
耳を澄ませば、中から何やら低い音が聞こえてきた。
ただならぬ雰囲気を感じ取ったのだろう。臆病な性格のカラーズたちが私の背中にくっついた。
『聖女様、中からとても大きな力を感じます』
「大じょう……ぶっ。しん、ぱいしない、で……っ」
お、重い……!
さすがのカナディア様BODYでも十二人乗りはキツイ……!
でも純粋に怖がってるから邪険にはできない……!
っていうか皆器用だね! どうやって乗っかってるの!?
「しゅここ」
「ええい笑うなと言うに!」
「失礼しました。それより、主様も驚くと思いますよ。実際、俺も初めて見たときは驚きました」
珍しく茶化すのを止めて、ディル君が扉を開ける。
「どうぞ。ここが酒造りの工場です」
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