やっぱりねこになりたい

JUN

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新生活

 生徒達は、服部の言動に衝撃を受けた者が多かった。
 結果、単純に「給料が入る」とか「親の目から離れて解放された気分」という浮かれた気分は吹き飛び、授業態度が真面目だというのが、どの教科の教師も抱く感想だ。
「先生、悪魔について質問なのですが、よろしいでしょうか」
 教師を捕まえて質問するのは悠理だ。悠理の目は好奇心に爛々と輝いているが、教師の方は何を聞かれるのかと戦々恐々としている。
「何かな」
「悪魔の標本や、遺伝子情報の解析などは行われていないんでしょうか」
「ああ、それは、そう、だな。悪魔の死体は時間経過と共に消えてしまうからな」
「では、死体周辺の空気の解析は行っていますか。死体が消えるという事は、気化したと考えるのが普通です」
「どうだろう?ううん」
「あと、地球の陸上生物と同じように空気を吸って呼吸しているのですか。排泄、交尾、睡眠などといった行動の目撃例はないのですか」
「……敷島、詳しい事はあまりわかっていないと思う。わかっていて、内容を公開できる事は図書室で閲覧できるから。ただし、情報を外に持ち出したり流したりすることは禁じられている」
「わかりました!図書室で調べて来ます!」
 悠理は嬉しそうな顔をして、図書室へと走って行った。
 それを見送った教師は、嘆息し、職員室へ帰ると同僚達に愚痴った。
「いやあ、1年は、個性的な子が多いですね」
 それに、服部がウッと詰まった。
「黒岩ですか、鬼束ですか、それとも敷島ですか」
 黒岩武彦は無口な生徒だ。成績もよく、スポーツもでき、特に剣道では地元では知られた存在で、何でも優秀な神童と呼ばれていたらしい。
 だが、そのせいで同級生から浮く事になり、いつの間にか個人主義になって、時には他人を見下すように取られて諍いを生む事があった。
 しかしこの神童黒岩も、ここへ来ると、1番から転落した。
 スポーツで1番なのは鬼束春美だ。特に剣道では小学生の時から中学卒業まで、ずっとチャンピオンだったほどの腕前で、師範クラスだ。
 座学で1番なのは悠理だ。どの教科も涼しい顔で優秀な成績をあげている。
 それと悠理は、西條が毎日モーションをかけてくること、往々にして沖川がそれに苦言を呈する事で目立ってしまっていた。
 悠理が前の人生で学生の時は、寮ではなかったし、西條のような生徒はいなかった。それで大人しくしていれば、目立つ事無く生活できていたのだが、ここではそうもいかなかったのだ。
 これまで目立つ生徒と言えば、沖川と西條だった。
 沖川は成績優秀で真面目でクールなイケメンだ。
 片や西條は、成績は沖川には及ばずとも優秀で、イケメンの代名詞であった元アイドルの父親、美人アイドル歌手であった母親という、両親の血を受け継いだ華やかな雰囲気のイケメンだ。滅力さえ出なければ、今頃は芸能界デビューしていただろう。
 この2人が校内の人気を2分し、勝手に取り巻きが張り合い、騒いでいた。
 そこにこの春から悠理も加わり、どうもややこしいことになっているようだと、教員達も警戒している。
「敷島ですよ。悪魔について、色々と質問を受けました。正直、こちらのわからない専門的な事を混ぜて来る事があるので、質問されると、ドキッとします」
 言う教師に、服部は担任として、一応謝っておいた。
「すみません」
「いえ。図書室に行けば資料があると教えましたから、今後は図書室に入り浸るでしょう」
 教師はそう言って苦笑した。
(ちゃんと寮に帰るだろうな)
 服部はふと、そう危惧を抱いた。

 服部の危惧は当たっていた。翌朝図書室からふらりと現れた悠理に、
「まさか、徹夜か」
と訊くと、悠理は清々しく笑い、
「3徹して半人前、黄色い太陽を拝んで一人前ですから。大丈夫」
と言った。
「はあ!?わからん!いいから徹夜はなし!テスト前でもあるまいし!」
 服部は悠理を教室へ追い立てながら、
「変な奴が入校して来たもんだ」
と溜め息をついた。



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