やっぱりねこになりたい

JUN

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夏休みの計画

 その後も眷属の出現の度に2年生は出て行ったが、2年生も1年生も、次第にそれに慣れていった。
 小さなケガはあるものの、大きなケガがないのが幸いだが、よその学校では、戦死者と重傷者が出ている。
 そんなこの学校にも、夏休みが近付いていた。
「夏休みか」
 食堂でカツカレーライスを食べながら、悠理達はそんな話をしていた。
「夏休みと言っても、2年生は順番で数日ずつになるし、1年生も、40日とはいかないらしいよ」
 均がカツを口に放り込んで言う。
 悠理は、
「夏休みの宿題とかもあるのかな?自由研究とか?」
と訊く。
 そんな悠理の隣に、服部が座った。
「喜べ。プリントや問題集を出してやるから」
 ニヤリとして言うのに、同じテーブルにいた生徒達が、
「喜べないぃ」
「鬼かぁ」
とガックリとした。
「ホームルームで詳しくは説明するがな。1年生は実家に帰る事ができそうだ。とは言え、どこに行き、どこに泊まるのか、いつ帰るのか。きちんと届けを出してからになるぞ。
 勿論、羽目を外して繁華街で補導なんて事になったら……想像は付くよなあ?」
 生徒達は一斉に頷いた。
「はい!俺は海に行って、美人のお姉さんと、と、友達になります!」
「予定か?叶うといいな」
 服部は冷笑しながらカツを口に放り込んだ。
「俺は師匠と滝行に行くぜ!必殺技を、是非!身につけて来る!」
 鬼束がそんな事を熱く宣言し、手を挙げたものだから、カレーが飛んで大ブーイングが起こる。
「まあ、何でもいいけど、行儀よくしとけよ。いいな」
 服部は言って、素早く空にしたトレイを持って立ち上がった。
 それを何となく見ていた西條は、
「服部って、あんなだったっけ?生徒が質問とかしても何か面倒臭そうにしてたと思うんだけど」
と呟いた。
「最近ですよ、特にああ、自分から話しかけるのは。担任って自覚ができたんですかね」
 元取り巻きの1人が答える。
「でも、主に悠理とか黒岩とかがいる時が多いみたいな?」
「ふうん」
 西條はそう相槌を打って、少し考え込んだ。

 沖川は西條に腕を掴んで、空き教室に連れ込まれた。
「何だ」
「生徒会長なら、色々と俺達の知らない噂の真相も知ってるかと思ってな」
 西條は沖川を壁に押し付けるようにして、小声で言った。
 沖川は眉をひそめ、
「……まあ、いいか。何が聞きたい。というか、その前に、暑い。離れろ」
と文句を言う。
「あ、悪い。
 服部の事だ。前の学校で生徒と不適切な関係になってここに異動して来たって噂は、本当か」
 西條が真剣な顔で沖川に訊いて、答えを待つ。
「さあ、知らん。でも、そういう事が本当にあったなら、普通なら懲戒免職だろ。元々は自衛官で、異動で教師をしてるんだから、それが本当なら、原隊に戻されるんじゃないか?」
 沖川が冷静に言うと、西條は考え込むようにした。
「まあ、そうだよなあ」
「何か気になる事でもあったのか」
「最近服部が、特に悠理とか黒岩によく自分から話しかけてるという話になってな。ちょっと」
 沖川はフンとせせら笑った。
「誰もが皆、男子校に来たからといって、同性愛に走るわけじゃない。現にこの学校でも、それは少数派だ。お前の周囲に固まってるきらいはあるがな」
「まあ、それはわかってるんだけどな。何か、気になるんだよなあ」
 2人はやや考えたが、沖川の腹が鳴って中断した。
「まあ、俺もそれとなく気を付けておこう」
「おう。悪かったな、メシの前に」
 そう言って空き教室を出て、二手に分かれて歩き出した。
 その後、それを見かけた生徒が、「まさかのカップル成立?」と噂を広げたのは、また別の話である。

 服部は外でタバコを吸っていたが、背後から近付いて来た気配に目をやった。
「原田か」
 原田は服部の隣に来ると、自分もタバコを取り出し、服部のタバコから火を移し、大きく煙を吐いた。
「もうすぐ夏休みだな」
「そうだな」
「墓参りに行くのか」
「……いや。忙しいしな」
「忙しいか。
 最近、沖川や敷島や黒岩によく話しかけてるな」
「教師だからな。メンタルに気を付けてやるのも仕事の内だろう」
「気を付け方が心配だって言ってんだろ」
 原田がそう言って鋭い目を向けると、服部はうっすらと笑って煙を吹き上げた。
「いくらきれいな顔してても男に勃つか」
(だから、夢香だと思ってりゃあ、何とかなるだろ)
 服部はそう心の中だけで言い、
「じゃあな」
と歩き出した。



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