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次の日常
薬品の開発は各国で急がれ、その間にも、出撃は繰り返されたし、学兵に死傷者は出た。
それでも、世界中で滅力の発現した子供は集められ、戦場へと送り出される。
薬品の開発と同時に、悠理の仮説についても調べられた。
あの蠢くものは彗星から移って来た生物で、地球の生物に寄生していた。そしてそれがヒトならば胸腺に侵入した時、それを異物として排除できる者は普通にそのまま生活し、拒絶反応を起こした者が滅力を発現させる。
動物の場合は、排除できるとそのままだが、拒絶反応を起こしたものが眷属や悪魔になるらしい。
そして、眷属をそのまま放置して観察すると、やがて寄生した動物の細胞を食いつくし、自滅し、消えて行く事がわかった。
女神が説明した内容に誤りはなかったが、女神云々と言えない悠理は、その結論が出てほっとした。
それでも気が咎め、沖川に前世の事と腐女神との会話を白状した。
「だから本当は、俺は30歳なんだよ」
恐る恐る告白する悠理に、沖川は、
「俺の事をお人好しと言えないじゃないか」
と言って、笑った。そして、
「実は俺も秘密がある。俺、悠理が好きなんだ」
と言った。
なので悠理も、そわそわと落ち着きなく目を泳がせてから、もう一つの秘密を打ち明ける事にした。
「実は、俺も沖川さんが、その、好き、らしい。
いや、最初はどうかわからなかったんだよ。俺は物凄く年上だし、今まで男を好きになった事は無いし、吊り橋効果的な誤解かとも思ったし。
でも、色々と考察した結果、俺は沖川さんが好きなのだという結論に至った」
言い終わるとヤケクソのように胸を張る悠理に、目を丸くして聞いていた沖川は、
「悠理らしい」
と吹き出した後、そっと近付き、
「良かった。
俺も年より大人びてるとか言われるし、悠理はいつも子供みたいに好奇心に突き動かされているし、大丈夫。丁度釣り合ってる」
と囁くようにして言い、唇を寄せた。
と思ったら、何か熱くて柔らかいものが口腔内に侵入してくる。舌だという事は1拍置いて気付いたが、少々焦った。事実と認めたとはいえ、未知の行為だ。おまけに、自分の方が中身は年上だというのに、全くこちら方面についての経験値がないということに、今更ながら愕然とし、頭が真っ白になった。
そうしているうちに、いつの間にかシャツのボタンが全開になっていた。
「あの、な、沖川。予習してない──」
「……相変わらず突飛な事を……」
沖川はそう言って、いつか保健室で体重を預けて来たように、悠理を押し倒していく。
しかしあの時とは違い、指が、唇が這わされる。
皮膚が一気に、敏感になったような気がする。
恥ずかしいだの、これからどうなるんだろうだの、考えていられたのもその辺りまでで、座薬か大腸がん検診ででもない限り何も入れないところに指が入り込んで来た事で考えがまとまらなくなった。
ただ、これでいいと感じた。
そして沖川達が卒業して数か月で薬品は完成し、順次使用される事になって、国立特殊技能訓練校 は4期生の募集がされない事になった。
悠理達が卒業になって1年後には、悪魔や眷属の発生も稀になっていった。
日本の滅力を持つ特殊隊員が除隊となったのは、悠理が20歳の時だった。
「悠理、栄養ドリンクは食事じゃない」
沖川が悠理の顔を覗き込み、目の下の隈を指でなぞって言う。
悠理は大学に入ったあと、元々していた宇宙探査の仕事に就いていた。沖川は大学に入ってから、航空機のエンジニアになった。そして職場は同じ宇宙開発事業団で、マンションで同居している。
何の事は無い。傍目には、寮にいたのと変わらないような生活をしていた。
「うん。そうなんだけどね。つい、忙しくて。
おかしいな。猫のような人生はどこへ行ったんだろう」
悠理は首を傾けた。
沖川は小さく笑い、
「悠理が猫みたいなやつだしな」
と言った。
宇宙探査船を打ち上げるために、連日忙しく仕事をする日々だ。それは前世と同じ生活である。
ただ、前世ではこの探査でゼルカを発見したのだが、ゼルカは既に発見されている。
何が見付かるか、どうなるか、ここから先のガイドラインはない。
悠理は、ウキウキするのが止められなかった。
「ああ、楽しみだなあ。人が移住できる惑星とか、高い文明を持った生命体とか、見付かればいいのになあ。
そう言えば和臣、この前送られて来たデータ、どう思う?あれって、高度な文明の跡に見えないか?
