聖女の死後は引き受けた ~転生した私、新米女神の生前の身体でこっそり生きる~

和成ソウイチ

文字の大きさ
90 / 118

【90】その目標って

しおりを挟む

「まあ……素敵なお姿ですわ。お姉様」

 アムルちゃんがうっとりした口調で褒めてくれる。

 ――私は、アムルちゃんの一家が用意したテントで、戦闘用の衣装に着替えていた。
 戦闘用と言っても、魔法使い用みたいな白いローブに、金色の刺繍を施した簡素なものだ。胸元に申し訳程度の金属鎧が着けられている。
 まあ、あまり派手派手しいのは遠慮したかったので、これはこれでいいかなと思う。何だか、女神カナディア様のイメージにも合うし。

 聞けば、この衣装はアムルちゃんたちが丹精込めて用意したものらしい。ディル君も魔力付与に協力していて、見た目よりもずっと防御性能は高い。ゲームでいう後衛キャラの最終装備みたいな奴だ。
 ディル君め。やっぱり私を闘技大会に放り込む気満々だったのね……。

「お姉様。さっそく試合が始まりますわ。まずは特別戦ですわよ」
「……え? いきなり?」

 私は面食らう。
 特別戦って名前だから、てっきり最終日の大トリに行うメインイベントだと思っていた。
 アムルちゃんはうなずく。

「特別戦は、この神聖なる大会の開始を告げるものであり、かつ最も重要な種目ですわ。大勢の戦士たちが全力をぶつけ合う。それはそれは壮観な戦いですの。参加者、観客が、この特別戦によって闘技大会の特別な空気に酔うのです」
「いや、でも。そんなすごい盛り上がるのを一番に持ってきて大丈夫なの?」
「お父様たちによると、特別戦を最終日にすると、それまでに消耗し傷付いた参加者が多くなって、いまいち盛り上がらないそうですの」

 まあ、一理あるっちゃああるけど……。
 何だか、参加者に優しくないスケジュールだね。

「それに、特別戦は儀式の側面もありますの。戦いの様子を神様に捧げる。それによって闘技大会そのものが神の儀式になる。お母様がウッキウキで話してくれましたわ」
「そ、そう」

 確かにお母様は楽しいだろうなあ、この話題……。

「それで、この特別戦には私とヒビキが一緒に出場するのよね」
「はい。少々変則的な集団戦――と考えていただければ」

 私はため息をつく。
 集団戦の一種……ってことは、ま、隅っこで目立たないように立ち回れば何とかなるかも。
 適当なところで脱落すれば、アムルちゃんたちも文句は言うまい。
 ヒビキを危ない目に遭わせるのは避けたいものね。

「ルールは、全参加者と主催者が選んだ代表者とのサバイバルバトルです」
「……ん?」
「皆がただひとつの目標のために結束し、挑みます。最終的に残ったひとり、あるいはひとグループが、わたくしたち神の遣いの言祝ぎを受けながら、再度、目標と一騎討ちする。神様の眷属となった古の戦士を模した形ですわ」
「ただひとつの、目標……」
「このルールから、特別戦を開催できる年はごく限られるのですが……今年は最高の闘技大会になりそうですわね!」
「はい質問」
「どうぞお姉様」
「その目標って、誰?」
「お姉様です」
「聞こえなかった。その目標って、誰?」
「お姉様です」
「聞こえなかった……その目標って……誰……?」

 駄目だ。目眩がしてごまかせない……!
 すると後ろから、私と色違いの衣装を着たカラーズたちがやってきて、整列した。
 皆の視線が、私に集まる。

 アムルちゃんが、にっこりゆったり死刑宣告した。

「お姉様です。さあ、行きましょう」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!? 元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

処理中です...