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入校式
同室の鈴木が来たのはその日の昼過ぎ、春休み最終日だった。
中肉中背で、顔も普通。明るい普通という言葉がぴったりの生徒だ。春休み最後の日まで実家にいたのは、この学校に来たが最後、女子もいなければ遊び場もない。それどころか、悪魔に対処できるのは滅力のみなので、生徒と言えど、戦場に出る事もある。なので、ギリギリまで娑婆にいたかったのだとそう言った。
(え、戦場?生徒なのに?)
悠理は驚いたが、納得もした。滅力の発現率を考えれば、充分考えられる事だ。
そして学校案内を読むと、授業料などは無料であり、給料が出ると書いてあった。
(なるほど。学生だからと甘やかしてはくれないわけだな。勉強も全てが義務か)
悠理はそう考えて、気を引き締めた。
図書室で調べてわかったのだが、悪魔の出現は3年前からだという。最初の場所はイタリア。そしてほぼ同じ頃に滅力が確認され、一定の年齢の子供にしか発現しない事がロシアや中国で確認されたのがそれから数か月後。
それを受けて海外では、徴兵制度を使って兵力として子供を集めた国もあれば、志願させて集めた国もある。
日本では、志願兵はほぼ集まらず、未成年者を戦わせることや、戦いそのものについて反対する議員や国民が政府を批判していたが、悪魔が日本にも現れて大きな被害を出した事で、テストを義務付けし、滅力が確認された子は強制的に戦わせるという現在の状態になった。それが2年前だ。
そして2年制の学校が各地に6校できたのは、去年。つまり、今の2年生が1期生で、悠理達は2期生だ。
(施設がやたらと新しくてきれいなわけだな)
悠理はそう納得した。
春休み最終日に寮に戻って来る学生は多いらしく、この日寮は一気に人が増え、そして食堂でも浴場でも、昨日と同じような騒ぎが繰り返されたのだった。
そして、講堂で入校式が行われ、テレビや新聞などの取材陣も来たので、新入生の何割かは舞い上がっていた。
「す、すごい報道陣の数だな、悠理」
均――鈴木という名の生徒が13人もいて、すぐに綽名や下の名で呼び合う事になった。悠理は、西條がしつこく悠理、悠理と呼びかけるのがたくさんの生徒に聞かれたせいで、皆が悠理と呼ぶ事になった――は、カメラを意識しながらこそっと言った。
「たかだか中学を出たばかりのやつに戦えと強制するんだからな。それもまだ、2期生だ。注目は集まるんだろうな。
あとは、学生から戦死者が出た時かな」
悠理も小声で返したが、周囲の数人には聞こえ、ギョッと体を強張らせた。
「そうならないように教えるのが俺達だ。
しっかり覚えないと、ただの赤点じゃ済まんからな。死にたくなければ死ぬ気で授業を受けるんだな」
服部は1年の生徒について講堂の1年の席に着きながらそう言った。
首相と防衛大臣からの挨拶は、ビデオだった。同じような学校が全国で6つあるので、これで統一させているのだ。
それから校長の挨拶があり、生徒会長である沖川の挨拶があり、新入生1人1人に校章を手渡され、それで入校式は終わった。
個人へのインタビューは禁止らしいので、「抱負は」「覚悟はできていますか」などという質問をされる事もなく講堂をクラスごとに出て教室へ行く。
そして出席番号順に席についた。
悠理は3番なので、廊下側の3番目だ。後ろは均だった。
教室内を見回して、服部が口を開く。
「これでお前達は、社会人だ。給料も支払われるが、その分責任も付いて回る。悪魔がこの学区内に出た時には出動することもあるし、それでケガをする事もある。嫌だと言っても、それがルールだ。
高校は義務教育じゃないが、まだ甘えてもいられただろう。社会から大目に見てもらえる場面もあるだろう。
お前らに、それはない。今日から、戦って当たり前、それで死んでも仕事の内。
いいか。学校と名がついていても、ここは中学みたいな所じゃない。死にたくなければ、考えろ。覚えろ。お前らが死なないように鍛えるのが俺達の仕事だが、本人にその気が無ければどうにもできんからな。
何か言いたい事はあるか」
いきなり服部が教壇でそんな事を真顔で言ったので、クラス内はシンと静まり返っていたが、中の1人がはい、と手を挙げた。
「別に来たくて来たわけじゃねえけど」
それに、生徒がざわつき、服部は真っすぐにその生徒を見た。
「それがどうした。それが法律だし、これが現実だ。グダグダ文句を言っても、悪魔は聴いてはくれんぞ。
人生は平等ではない。それはもうお前達にはわかっているだろう?
