やっぱりねこになりたい

JUN

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唐揚げ

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 アナウンサーの声も、観客の悲鳴のような声も、耳を素通りして行った。
 テロップの方が、しっかりと目に焼き付いて、衝撃だった。
 校歌の前奏が始まったところで、均がテレビを消した。
「ああ……残念だったな、鈴木」
 原田がそう言うが、全員、ギクシャクしていた。
「ああ、はい……でも、テロップに驚いて……」
 均が言い、そして硬い声で続ける。
「でも、そうですよね。ここはまだ悪魔がでていないし、これまでは生徒に戦死者は出ていなかったけど、そりゃあ、あり得ますよね」
 服部と悠理は、硬く強張ったような表情で唇を引き結んでいる。
「そうならないように、俺達は精一杯教える。お前達も、精一杯自分のものにしてくれ」
 原田がそう言い、悠理と均は服部の教官室を出た。

 そのニュースは、日本中に衝撃をもたらした。
 危ないのはわかっていた。それでも、子供に悪魔と戦わせるしか方法はない。死んだ事に、マスコミや市民団体が政府や防衛省、各地の特殊技能訓練校を取り囲む様子が放送された。しかし、子供を使わないなら悪魔に対抗する術はない。日本人全員で死ぬのかと言われれば、抗議は下火になって行く。
 この学校の生徒にも、そのニュースは重く受け止められた。
 この学校は島なので、取り囲まれる事は無い。しかし、外出できないから知らないだけで、港には抗議団体が来ていたと教師は知っている。
「俺達だって、死ぬかも知れないんだな」
 食堂は、お通夜の会場のようだった。特に2年生は、これから眷属との戦いではあるが、実戦に出て行くのだ。他人事ではない。
「まあ、一般人でも、襲われていつ死ぬかわからないご時世だし?」
 1人が明るくそう言うと、
「確率も危険度も違うだろ」
とすぐに言い返される。
「い、嫌だな。死にたくない。行かないといけないのかな」
「そりゃあ、ダメに決まってるだろ」
 悠理も均達と夕食のトレイを前にしていたが、食欲がわかないでいた。
(何か、手はないのか?ゼルカの特性。前世でわかってた事でこっちではわかっていない事はないか。使える手はないのか。
 ゼルカをいっそ生で叩きつける?
 だめだ。人への被害が大きすぎる)
 大人気の唐揚げが冷めて行く。
「お前ら、何を言ってるんだ?当たり前の事じゃないか」
 沖川がそう言って、その声は食堂にいた生徒ら全員の注目を集めた。
 沖川は落ち着いてトレイを手にテーブルに着くと、
「そのために俺達はこうしてここで訓練を受けている。給与も、訓練や生活にかかる費用も、国民から集めた税金だ。悪魔を倒し、国民を守るために、俺達はその恩恵を受け、ここで訓練を受けているだろう」
そう言って、普通通りに箸を取った。
 シンと食堂の中が静まり返る。
 それに、西條の明るい声が続いた。
「お、美味そう。今日は唐揚げか。
 戦う術も、生き残るための術も、俺達は教わっている。死にに行くわけじゃなし。死なずに戻れば、また美味い物も食える。その為には、生きて帰らないとな。
 せいぜい、今教わっている事を忘れないように、しっかりと身につけないとな」
 言って、唐揚げにかぶりついた。
「うめえ。けど、熱い」
「かじりつくからだろ」
 沖川は言いながら、自分も唐揚げにかぶりついた。
 それを見ていた生徒達は、1人、また1人と、唐揚げにかぶりついて行く。
「うめえ!」
「くそ、冷えたぜ!」
 明るい声がそこここで上がる。
 均も唐揚げにかぶりつき、
「ああ、美味い!悠理も、ほら」
と言う。
 悠理も唐揚げにかぶりついた。
「うん、美味しいな!ああ、ビール飲みたい」
 思わず言ったが、それを冗談と取った周囲が湧く。
「お前、大物になるぜ!」
「くそ!いつかみんなで、唐揚げでビール飲もうぜ!」
 食堂の外で、いつ入って行こうか、何と言って声をかけようかとしていた教師達は、ホッとしたような顔をしたり、涙で目をしょぼしょぼとさせたりしていた。
「本当に、沖川と西條は頼りになる」
「敷島も、大物になるな。何か実感がこもってたけど」
 原田がボソリと言うと、
「問題児だろう、今の所は」
と服部が言い、誰かがプッと吹き出した。



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