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聖女
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エミリは国に所属する魔術師に食って掛かった。
「勝手に召喚とか言って呼び出しておいて、危ない事をしろって、おかしいんじゃない!?」
しかし魔術師は、冷静に反論する。
「だから確認しました。召喚直後に、今から12時間以内なら帰す事もできるからと。それで、聖女として振る舞うのが嫌ならば帰っていただいてかまわないから、と」
エミリは考えてみた。
(そんな事も言ってたかな?)
しかし、聖女召喚され、都合のいい事を考えているばかりだったため、ちゃんと聞いていなかったのである。
エミリはやや気まずいながらも、堂々と言った。
「じゃあ、もう帰る」
それに、魔術師は言葉を失い、ややあって声を絞り出した。
「ですから、その時に説明しましたよね。まだ12時間以内なら時空も追えるのでつなぎ直す事も可能ですが、それを過ぎると、元の時空につなぐ事も、それだけの魔力を集める事も不可能だと」
その時エミリは、そう言われた事をハッキリと思い出した。思い出したが、納得できなかった。
「だって!聖女だから簡単にできると思ってたんだもん!こんなだって思ってなかったわよ!聖女って、イケメンに囲まれて逆ハーウハウハで、贅沢して、パパッと不思議な力を発揮して、王子様と結婚してめでたしめでたしだと思ってたんだもん!」
魔術師は目を丸くしてそれを聞き、頭の中で反芻し、冷たい目になってエミリに言った。
「それは子供向けの絵本のお話ですか。
聖女様は説明を受けて納得した。それで、こちらも聖女様に慣れていただくように配慮して差し上げて来ました。今更言われても困るのですよ。
もっとしっかりと訓練をして、聖女として魔を祓っていただきます」
エミリは抗議しようとしたが、誰も耳を貸す事は無かった。
皇太子達はエミリを甘やかした責任と勝手に国民を国外追放などにした責任を追及され、謹慎している。
「どうしよう。こんなはずじゃなかったのに」
エミリは与えられた部屋で、日本では結婚式の時ですら着られないような豪華なドレスを恨めし気に眺め下した。
「逃げるしかないわ。でも、どこへ……」
エミリはスマホで調べようとしたが、もちろんスマホが反応するわけもない。
「役立たず!」
スマホを放り投げて、エミリはハッとした。
「そうだ。こういう時にこそ、あの要望係じゃない」
エミリの目が、爛々と輝き出した。
ユリウスは、背中がゾクリとして、思わず震えた。
「カゼかな?まあいいや」
呟いて、教会から買って来た聖水を見る。
「水だよな」
ユリウスの手伝いとしてつけられた同僚ジーンは、同じように聖水を見ながらそう言った。
「詳しく見てみようか」
ユリウスはそう言って、魔式解析を始めた。
ジーンはユリウスの解析を見るのも、そういう事ができるというのも初耳で、目を丸くしてユリウスを食い入るように見ていた。
気付かないように、ユリウスは解析を進める。
「ああ、聖魔術というのは、こういうものだったのか……」
その呟きに、ジーンはギョッとした。
「ええ!?わかったの!?」
ユリウスはぼんやりと笑った。
「はい。でも、このままだと魔力を無駄に喰うんですよ。だから、聖魔術を使える人間は限られてたんですね。
これをもっと無駄の無いように魔式を組み直します。そうすれば、魔術師なら誰でも扱えるようになりますから、魔の払拭も簡単ですよね」
仰天したのはジーンだ。
「か、簡単!?」
「ああ、簡単は言い過ぎかな。それなりに時間と人手は必要ですよね」
反省するように言うユリウスに、
「いや、そういう事じゃなくて……まあいいか」
とジーンは説明を諦めた。
よくセルジュや課長がユリウスを「本物の天才」と言っていたが、その意味がやっとわかったのだ。
嬉々として魔式を構築し始めるユリウスを見ながら、
(天才には見えないんだけどなあ)
と苦笑した。
「勝手に召喚とか言って呼び出しておいて、危ない事をしろって、おかしいんじゃない!?」
しかし魔術師は、冷静に反論する。
「だから確認しました。召喚直後に、今から12時間以内なら帰す事もできるからと。それで、聖女として振る舞うのが嫌ならば帰っていただいてかまわないから、と」
エミリは考えてみた。
(そんな事も言ってたかな?)
