青い石

JUN

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夜中の殺意

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 目が覚め、そのままの姿勢でスレイは目だけを動かした。まだ暗く、辺りはしんと静まり返っているし、尿意があるわけでもない。
 何だろうかと考え、すぐに、それに気付いた。
(視線を感じる?)
 だが、隣で寝ているセレとレミ以外は誰もいない。動物だろうか。
 起きようかと考えた時、寝返りを打ったセイと目が合った。
 セイもやはり、何かを感じて目を覚ましたらしい。いくら廃墟に泊まって安心していても、気は抜き切っていないのだ。
 スレイとセイが起き上がると、レミも目を覚ましていたらしく起き上がった。
「何?2階に入り込んでた動物かな?」
 何となく囁くような声で言い、廊下に出た。
「まさかお化けなんじゃ。ここで無念の死を遂げた貴族令嬢の怨念とか」
「いや、ここで貴族令嬢が死んだかどうかもわからないよ」
「ヤバい動物の方がアリじゃねえの」
「セレ、ヤバイ動物って何?」
「毒のあるやつとか、熊とか――」
「嫌ああ。
 熊って美味しいの?」
「……レミは強いよ」
 どこかへっぴり腰になりながら、武器を片手に食堂へ行く。
 視線は相変わらず付きまとっている。
 屋根はあるが窓のガラスがないので、月明かりが差し込んで来る。その光を頼りに、各々、キョロキョロとして異変を探す。
 と、スレイが短く言った。
「上だ!」
 セイとレミが、階段の上へ目をやる。
「え!?」
「何もいねえぞ!?」
「違う!天井!」
 セレとレミは慌てて目を天井に向けた。
 蜘蛛の巣と埃にまみれた天井に、何か大きなものがくっついていた。
「お化け!?」
 それがわずかに動く。
「いや、人?」
 天井に貼り付くようにしているその黒い影をよく見ると、顔がある。目は見開かれ、口は薄く開いて、やけに長い舌が見えた。そして何より、やたらと長い体をしている。
 じり、と下がると、体をくねらせるようにしてそれも数十センチ近付いた。
 それで見えた。下半身が、トカゲのようになっているのを。
「あ――!」
 実験に使われた被験者の一人だと気付き、それが尾を振ってこちらを攻撃して来た時に、レミは彼女を思い出した。
「リリ!」
 尾を避けて3人は飛び退った。
 尾が当たったイスは粉々になり、3人は、その破壊力に驚いた。
「リリ!わかる?レミだよ!スレイとセイ!ね、一緒に逃げよう!?」
 返事は、再びの尾による攻撃だった。
「うわっ!」
 避けるが、リリは敵でしかないようだった。
「だめだ。言葉が通じない」
「じゃあ」
「殺すしかないだろうな。クソ。胸糞悪いぜ」
 セイがナイフを振るが届かない。スレイが血をかけようとするが、上手くかからない。
「だめだ!届かねえ!」
 リリは天井や壁に貼り付き、素早く移動して、長くて強靭な尾で攻撃をして来る。
 いつしか、逃げ回るだけになってしまっている。
「逃げ場が無くなって来たぜ!?」
 壊れたテーブルやイスの残骸、崩れた壁などで、逃げるのも難しくなってくる。
 その中でようやく、スレイの血がかかり、スレイは爆破させるが、リリは平気でチョロチョロと動いて移動して行く。
「尻尾を切っても平気なのかよ!」
 リリは天井から3人を睨み下ろし、頭を振った。
 すると、頭から針のようなものが飛んで来る。
「うおっ!?」
 どうにか避けたものの、それは髪の毛を硬化させて飛ばして来たものだった。
「飛び道具付きか。トカゲってだけじゃないのか」
「やばいぜ、やばいぜ!これじゃ俺達、手が出せねえよ!」
 リリは天井で、長い舌をチョロチョロとさせて見下ろした。





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