聖女の死後は引き受けた ~転生した私、新米女神の生前の身体でこっそり生きる~

和成ソウイチ

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【80】遠慮せずにどうぞ

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 しかし遅かった。
 一糸乱れぬ動きで酒を傾けるカラーズたち。

「ああ……そんな……」
「主様、主様。なぜ、そんな絶望にまみれた顔をしているのですか」
「だって! カラーズちゃんたちが! あんなワケのわからないお酒で!」
「だからってそんな面白いお顔にならなくても」

 すん。

 一瞬で表情を改めた私は、ディル君の尻尾をつかんで問答無用で引っ張った。
 魔力で床に穴をあけ、埋める。

「素晴らしい手際です、主様」
「君は本当にブレないな」

 首から上だけ出して瞳をキラキラさせる弟わんこに、私は一瞬自問する。
 もしやこのわんこへの対応を間違えたか?

『せ、聖女様!』

 カラーズちゃんたちの声に振り返る。
 恐れていた光景には――ならなかった。

『すごいです……身体の奥底から、力が湧いてきます!』

 十二色のリボンを付けた少女たちは、光っていなかった。
 代わりに、彼女たちの身体から強い魔力が立ち上っているのを感じる。
 お酒に込められた魔力が、そのまま彼女たちの力になっているのだ。

 それにしても――。

「あの娘たちだけ光らないなんて不公平ですよね、主様」
「なんでこういうときだけ意見が合うのか……」
「もうちょっと工夫すれば彼女たちでも立派に光るようになるかもしれませんね」
「地中でおすわり」
「もうやってますよ」

 嫌な息の合い方だった。

 ――その後、カラーズちゃんたちは全員例外なく、水を生み出す魔法を体得した。
 お酒の効果は一時的だったようで、魔力はしばらくすると収まった。けど、感覚的に理解した魔法の使い方は忘れなかったようだ。

『これで聖女様のお役に立てます!』

 皆、揃って目を輝かせていた。
 彼女たちは酒蔵での仕事に使命感を覚えてしまっている。
 もう後に引けない感じ。

 私は心の中で涙を流した。

 いつの間にか穴から這い上がっていたディル君が、酒樽の中身をいくつかの小瓶に移し替える。

「ちょっとディル君。私はこのお酒を売るつもりは――」
「いえ、そうではなく。万が一の備えとして持っておきましょう。効果はカラーズたちが実証してくれました。彼女たちに持たせていれば、いざというときの切り札にできるでしょう」

 そして私にも瓶を手渡す。

「はい。主様の分です。ご自身の灯り代わりにどうぞ」
「もう一回埋まる?」
「同じことの繰り返しは面白くないですよ?」

 誰が笑いのネタか。

「まあ、味は極上なのですから、おひとりでたしなむにはうってつけでしょう。さあ遠慮せずにどうぞどうぞ」
「ありがとう。せっかくだから君も飲みなさい」
「ハハハ」

 ハハハじゃないよ。
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