やっぱりねこになりたい

JUN

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終わりと始まり

 放課後、そっと呼び出された黒岩だったが、花園に言われた事は、言わなかった。
「組み立てとメンテナンスが大事だと言われただけです」
 そう言い張った。
 階段で待ち伏せされた時の事も、
「小テストの出来を心配してくれたようで」
と涼しい顔で言う。
 これには沖川も、放免するしかなかった。
「別の機会に何かする気か?そうも見えなかったが」
 沖川は嘆息した。

 西條は花園と2人で、人気のない空き教室に来た。
 花園は、以前ならば驚き、舞い上がるほどに嬉しいシチュエーションだったが、今は警戒心が入り混じっていた。
「何ですか、来栖君」
 様を付けるのはやめてくれと西條が言うので、様は禁止とファンクラブで決定している。
「人を使ってまで、悠理に嫌がらせをするのはやめないか」
 西條は悲しそうな表情で言った。
 それに花園は、心も、笑顔も軋むのを感じた。
「何の事です?まあ、ボクが敷島を嫌いなのは隠せるもんじゃないですね。
 来栖君。敷島が好きなんですか」
 西條は少し笑った。
「そうだな」
 花園は拳を限界まで握りしめた。
「何でですか。そりゃあ、きれいな顔はしてると認めますけど」
 西條は、楽しそうに笑った。
「まあな。顔だけ見ればどこに出しても恥ずかしくない美少女だよな。
 でも中身は、変に若者離れしてたり、真面目な顔で変な事を言う事もあるし、人に囲まれるのに居心地悪そうにしてたり、おかしなやつだよ。見ていて飽きない。
 それに、いいやつだよな」
「……」
「でも、変わりたいと思ったのは俺で、悠理はただのきっかけだ。俺はずっと、西條来栖を演じて来たんだよ。イケメンの代名詞扱いされる元アイドルの父親と元アイドル歌手の母親の子、西條来栖。それに疲れてたし、ここに来た以上必要がないのに、いつやめればいいかわからなかったから、惰性でな。
 やめるきっかけに、俺はもうやめたがっているって事に、気付かせてくれたんだ。それだけだ」
 食いしばった唇が震え、膝まで震え出した事に花園は気付いた。
「友達に、なれないかな、花園」
 花園の視界がにじんだ。
「ずるいよ、来栖君」
 声が震え、笑顔が歪むのを花園は自覚する。
「そんなの、嫌って言えないのわかってるのに」
 西條は花園が泣きながら笑おうとするのに、そっと肩に手を置いた。

 沖川は西條から、
「もうしないと思う」
とだけ報告を受けた。
 前回も今回も花園がそそのかしたのは事実だ。しかし、証拠もないし、それで花園を罰する事はできない。今後はもうしないと約束する事で、よしとするしかないと沖川は思った。
「西條もファンクラブを解散させたし、これで表面上はいくらか静かになるか」
 そう呟いた時、寮の窓の下から声がした。
「敷島!お前がこの危険物の制作者か!誰だ、こいつに火薬で花火を作らせたのは!?」
「痛いって、痛い!服部!」
「せ・ん・せ・い」
「服部先生!
 だって、キャンプファイヤーの後は花火だろ?買いに行けないから、ここで調達しないといけないじゃん!誰かできないかなあって思って悠理に声かけたら、面白そうっていうから」
「アホか!!キャンプはキャンプでも、軍が言うのは駐屯地!キャンプ違いだ!菓子もジュースもゲームも禁止!フォークダンスも肝試しもギターで歌うのも花火大会も無し!」
「ええーっ」
「ええーっじゃない!!」
 今度行われる課外授業の件で、1年生達が服部に叱られていた。
 沖川は苦笑を浮かべ、
「静かにはならないかもな」
と呟いた。


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