しかし、聖女召喚され、都合のいい事を考えているばかりだったため、ちゃんと聞いていなかったのである。
エミリはやや気まずいながらも、堂々と言った。
「じゃあ、もう帰る」
それに、魔術師は言葉を失い、ややあって声を絞り出した。
「ですから、その時に説明しましたよね。まだ12時間以内なら時空も追えるのでつなぎ直す事も可能ですが、それを過ぎると、元の時空につなぐ事も、それだけの魔力を集める事も不可能だと」
その時エミリは、そう言われた事をハッキリと思い出した。思い出したが、納得できなかった。
「だって!聖女だから簡単にできると思ってたんだもん!こんなだって思ってなかったわよ!聖女って、イケメンに囲まれて逆ハーウハウハで、贅沢して、パパッと不思議な力を発揮して、王子様と結婚してめでたしめでたしだと思ってたんだもん!」
魔術師は目を丸くしてそれを聞き、頭の中で反芻し、冷たい目になってエミリに言った。
「それは子供向けの絵本のお話ですか。
聖女様は説明を受けて納得した。それで、こちらも聖女様に慣れていただくように配慮して差し上げて来ました。今更言われても困るのですよ。
もっとしっかりと訓練をして、聖女として魔を祓っていただきます」
エミリは抗議しようとしたが、誰も耳を貸す事は無かった。
皇太子達はエミリを甘やかした責任と勝手に国民を国外追放などにした責任を追及され、謹慎している。
「どうしよう。こんなはずじゃなかったのに」
エミリは与えられた部屋で、日本では結婚式の時ですら着られないような豪華なドレスを恨めし気に眺め下した。
「逃げるしかないわ。でも、どこへ……」
エミリはスマホで調べようとしたが、もちろんスマホが反応するわけもない。
「役立たず!」
スマホを放り投げて、エミリはハッとした。
「そうだ。こういう時にこそ、あの要望係じゃない」
エミリの目が、爛々と輝き出した。
ユリウスは、背中がゾクリとして、思わず震えた。
「カゼかな?まあいいや」
呟いて、教会から買って来た聖水を見る。
「水だよな」
ユリウスの手伝いとしてつけられた同僚ジーンは、同じように聖水を見ながらそう言った。
「詳しく見てみようか」
ユリウスはそう言って、魔式解析を始めた。
ジーンはユリウスの解析を見るのも、そういう事ができるというのも初耳で、目を丸くしてユリウスを食い入るように見ていた。
気付かないように、ユリウスは解析を進める。
「ああ、聖魔術というのは、こういうものだったのか……」
その呟きに、ジーンはギョッとした。
「ええ!?わかったの!?」
ユリウスはぼんやりと笑った。
「はい。でも、このままだと魔力を無駄に喰うんですよ。だから、聖魔術を使える人間は限られてたんですね。
これをもっと無駄の無いように魔式を組み直します。そうすれば、魔術師なら誰でも扱えるようになりますから、魔の払拭も簡単ですよね」
仰天したのはジーンだ。
「か、簡単!?」
「ああ、簡単は言い過ぎかな。それなりに時間と人手は必要ですよね」
反省するように言うユリウスに、
「いや、そういう事じゃなくて……まあいいか」
とジーンは説明を諦めた。
よくセルジュや課長がユリウスを「本物の天才」と言っていたが、その意味がやっとわかったのだ。
嬉々として魔式を構築し始めるユリウスを見ながら、
(天才には見えないんだけどなあ)
と苦笑した。
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