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宣戦布告
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「あなたが川田 霙さんですの?」
学校を出たところで霙にそう声をかけて来た人物がいた。
「はい?そうですけど……?」
お嬢様学校の制服を着た気の強そうな美人である。そばを通る男子生徒が、彼女に熱い視線を送っているのもわかる、と霙は思った。
「どちら様?」
マヤが訊くのに、彼女は落ち着き払って、
「私は、島津利子。島津家の子孫ですわ」
半蔵とオバQが、目を丸くした。
「島津、ということは?」
「意外と大名家の子孫って、いたのね」
その利子は、値踏みするような目で霙を見ており、霙は勿論カチンと来たが、マヤも面白くないと感じた。
「で、何か?」
マヤが不敵な笑顔を浮べて言う。
「黒瀬の真秀さんと婚約なさったとか聞いたんですが、冗談ですわよね」
「冗談じゃありませんよ。本当です」
「そう。
失礼ながら、川田さんのお宅はどのようなお家柄かしら?」
霙は困った。
「ふ、普通の、家ですが?」
3代前、4代前ですらも聞いた事がない。
マヤがイライラとした様子で言う。
「何が言いたいわけ?黒瀬の若様の許婚者として文句を言いたいと?もしかして、世が世なら姫様だった自分の方がいいとか言いたいわけ?」
ケンカ腰のその言い方に、霙の方が慌てた。
「マ、マヤ」
しかし、利子もケンカ腰だ。ツンと顎を上げて言う。
「まあ、家柄だけで言っているのではございませんけど?流石にこの現代で、家柄を持ち出すような事は致しませんわ。
でも、元大名家の子孫の集まりで、何度も真秀さんとはお会いさせていただいております。素晴らしい方です。そうは思いませんか」
「へ?はい。そうですね」
(確かに。顔、頭、運動神経と高スペックだし、優しいし、話すと面白いし、正義感もあるし、それから――あら。本当に凄いわ。そんな人が、私の許婚者って)
霙は改めて考え、呆然とした。
「あなた、釣り合うと思っていらっしゃるの?」
それを聞いて、マヤが殺気立ち、半蔵とオバQは霙の前に立った。
「そっ、それは、お爺さんが」
「あなたが恥をかくといけないと思って忠告して差し上げてるんですよ」
それに、半蔵が言い返す。
「それを大きなお世話と言うんですよ」
オバQも言う。
「真秀と霙はラブラブですから」
マヤは、ツンと顎をそらして笑った。
「何だ。結局真秀に振られて悔しいだけかあ。
あ。振られる以前かな。本人に言えなくて、こんな所に姑息に来たんだ」
利子の表情がわずかに歪んだ。
「ちょ、ちょっと、落ち着いて、ね?」
霙は慌てて間に入ろうとしたが、利子とマヤが睨み合っていて、耳に入っていない。
「あんた、家柄を盾にしてるだけじゃないの?」
「何ですって?」
2人は睨み合い、そんな霙達を遠巻きに眺めながら生徒が通って行く。
「いいでしょう。では勝負をいたしましょう」
「ほう?何で勝負する?」
「全国模試の順位」
霙の顔から血の気が引いた。
「――というのでは、最初から結果がわかっていますものね」
悔しいが、霙達はホッとする。
「あなた達のお得意な、サバイバルゲームではいかが?」
「へ?サバゲー?」
霙はキョトンとした。
「私のチームと対戦いたしましょう。
あなた達が勝ったら、私は何も言いません。でも、私が勝ったら、婚約を破棄していただきます」
足元が、グニャリと形を失ったかのような気がした。
「自信がないんですか?あなたの得意なものに合わせてさしあげたのに?」
利子が嘲笑するのに、霙の頭の中で、プツンと音がしたような気がした。
「いいですよ。やりましょうよ」
霙がズイッと前に出た。
そして、睨み合う。
「詳しい事は、後程。
楽しみにしておりますわ」
利子がクルリと踵を返して歩いて行くのを、霙達は憎々し気に、ほかの生徒達はウットリと見送った。
「おいおいおい!マジかよ!」
見ていた軍曹とハカセは青くなり、
