オーバーゲート

JUN

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キメラはどこに?

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 キメラを探して、ひたすらウロウロする。20階に来ると、ボス部屋から出て来たグループが肩を落としていた。
「また魔女だ。クソッ」
「俺達はひたすら将軍が出るまでアタックする係だ。やるしかない」
「そうだな。認めてもらえれば、マリオ・ルターのチームに入れてくれるんだからな」
「さあ、やろう!」
 そう言って、部屋の前で肩を叩き合っていた。
 俺達はそこを離れ、言い合った。
「将軍は手に入ったも同然だな」
「でも、録画されてないから、倒したとは証明できないぜ」
「向こうは『チーム』だ。それで、カメラは2台。持ってないチームメンバーがやったというんだろ。
 もしくは、今の奴が録画してて、そのデータを使うとか」
「汚ねえな」
「それをギャフンと言わせてやるんだ」
「鳴海ちゃん、かなり怒ってる?」
「鳴海ちゃん言うな」

 キメラはどこだ。
 これまで目撃情報のあった階はバラバラだが、75階から85階に集中している。なので、この間を俺達はウロウロしていた。
 マリオの仲間と思われる探索者も見かけるが、向こうも見つけられていないらしい。
 それはそうと、マリオはどこにいるんだろう?
「いねえな」
「まあ、ちょっと落ち着いて食事でもして休もう。もしかしたら、匂いに釣られて出て来るかも知れないぞ」
 冗談を言いながら、階段に座ってバッグから弁当を出す。転移石を使って柏木に持って来てもらった、生野菜サラダとチキンソテー弁当だ。
 今度、ロブスターとかマグロとかをおすそ分けしよう。
「しかし、虎と牛か。エサで釣るなら、肉?それとも草?」
「頭の虎は肉食だけど、胃袋の牛は草食だよな。
 いや、地球の虎や牛とは別物だからな」
 言って、横に置いたサラダを取ろうとして、気付いた。
 デカい何かが、そこにいた。
「……采真。これ何だと思う?」
 むしゃむしゃとサラダのカップに口を突っ込んで食べている。そいつは、虎の頭に、牛の体をしていた。
「牛って、黒毛牛か。反射的に牛乳のやつを想像してたぜ」
 采真がそれを見ながら言った。
「ホルスタインか。牛っぽいな。牛乳パックに描いてある絵ってあれだもんな」
「だろ」
「これ、肉は黒毛和牛みたいなもんかな。まあ、和牛はないか。伊牛?」
 俺達は言いながら、静かに武器に手を伸ばした。
 と、キメラが慌てる。
「ブモオー、ガルウウ!?」
 サラダの容器に突っ込んだ顔が、取れなくなったのだ。
「落ち着け、な」
 暴れるキメラをなだめながら、
「いや、チャンスだろ」
と我に返った。
 風で首の切断を試みる。
 が、弾かれる。
 火か?焼肉だな。
「グオオオオオ!!」
 暴れてグルグルと回る。少し香ばしい匂いがした。
「やべえ。焼肉食いたい」
 言いながら、采真が剣を心臓の辺りに突き立てようとする。
 騒ぎに気付いたのか、探索者が寄って来た。
「キメラだ!」
 手を出そうとする奴を、別の探索者が止める。
 誰かが先に手を出していたら、危険な時以外手を出さないのが常識だし、それも一言断ってからだ。
「固いぜ」
「竜よりましだろ」
「それより逃がさないようにしたい。采真、氷で囲むぞ」
「わかった!」
 俺は、俺達とキメラの周りに氷の壁を作った。
 そこでやっとサラダ容器が外れて、キメラは自由になった。
 千切りキャベツが鼻の頭にくっついているのが笑える。
 だが、危険は本物だ。
「采真。ホルモン欲しいか?」
「魔獣のホルモンって怖くない?」
「だよな。じゃあ」
 胴を狙って氷の槍を撃ち込む。
 が、横っ飛びにキメラは除け、突っ込んで来る。
「鳴海!」
「闘牛はスペインだよな」
 言い、足元に魔術を撃ち込んで穴を掘り、地面に潜り込む。そして、真上を通過するキメラに氷を撃ち込んだ。
「グロオオオオ!」
 鳴いて、足を折る。
 と、頭と体の模様が入れ替わった。
「はあ!?」
「器用なやつめ」
 今度は口から涎を垂らしながら、采真に飛び掛かって行く。
 采真がそれよりも早く横へ飛び、すれ違いざまに頭に斬りつける。
「ブモオオオ!」
 頭を振って、血を流しながらも、俺達を憎らし気に睨む。
「なあ、采真。これ、どうしたら死ぬんだ?」
「それ、俺も訊こうと思ってたところだぜ」
 キメラは、トラの頭と牛の体に戻っていた。



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