やっぱりねこになりたい

JUN

文字の大きさ
4 / 42

食堂にて

しおりを挟む
 春休みギリギリまで実家にでもいるのだろうか、生徒はあまりいない。
 建物はまだ新しいのか、全体的にきれいだ。
 401号室と書かれたドアを開けると、壁の両側に2段ベッドがあり、各々下はクローゼットと棚になっていた。そして正面には窓があり、その窓に向かって机が2つ並んでいた。
 机の上には冊子や教科書などが置かれ、寮の案内もそこにあった。クローゼットの中には制服と、体操服なのだろうか。変わった服が入っている。それとジャージ。
 そしてその前にはダンボール箱が置いてあり、右側の箱には送り主が「敷島悠理」と書いてあり、左側の箱には「鈴木 均」と書いてあった。
「ふうん。同室のやつって、鈴木 均っていうのか」
 それで、敷島悠理からのダンボール箱が置いてあった方が自分のスペースだと判断し、まずは箱を開けてみる。
 何せ、自分では荷造りした覚えもないのだ。何が入っているのか、少しドキドキした。
 ジャージ、洗面具、タオルやバスタオル、バインダーやノート、筆記具、ジーンズやシャツなどの私服と下着類、本。それとなぜか、フリルのついたヒラヒラのブラウス。
「本は、物理と化学と数学と航空工学か。どれも中学時代に気に入ってたものだな。
 それにこのジャージは中学の時のジャージだな。パジャマ代わりか?
 ジーンズとシャツとTシャツにも覚えがあるけど、このひらひらブラウス、俺のか?俺が買った物か?何かの景品で貰ったとか?」
 それ以外はほぼ間違いなく自分のものの気がした。
「どういう事だ?確かに俺が知る物と同じだ。でも、本当に同じ物なのか?同じだとしたらそれはどういうわけだ。同じに見えるだけとしても、なぜ同じに見える物をこれだけ揃える事ができた?」
 全くわからない。

 悠理は取り敢えず荷物を収納し、机の上の冊子を読んで注意事項などを把握し、そろそろ夕食だと階下に降りた。
 食堂に入ると、そこは教室が3つははいるくらい広く、そこに長テーブルとイスがズラリと並んでいる。
 しかし新学期ギリギリに来る生徒も多いのか、それとも時間的に混み合う時間帯ではないのか、そこにいたのは60人くらいだった。
 しかも全員男だ。
 そう、この学校は共学だが、男子と女子は訓練する学校の場所が違う――つまり、実質的には男子校と女子校と同じだった。
 その男子達が、一斉にお喋りをやめて悠理を凝視した。
「え?」
 悠理はたじろぎ、おかしい所があるのかと自分の服装を見下した。
 皆適当な私服やジャージで、悠理もジーンズとシャツだ。
(チェック柄はダサかったか?いや、そこのあいつのプリントTシャツよりはましだ)
 よくわからないが、見慣れない新入りという事で注目を集めたのかと考え、他の人に習って、カウンターでトレイを取り、ごはんやおかずを順番にトレイに乗せていく。
 そして、空いた席に座った。
(そう言えば、朝に栄養ドリンクを飲んだっきりで死んだんだったな。その前の晩はゼリーで、その前の昼は栄養補助食品バー、その前の朝はやっぱり栄養ドリンクだった。
 あれ?まともな食事っていつ以来だ?)
 思い出せない。そう考えると、目の前の定食風なトレイに感激してくる。
「いただきます」
 悠理は手を合わせて、箸を取った。
「肉じゃがかあ」
 食べようとした時、声がかかった。
「あれ、君。見ない顔だね。新入生かな」
 邪魔をされたと半分苛立ちながら、悠理は顔を上げた。
 そこにいたのは、派手な顔立ちの背の高い生徒と、生意気そうな表情の小柄でかわいい顔の生徒、髪の短い大人しそうな生徒の3人だった。
 無視するのもどうかと思って、一応返事をした。
「敷島悠理です。よろしくお願いします」
「きれいな名前だな。俺は西條栗栖。こっちは花園君で、こっちは田川君。3人共2年生だよ。わからない事があったら何でも聞いてくれ」
 妙にかっこをつけながら、そう言う西條に、
「よろしくお願いします」
と言って、悠理は食事に戻ろうとした。
 が、まだ西條達は立ち去らない。
「ユウリと呼んでいいかな。
 ユウリの目はとてもきれいだね」
 いいかどうか返事を待たず、西條は言って、悠理の顎に指をかけてクイッと上げさせる。
 生意気な花園と呼ばれた方が唇を噛んで悠理を睨み、田川は眉をキュッとしかめた。どこかから悲鳴のような声が上がり、そして悠理は、鳥肌がたった。
「ええっと、そうですか。それはどうも」
「一緒に向こうでどう?」
「いえ、せっかくですが」
「じゃあ、今夜は俺の部屋へおいでよ。夜通し話そうよ」
 花園と田川の顔色が変わった。
「いえ、この後入浴したら、荷物をしまってもう寝ます。最近寝不足なので」
「気が変わったらいつでもいいからね。224だから」
 そう言って西條は花園と田川を引き連れて去って行った。
 花園は、物凄い顔つきで悠理を睨んでいる。
(ああ、びっくりした)
 気を取り直して、悠理は食事を食べた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕たち、結婚することになりました

リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった! 後輩はモテモテな25歳。 俺は37歳。 笑えるBL。ラブコメディ💛 fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

ラピスラズリの福音

東雲
BL
*異世界ファンタジーBL* 特別な世界観も、特殊な設定も、壮大な何かもありません。 幼馴染みの二人が遠回りをしながら、相思相愛の果てに結ばれるお話です。 金髪碧眼美形攻め×純朴一途筋肉受け 息をするように体の大きい子受けです。 珍しく年齢制限のないお話ですが、いつもの如く己の『好き』と性癖をたんと詰め込みました!

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

サラリーマン二人、酔いどれ同伴

BL
久しぶりの飲み会! 楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。 「……え、やった?」 「やりましたね」 「あれ、俺は受け?攻め?」 「受けでしたね」 絶望する佐万里! しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ! こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。

【8話完結】帰ってきた勇者様が褒美に私を所望している件について。

キノア9g
BL
異世界召喚されたのは、 ブラック企業で心身ボロボロになった陰キャ勇者。 国王が用意した褒美は、金、地位、そして姫との結婚―― だが、彼が望んだのは「何の能力もない第三王子」だった。 顔だけ王子と蔑まれ、周囲から期待されなかったリュシアン。 過労で倒れた勇者に、ただ優しく手を伸ばしただけの彼は、 気づかぬうちに勇者の心を奪っていた。 「それでも俺は、あなたがいいんです」 だけど――勇者は彼を「姫」だと誤解していた。 切なさとすれ違い、 それでも惹かれ合う二人の、 優しくて不器用な恋の物語。 全8話。

はじまりの朝

さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。 ある出来事をきっかけに離れてしまう。 中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。 これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。 ✳『番外編〜はじまりの裏側で』  『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

処理中です...