「取り敢えず真秀に連絡した方がいいかな」
とスマホを取り出した。
学校を出たところで霙にそう声をかけて来た人物がいた。
「はい?そうですけど……?」
お嬢様学校の制服を着た気の強そうな美人である。そばを通る男子生徒が、彼女に熱い視線を送っているのもわかる、と霙は思った。
「どちら様?」
マヤが訊くのに、彼女は落ち着き払って、
「私は、島津利子。島津家の子孫ですわ」
半蔵とオバQが、目を丸くした。
「島津、ということは?」
「意外と大名家の子孫って、いたのね」
その利子は、値踏みするような目で霙を見ており、霙は勿論カチンと来たが、マヤも面白くないと感じた。
「で、何か?」
マヤが不敵な笑顔を浮べて言う。
「黒瀬の真秀さんと婚約なさったとか聞いたんですが、冗談ですわよね」
「冗談じゃありませんよ。本当です」
「そう。
失礼ながら、川田さんのお宅はどのようなお家柄かしら?」
霙は困った。
「ふ、普通の、家ですが?」
3代前、4代前ですらも聞いた事がない。
マヤがイライラとした様子で言う。
「何が言いたいわけ?黒瀬の若様の許婚者として文句を言いたいと?もしかして、世が世なら姫様だった自分の方がいいとか言いたいわけ?」
ケンカ腰のその言い方に、霙の方が慌てた。
「マ、マヤ」
しかし、利子もケンカ腰だ。ツンと顎を上げて言う。
「まあ、家柄だけで言っているのではございませんけど?流石にこの現代で、家柄を持ち出すような事は致しませんわ。
でも、元大名家の子孫の集まりで、何度も真秀さんとはお会いさせていただいております。素晴らしい方です。そうは思いませんか」
「へ?はい。そうですね」
(確かに。顔、頭、運動神経と高スペックだし、優しいし、話すと面白いし、正義感もあるし、それから――あら。本当に凄いわ。そんな人が、私の許婚者って)
霙は改めて考え、呆然とした。
「あなた、釣り合うと思っていらっしゃるの?」
それを聞いて、マヤが殺気立ち、半蔵とオバQは霙の前に立った。
「そっ、それは、お爺さんが」
「あなたが恥をかくといけないと思って忠告して差し上げてるんですよ」
それに、半蔵が言い返す。
「それを大きなお世話と言うんですよ」
オバQも言う。
「真秀と霙はラブラブですから」
マヤは、ツンと顎をそらして笑った。
「何だ。結局真秀に振られて悔しいだけかあ。
あ。振られる以前かな。本人に言えなくて、こんな所に姑息に来たんだ」
利子の表情がわずかに歪んだ。
「ちょ、ちょっと、落ち着いて、ね?」
霙は慌てて間に入ろうとしたが、利子とマヤが睨み合っていて、耳に入っていない。
「あんた、家柄を盾にしてるだけじゃないの?」
「何ですって?」
2人は睨み合い、そんな霙達を遠巻きに眺めながら生徒が通って行く。
「いいでしょう。では勝負をいたしましょう」
「ほう?何で勝負する?」
「全国模試の順位」
霙の顔から血の気が引いた。
「――というのでは、最初から結果がわかっていますものね」
悔しいが、霙達はホッとする。
「あなた達のお得意な、サバイバルゲームではいかが?」
「へ?サバゲー?」
霙はキョトンとした。
「私のチームと対戦いたしましょう。
あなた達が勝ったら、私は何も言いません。でも、私が勝ったら、婚約を破棄していただきます」
足元が、グニャリと形を失ったかのような気がした。
「自信がないんですか?あなたの得意なものに合わせてさしあげたのに?」
利子が嘲笑するのに、霙の頭の中で、プツンと音がしたような気がした。
「いいですよ。やりましょうよ」
霙がズイッと前に出た。
そして、睨み合う。
「詳しい事は、後程。
楽しみにしておりますわ」
利子がクルリと踵を返して歩いて行くのを、霙達は憎々し気に、ほかの生徒達はウットリと見送った。
「おいおいおい!マジかよ!」
見ていた軍曹とハカセは青くなり、
「取り敢えず真秀に連絡した方がいいかな」
とスマホを取り出した。
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