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ボディガード志願
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3つの学校へ向かう道は、駅前のコンビニもところが岐路となっている。
朝はここで、名残惜しそうに手を振るカップルがいたり、夕方は待ち合わせてコンビニでたむろする姿がよく見かけられる。
隣の市にある学校へ通う生徒がそこに加わると、県立高同士、けんか腰になるらしい。
帰り道にコンビニに通りかかった俺は、まさにそのもめる現場を目撃した。
しかも間に挟まれてオロオロしているのは、百山と館駒の女子だった。
「あれが彼女か。巨乳じゃないけど顔はかわいいな」
勇実がそう真面目に言った。
今日はクラブが終わると帰る時間が一緒になり、こうして帰っているのだ。
「百山のやつ、彼女と待ち合わせとかでいそいそと帰って行ったと思ったら、何してんだよ」
言いながら、どうやって助けるか考える。
「殴り込む?」
「どう考えてもこっちが負ける」
睨み合う県立のやつらは、いかにもケンカ慣れしてそうなやつらばかりが合わせて9人いた。
何をもめているのかと耳を澄ませてみれば、片方が彼女をナンパし、そこに百山が来たので百山にいちゃもんを付け出したところで、百山と彼女が逃げようとしてもう片方のグループにぶつかり、こちらにも絡まれる事になったようだ。
運の悪いやつだ。
「これはもう、警察だな」
さっさとスマホを取り出して、警察を呼ぶ。
自転車の警察官が到着すると、目に見えてそいつらは慌てだして周囲を見回した。
「あ、柊弥、殿村」
百山がホッとしたように、俺を見つけて片手を上げる。それで県立高のやつらの視線が俺に、詳しく言うならば俺のスマホを持つ手に集中した。
110番のオペレーターは、警察官が現場に到着するまで会話をして通話が切れないようにとしていたので、通報者だとばれたらしい。
「よう、百山」
勇実は片手を上げて応え、飄々とした風に近づいていく。
「余計なことしやがって」
俺は睨み付けられている。
が、中の1人が俺のことを知っていた。
「あ、こいつ、蒔島柊弥だ。全然似てない双子の、地味な方」
「そのとおりだが、あんまりだな」
言いながら、小さく嘆息して俺も近づいていく。
彼らを抑えていた警察官たちも、ちらちらとこちらを見ていたが、中の1人が言う。
「通報された方ですか」
ハイと言えば恨まれそうだが。
「はい、まあ」
すると、中の1人が張り切って俺の前で敬礼した。
「自分は大迫健太であります。釣書を送らせていただいたのですが、ご覧になっていただけたでしょうか」
俺はまじまじとその警官を見、釣書を思い出そうとしたが、思い出せなかった。
「えっと、その、まだ早いっていうか……現代にそれがどうかなって言うか……」
しどろもどろになるし、背中に冷や汗が出る。
大迫さんは笑う。
「聞いております。
選んでいただけるなら光栄でありますが、たとえそうでなくとも、柊弥様をガードする所存であります」
「が、ガード?」
「はい!万が一報復などという逆恨みをしようとしたならば、刑法の許す限りの罰則を与えるようにし、加えて、ここで外を歩けないくらいの社会的制裁を下します!指1本、傷つけさせることは許しません!」
それに、県立高のやつらは顔を引きつらせ、同僚の警察官たちは唖然とした顔をしていた。
勇実は面白そうな顔つきで見ているし、百山は目は泳がせながらも微笑みを浮かべ、彼女はどこか嬉しそうな顔つきで俺と大迫さんを見比べていた。
俺は、なんと返事するのが穏便にこの場を切り抜けられるのかと考え、どうやっても無理だと判断を下した。ごまかしようがない。
「いやあ、普通の手続きでお願いします」
「館駒の若をお守りせずにどうしますか!はっはっはっ!」
「ははは……まあ、とりあえず若と様はやめてください」
俺は一気に疲れた気分で溜息をついた。ああ、頭が痛い。
朝はここで、名残惜しそうに手を振るカップルがいたり、夕方は待ち合わせてコンビニでたむろする姿がよく見かけられる。
隣の市にある学校へ通う生徒がそこに加わると、県立高同士、けんか腰になるらしい。
帰り道にコンビニに通りかかった俺は、まさにそのもめる現場を目撃した。
しかも間に挟まれてオロオロしているのは、百山と館駒の女子だった。
「あれが彼女か。巨乳じゃないけど顔はかわいいな」
勇実がそう真面目に言った。
今日はクラブが終わると帰る時間が一緒になり、こうして帰っているのだ。
「百山のやつ、彼女と待ち合わせとかでいそいそと帰って行ったと思ったら、何してんだよ」
言いながら、どうやって助けるか考える。
「殴り込む?」
「どう考えてもこっちが負ける」
睨み合う県立のやつらは、いかにもケンカ慣れしてそうなやつらばかりが合わせて9人いた。
何をもめているのかと耳を澄ませてみれば、片方が彼女をナンパし、そこに百山が来たので百山にいちゃもんを付け出したところで、百山と彼女が逃げようとしてもう片方のグループにぶつかり、こちらにも絡まれる事になったようだ。
運の悪いやつだ。
「これはもう、警察だな」
さっさとスマホを取り出して、警察を呼ぶ。
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「よう、百山」
勇実は片手を上げて応え、飄々とした風に近づいていく。
「余計なことしやがって」
俺は睨み付けられている。
が、中の1人が俺のことを知っていた。
「あ、こいつ、蒔島柊弥だ。全然似てない双子の、地味な方」
「そのとおりだが、あんまりだな」
言いながら、小さく嘆息して俺も近づいていく。
彼らを抑えていた警察官たちも、ちらちらとこちらを見ていたが、中の1人が言う。
「通報された方ですか」
ハイと言えば恨まれそうだが。
「はい、まあ」
すると、中の1人が張り切って俺の前で敬礼した。
「自分は大迫健太であります。釣書を送らせていただいたのですが、ご覧になっていただけたでしょうか」
俺はまじまじとその警官を見、釣書を思い出そうとしたが、思い出せなかった。
「えっと、その、まだ早いっていうか……現代にそれがどうかなって言うか……」
しどろもどろになるし、背中に冷や汗が出る。
大迫さんは笑う。
「聞いております。
選んでいただけるなら光栄でありますが、たとえそうでなくとも、柊弥様をガードする所存であります」
「が、ガード?」
「はい!万が一報復などという逆恨みをしようとしたならば、刑法の許す限りの罰則を与えるようにし、加えて、ここで外を歩けないくらいの社会的制裁を下します!指1本、傷つけさせることは許しません!」
それに、県立高のやつらは顔を引きつらせ、同僚の警察官たちは唖然とした顔をしていた。
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俺は、なんと返事するのが穏便にこの場を切り抜けられるのかと考え、どうやっても無理だと判断を下した。ごまかしようがない。
「いやあ、普通の手続きでお願いします」
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