ほかに何かあるか。
無いならこれでオリエンテーションは終わる」
服部は全員が提出した履歴書と中学からの申し送り書をまとめると、さっさと教室を出て行った。そしてそれを、生徒達は唖然としたように見送った。
中肉中背で、顔も普通。明るい普通という言葉がぴったりの生徒だ。春休み最後の日まで実家にいたのは、この学校に来たが最後、女子もいなければ遊び場もない。それどころか、悪魔に対処できるのは滅力のみなので、生徒と言えど、戦場に出る事もある。なので、ギリギリまで娑婆にいたかったのだとそう言った。
(え、戦場?生徒なのに?)
悠理は驚いたが、納得もした。滅力の発現率を考えれば、充分考えられる事だ。
そして学校案内を読むと、授業料などは無料であり、給料が出ると書いてあった。
(なるほど。学生だからと甘やかしてはくれないわけだな。勉強も全てが義務か)
悠理はそう考えて、気を引き締めた。
図書室で調べてわかったのだが、悪魔の出現は3年前からだという。最初の場所はイタリア。そしてほぼ同じ頃に滅力が確認され、一定の年齢の子供にしか発現しない事がロシアや中国で確認されたのがそれから数か月後。
それを受けて海外では、徴兵制度を使って兵力として子供を集めた国もあれば、志願させて集めた国もある。
日本では、志願兵はほぼ集まらず、未成年者を戦わせることや、戦いそのものについて反対する議員や国民が政府を批判していたが、悪魔が日本にも現れて大きな被害を出した事で、テストを義務付けし、滅力が確認された子は強制的に戦わせるという現在の状態になった。それが2年前だ。
そして2年制の学校が各地に6校できたのは、去年。つまり、今の2年生が1期生で、悠理達は2期生だ。
(施設がやたらと新しくてきれいなわけだな)
悠理はそう納得した。
春休み最終日に寮に戻って来る学生は多いらしく、この日寮は一気に人が増え、そして食堂でも浴場でも、昨日と同じような騒ぎが繰り返されたのだった。
そして、講堂で入校式が行われ、テレビや新聞などの取材陣も来たので、新入生の何割かは舞い上がっていた。
「す、すごい報道陣の数だな、悠理」
均――鈴木という名の生徒が13人もいて、すぐに綽名や下の名で呼び合う事になった。悠理は、西條がしつこく悠理、悠理と呼びかけるのがたくさんの生徒に聞かれたせいで、皆が悠理と呼ぶ事になった――は、カメラを意識しながらこそっと言った。
「たかだか中学を出たばかりのやつに戦えと強制するんだからな。それもまだ、2期生だ。注目は集まるんだろうな。
あとは、学生から戦死者が出た時かな」
悠理も小声で返したが、周囲の数人には聞こえ、ギョッと体を強張らせた。
「そうならないように教えるのが俺達だ。
しっかり覚えないと、ただの赤点じゃ済まんからな。死にたくなければ死ぬ気で授業を受けるんだな」
服部は1年の生徒について講堂の1年の席に着きながらそう言った。
首相と防衛大臣からの挨拶は、ビデオだった。同じような学校が全国で6つあるので、これで統一させているのだ。
それから校長の挨拶があり、生徒会長である沖川の挨拶があり、新入生1人1人に校章を手渡され、それで入校式は終わった。
個人へのインタビューは禁止らしいので、「抱負は」「覚悟はできていますか」などという質問をされる事もなく講堂をクラスごとに出て教室へ行く。
そして出席番号順に席についた。
悠理は3番なので、廊下側の3番目だ。後ろは均だった。
教室内を見回して、服部が口を開く。
「これでお前達は、社会人だ。給料も支払われるが、その分責任も付いて回る。悪魔がこの学区内に出た時には出動することもあるし、それでケガをする事もある。嫌だと言っても、それがルールだ。
高校は義務教育じゃないが、まだ甘えてもいられただろう。社会から大目に見てもらえる場面もあるだろう。
お前らに、それはない。今日から、戦って当たり前、それで死んでも仕事の内。
いいか。学校と名がついていても、ここは中学みたいな所じゃない。死にたくなければ、考えろ。覚えろ。お前らが死なないように鍛えるのが俺達の仕事だが、本人にその気が無ければどうにもできんからな。
何か言いたい事はあるか」
いきなり服部が教壇でそんな事を真顔で言ったので、クラス内はシンと静まり返っていたが、中の1人がはい、と手を挙げた。
「別に来たくて来たわけじゃねえけど」
それに、生徒がざわつき、服部は真っすぐにその生徒を見た。
「それがどうした。それが法律だし、これが現実だ。グダグダ文句を言っても、悪魔は聴いてはくれんぞ。
人生は平等ではない。それはもうお前達にはわかっているだろう?
ほかに何かあるか。
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