あ、1周前のデータと比べてみよう」
「そうやってどんどん仕事が増えるんだな。うん。よくわかった」
沖川が笑いをこらえるように言って、悠理は、しまったという顔をする。
「ま、それも平和になったって事だな」
沖川は言って、楽し気に笑う。
「ああ。でも、やっぱりねこになりたい」
悠理はそう言って天井を見上げ、沖川はそんな悠理に、軽く口付けた。
それでも、世界中で滅力の発現した子供は集められ、戦場へと送り出される。
薬品の開発と同時に、悠理の仮説についても調べられた。
あの蠢くものは彗星から移って来た生物で、地球の生物に寄生していた。そしてそれがヒトならば胸腺に侵入した時、それを異物として排除できる者は普通にそのまま生活し、拒絶反応を起こした者が滅力を発現させる。
動物の場合は、排除できるとそのままだが、拒絶反応を起こしたものが眷属や悪魔になるらしい。
そして、眷属をそのまま放置して観察すると、やがて寄生した動物の細胞を食いつくし、自滅し、消えて行く事がわかった。
女神が説明した内容に誤りはなかったが、女神云々と言えない悠理は、その結論が出てほっとした。
それでも気が咎め、沖川に前世の事と腐女神との会話を白状した。
「だから本当は、俺は30歳なんだよ」
恐る恐る告白する悠理に、沖川は、
「俺の事をお人好しと言えないじゃないか」
と言って、笑った。そして、
「実は俺も秘密がある。俺、悠理が好きなんだ」
と言った。
なので悠理も、そわそわと落ち着きなく目を泳がせてから、もう一つの秘密を打ち明ける事にした。
「実は、俺も沖川さんが、その、好き、らしい。
いや、最初はどうかわからなかったんだよ。俺は物凄く年上だし、今まで男を好きになった事は無いし、吊り橋効果的な誤解かとも思ったし。
でも、色々と考察した結果、俺は沖川さんが好きなのだという結論に至った」
言い終わるとヤケクソのように胸を張る悠理に、目を丸くして聞いていた沖川は、
「悠理らしい」
と吹き出した後、そっと近付き、
「良かった。
俺も年より大人びてるとか言われるし、悠理はいつも子供みたいに好奇心に突き動かされているし、大丈夫。丁度釣り合ってる」
と囁くようにして言い、唇を寄せた。
と思ったら、何か熱くて柔らかいものが口腔内に侵入してくる。舌だという事は1拍置いて気付いたが、少々焦った。事実と認めたとはいえ、未知の行為だ。おまけに、自分の方が中身は年上だというのに、全くこちら方面についての経験値がないということに、今更ながら愕然とし、頭が真っ白になった。
そうしているうちに、いつの間にかシャツのボタンが全開になっていた。
「あの、な、沖川。予習してない──」
「……相変わらず突飛な事を……」
沖川はそう言って、いつか保健室で体重を預けて来たように、悠理を押し倒していく。
しかしあの時とは違い、指が、唇が這わされる。
皮膚が一気に、敏感になったような気がする。
恥ずかしいだの、これからどうなるんだろうだの、考えていられたのもその辺りまでで、座薬か大腸がん検診ででもない限り何も入れないところに指が入り込んで来た事で考えがまとまらなくなった。
ただ、これでいいと感じた。
そして沖川達が卒業して数か月で薬品は完成し、順次使用される事になって、国立特殊技能訓練校 は4期生の募集がされない事になった。
悠理達が卒業になって1年後には、悪魔や眷属の発生も稀になっていった。
日本の滅力を持つ特殊隊員が除隊となったのは、悠理が20歳の時だった。
「悠理、栄養ドリンクは食事じゃない」
沖川が悠理の顔を覗き込み、目の下の隈を指でなぞって言う。
悠理は大学に入ったあと、元々していた宇宙探査の仕事に就いていた。沖川は大学に入ってから、航空機のエンジニアになった。そして職場は同じ宇宙開発事業団で、マンションで同居している。
何の事は無い。傍目には、寮にいたのと変わらないような生活をしていた。
「うん。そうなんだけどね。つい、忙しくて。
おかしいな。猫のような人生はどこへ行ったんだろう」
悠理は首を傾けた。
沖川は小さく笑い、
「悠理が猫みたいなやつだしな」
と言った。
宇宙探査船を打ち上げるために、連日忙しく仕事をする日々だ。それは前世と同じ生活である。
ただ、前世ではこの探査でゼルカを発見したのだが、ゼルカは既に発見されている。
何が見付かるか、どうなるか、ここから先のガイドラインはない。
悠理は、ウキウキするのが止められなかった。
「ああ、楽しみだなあ。人が移住できる惑星とか、高い文明を持った生命体とか、見付かればいいのになあ。
そう言えば和臣、この前送られて来たデータ、どう思う?あれって、高度な文明の跡に見えないか?
あ、1周前のデータと比べてみよう」
「そうやってどんどん仕事が増えるんだな。うん。よくわかった」
沖川が笑いをこらえるように言って、悠理は、しまったという顔をする。
「ま、それも平和になったって事だな」
沖川は言って、楽し気に笑う。
「ああ。でも、やっぱりねこになりたい」
悠理はそう言って天井を見上げ、沖川はそんな悠理に、軽く口付けた。
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