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自分達のかたち
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ふと、霙は思い出した。
「あれ?成宮 薫?確かこの前のメールで、友達になったって言ってた人よね。美人なタイプってあったから、てっきり女子かと思ってたんだけど」
「いや?男だ。男だな?」
「男だよ」
確認した真秀に、成宮は即答する。
「いよう、真秀。王子様――若様の登場か?」
マヤがニヤニヤしながら近付いて来る。
真秀は、
(こいつらが若様って言っても、嫌な感じはしないんだよな)
とぼんやりと思う。
「助かったよ。いやあ、霙が焦っちゃってさあ。まあ、霙が羨ましいだけのバカが余計に八つ当たりしたんで、今日は本当にピンチでね」
霙は慌てて否定する。
「そんな、マヤ!そこまで私」
「追い詰められてただろ?違うのか?」
マヤに言われ、霙はシュンとした。
そして真秀は、マヤに「しっかり見てろ」と怒られたように感じた。
「悪かったな。
霙。何でも言えよ。相談でもグチでもいい。八つ当たりでも。俺も霙も、お互いにいい所を見せようとし過ぎたらしい。俺達はこれから、一緒になる。遠慮もいいかっこも無理も不用だ。何せ、人生は長いんだからな。素のままの俺達で、俺達のかたちを作っていけばいい。
霙は霙のままで、俺のところに来てくれ」
霙は笑って、うんと頷いた。
「あ、まずい。文化祭の準備終わらせなきゃ、明日早朝から準備になるよ」
それをニヤニヤとして見ていたマヤがはっと思い出して言うのに、霙もはっとした。
「それはまずいじゃないの。
真秀達、今日はどうするの?明日の文化祭、来る?」
少し期待が膨らむ。
が、真秀は残念そうに、
「帰らないとなあ。途中、サービスエリアから家に電話はしたけど」
と言うと、成宮もあははと笑う。
「俺も、明日は母ちゃんの7回忌なんだよ」
「それは帰らないとな」
「だめよね」
「親の法事だもんね」
「だよな」
そうして、真秀と成宮は帰って行った。
霙とマヤは教室へ戻って行く。
霙は、目に見えて上機嫌で、足取りも軽い。
「良かったじゃないの」
「いやあ、でも、悪い事しちゃったな」
「いいのよ、たまには。
で、どう」
「何が?」
「改めてプロポーズされてたけど」
霙はピタリと動きを止め、そのまましばらくかたまってから、
「いやあ、恥ずかしい!」
としゃがみ込んだ。
その霙達の一件がどんな契機になったのか、クラスは異様に盛り上がり、準備は無事に済んで、文化祭に間に合った。
そして霙にとっては恥ずかしい事に、クラスの女子が「川田さんと若様を応援する会」を作ってしまった。霙に絡んで来ていたグループも入っており、八つ当たりと嫌みを謝罪したし、クラスの男子からも、「思い出の文化祭になった」「これはたぶん一生忘れない」と言われ、霙が悶絶したのは、また別の話だ。
やはり毎晩、真秀と霙は、メールでやり取りをしていた。
日課のそれを終えた真秀は、待ち受け画面を見た。
「必ず合格して、そっちへ行く。そうしたら、今度は、する。おじさんのいない時!
いや、まずは普通のデートだな。買い物とかも一緒に――あ。霙のカップとかも、用意したらいいのかな。いや、それはどうなんだろうな。そのくらいは普通だよな。
でも、おじさんとか何か言いそう」
頭を抱えたり振ったりして考え始める真秀を、レインが見上げて、「遊ぶの?遊びの時間なの?」とじゃれついて行く。
そして、真秀は我に返る。
「しっかりしろ。まずは合格しないと話にならん」
レインを床に下ろし、真秀は問題集に向かった。
真秀の両親は、居間でお茶を飲んでいた。
「真秀が授業をさぼっていきなり霙ちゃんに会いに行ったのには驚いたなあ」
「そうね。でも、霙ちゃんが元気になって良かったわ」
「そうだよな。でも、真秀も最近、時々面白い行動するよな」
「初恋ですもの。どうすればいいのか、わからないんだわ」
「初恋か。奥手だな」
「だって、仲のいいお友達もこの前やっとできたみたいなのよ」
「……大丈夫か、あいつは」
「出来が良すぎるのも困ったものね。
でも、大丈夫じゃないかしら。成宮君って、いい子よ。成宮君のことを話す時、真秀の顔が自然になるの」
「そうか。だったらいいか」
「ええ」
2人は同時にお茶を啜った。
「あれ?成宮 薫?確かこの前のメールで、友達になったって言ってた人よね。美人なタイプってあったから、てっきり女子かと思ってたんだけど」
「いや?男だ。男だな?」
「男だよ」
確認した真秀に、成宮は即答する。
「いよう、真秀。王子様――若様の登場か?」
マヤがニヤニヤしながら近付いて来る。
真秀は、
(こいつらが若様って言っても、嫌な感じはしないんだよな)
とぼんやりと思う。
「助かったよ。いやあ、霙が焦っちゃってさあ。まあ、霙が羨ましいだけのバカが余計に八つ当たりしたんで、今日は本当にピンチでね」
霙は慌てて否定する。
「そんな、マヤ!そこまで私」
「追い詰められてただろ?違うのか?」
マヤに言われ、霙はシュンとした。
そして真秀は、マヤに「しっかり見てろ」と怒られたように感じた。
「悪かったな。
霙。何でも言えよ。相談でもグチでもいい。八つ当たりでも。俺も霙も、お互いにいい所を見せようとし過ぎたらしい。俺達はこれから、一緒になる。遠慮もいいかっこも無理も不用だ。何せ、人生は長いんだからな。素のままの俺達で、俺達のかたちを作っていけばいい。
霙は霙のままで、俺のところに来てくれ」
霙は笑って、うんと頷いた。
「あ、まずい。文化祭の準備終わらせなきゃ、明日早朝から準備になるよ」
それをニヤニヤとして見ていたマヤがはっと思い出して言うのに、霙もはっとした。
「それはまずいじゃないの。
真秀達、今日はどうするの?明日の文化祭、来る?」
少し期待が膨らむ。
が、真秀は残念そうに、
「帰らないとなあ。途中、サービスエリアから家に電話はしたけど」
と言うと、成宮もあははと笑う。
「俺も、明日は母ちゃんの7回忌なんだよ」
「それは帰らないとな」
「だめよね」
「親の法事だもんね」
「だよな」
そうして、真秀と成宮は帰って行った。
霙とマヤは教室へ戻って行く。
霙は、目に見えて上機嫌で、足取りも軽い。
「良かったじゃないの」
「いやあ、でも、悪い事しちゃったな」
「いいのよ、たまには。
で、どう」
「何が?」
「改めてプロポーズされてたけど」
霙はピタリと動きを止め、そのまましばらくかたまってから、
「いやあ、恥ずかしい!」
としゃがみ込んだ。
その霙達の一件がどんな契機になったのか、クラスは異様に盛り上がり、準備は無事に済んで、文化祭に間に合った。
そして霙にとっては恥ずかしい事に、クラスの女子が「川田さんと若様を応援する会」を作ってしまった。霙に絡んで来ていたグループも入っており、八つ当たりと嫌みを謝罪したし、クラスの男子からも、「思い出の文化祭になった」「これはたぶん一生忘れない」と言われ、霙が悶絶したのは、また別の話だ。
やはり毎晩、真秀と霙は、メールでやり取りをしていた。
日課のそれを終えた真秀は、待ち受け画面を見た。
「必ず合格して、そっちへ行く。そうしたら、今度は、する。おじさんのいない時!
いや、まずは普通のデートだな。買い物とかも一緒に――あ。霙のカップとかも、用意したらいいのかな。いや、それはどうなんだろうな。そのくらいは普通だよな。
でも、おじさんとか何か言いそう」
頭を抱えたり振ったりして考え始める真秀を、レインが見上げて、「遊ぶの?遊びの時間なの?」とじゃれついて行く。
そして、真秀は我に返る。
「しっかりしろ。まずは合格しないと話にならん」
レインを床に下ろし、真秀は問題集に向かった。
真秀の両親は、居間でお茶を飲んでいた。
「真秀が授業をさぼっていきなり霙ちゃんに会いに行ったのには驚いたなあ」
「そうね。でも、霙ちゃんが元気になって良かったわ」
「そうだよな。でも、真秀も最近、時々面白い行動するよな」
「初恋ですもの。どうすればいいのか、わからないんだわ」
「初恋か。奥手だな」
「だって、仲のいいお友達もこの前やっとできたみたいなのよ」
「……大丈夫か、あいつは」
「出来が良すぎるのも困ったものね。
でも、大丈夫じゃないかしら。成宮君って、いい子よ。成宮君のことを話す時、真秀の顔が自然になるの」
「そうか。だったらいいか」
「ええ」
2人は同時にお茶を啜った。
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