73 / 89
反撃
しおりを挟む
罠にかけるのは、ペクにした。こいつが一番調子に乗り易く、ビビリでもある。チョはクマなどが出る所まではいけないし、ハンはキムに近すぎて、相談でもされれば警戒されてしまう。ノは借金を返済した残りで旅行中だ。
ペクは、手の届かないような上級者ランクの防具に目をくらませた。
「そうですか。良かった。では」
防具を箱に入れ、ピカリと光を当てる。
隣の箱には割れた防具が入っていて、こちらを先に光らせている。
「今のは?」
「最後の仕上げですよ。これで何の心配もいりませんよ。さあ、さあ!」
有無を言わせずに、その防具を着けさせる。
ペクは一瞬不安そうな顔をしたものの、高級防具の前には、吹き飛んだらしい。
そして、俺と采真を万が一のエスコート役という事にして、俺達はゲートをくぐった。
30階。ペクの到達階であり、大トカゲが程よく出て来る階だ。
「頑丈なのをアピールするために、クマに当たってみましょうか!」
「え?」
ペクはギョッとしたようだ。
「まあ、クマは危ないですか。じゃあ、大トカゲで」
「はあ!?」
ペクは、俺の顔を凝視した。
「大トカゲにやられたんですよね。その大トカゲに当たって大丈夫という事がわかれば安心ですよ。さあ!」
「さあ、さあ!」
采真も言って、背後から腕をとって動けなくする。
「ま、まあ、大丈夫だよな?」
「はい。象に踏まれても大丈夫」
ペクはそれで安心したらしかった。
お誂え向きに、大トカゲが来た。
「そうだ。さっきの仕上げもできているでしょうから心配ないですよ」
俺はにこにことして言う。
「ああ、あれ」
「はい。元の防具にかけられていた痕跡をまるまる、表も裏もコピーしてかける最新装置です」
「……は?」
一気にペクの顔色が悪くなる。
しかし、嘘だ。あれは本当は、ただの光だ。カメラのフラッシュを光らせただけだ。
「ま、待て。痕跡をまるまるコピー?」
ペクは震え出した。
俺は一層笑顔を深くした。
「はい。人によって、ありますからね。蒸れ防止とか、クッション強めとか、小さい盾をかけておくとか」
「俺は、そそそんな」
「来ましたよ!」
采真が腕を拘束した形で、笑った。
「やめてくれ!」
「大丈夫、大丈夫」
大トカゲが、こちらを見た。
「じゃあ、ちょっと向きを調整しましょうか。尻尾が当たるように」
俺は大トカゲに近付いて行き、チョンチョンと攻撃を仕掛けた。それで、大トカゲは向きを変え、位置を変え、その度に尻尾がブンブンと振られる。
「ぎゃああ!やめろ!やめてくれ!絶対にだめだ!」
ビデオカメラを持ったフィールドテスターは、そんな泣きわめくペクを執拗に撮影している。
「ええ?何で?」
采真が楽しそうに訊いた。
「だ、だって、痕跡を全部コピーしたんだろ!?裏も表も!」
「それの何が問題なんだ?」
ペクはゴクリと唾をのんだ。
チッ。もう少しか。
風を巻き上げて、大トカゲをペクの方へ近付けた。
尻尾がブンとうなりを上げ、ペクの前髪がそよりと動く。
「壊れるような仕掛けをしてあったんだよ!」
ペクが叫び、それを聞いた采真はペクを背後に転がして、唸りを上げる尻尾を切り飛ばした。俺は大トカゲの口の中に火を撃ち込んで燃やした。
大トカゲが絶命するのを、ペクは震えて見ていた。
「ちゃんと撮りましたね?」
テスターは、
「撮りました」
と笑う。
「え?何?」
キョトンとするペクに俺達は笑顔で近付いた。
「さあて。どんな仕掛けを誰の指図でしてあったのか、話してもらいますよ。まあ、証拠も残っているのでわかっているんですけどね」
ペクは真っ青になって、言葉もなく震えていた。
ペクは、手の届かないような上級者ランクの防具に目をくらませた。
「そうですか。良かった。では」
防具を箱に入れ、ピカリと光を当てる。
隣の箱には割れた防具が入っていて、こちらを先に光らせている。
「今のは?」
「最後の仕上げですよ。これで何の心配もいりませんよ。さあ、さあ!」
有無を言わせずに、その防具を着けさせる。
ペクは一瞬不安そうな顔をしたものの、高級防具の前には、吹き飛んだらしい。
そして、俺と采真を万が一のエスコート役という事にして、俺達はゲートをくぐった。
30階。ペクの到達階であり、大トカゲが程よく出て来る階だ。
「頑丈なのをアピールするために、クマに当たってみましょうか!」
「え?」
ペクはギョッとしたようだ。
「まあ、クマは危ないですか。じゃあ、大トカゲで」
「はあ!?」
ペクは、俺の顔を凝視した。
「大トカゲにやられたんですよね。その大トカゲに当たって大丈夫という事がわかれば安心ですよ。さあ!」
「さあ、さあ!」
采真も言って、背後から腕をとって動けなくする。
「ま、まあ、大丈夫だよな?」
「はい。象に踏まれても大丈夫」
ペクはそれで安心したらしかった。
お誂え向きに、大トカゲが来た。
「そうだ。さっきの仕上げもできているでしょうから心配ないですよ」
俺はにこにことして言う。
「ああ、あれ」
「はい。元の防具にかけられていた痕跡をまるまる、表も裏もコピーしてかける最新装置です」
「……は?」
一気にペクの顔色が悪くなる。
しかし、嘘だ。あれは本当は、ただの光だ。カメラのフラッシュを光らせただけだ。
「ま、待て。痕跡をまるまるコピー?」
ペクは震え出した。
俺は一層笑顔を深くした。
「はい。人によって、ありますからね。蒸れ防止とか、クッション強めとか、小さい盾をかけておくとか」
「俺は、そそそんな」
「来ましたよ!」
采真が腕を拘束した形で、笑った。
「やめてくれ!」
「大丈夫、大丈夫」
大トカゲが、こちらを見た。
「じゃあ、ちょっと向きを調整しましょうか。尻尾が当たるように」
俺は大トカゲに近付いて行き、チョンチョンと攻撃を仕掛けた。それで、大トカゲは向きを変え、位置を変え、その度に尻尾がブンブンと振られる。
「ぎゃああ!やめろ!やめてくれ!絶対にだめだ!」
ビデオカメラを持ったフィールドテスターは、そんな泣きわめくペクを執拗に撮影している。
「ええ?何で?」
采真が楽しそうに訊いた。
「だ、だって、痕跡を全部コピーしたんだろ!?裏も表も!」
「それの何が問題なんだ?」
ペクはゴクリと唾をのんだ。
チッ。もう少しか。
風を巻き上げて、大トカゲをペクの方へ近付けた。
尻尾がブンとうなりを上げ、ペクの前髪がそよりと動く。
「壊れるような仕掛けをしてあったんだよ!」
ペクが叫び、それを聞いた采真はペクを背後に転がして、唸りを上げる尻尾を切り飛ばした。俺は大トカゲの口の中に火を撃ち込んで燃やした。
大トカゲが絶命するのを、ペクは震えて見ていた。
「ちゃんと撮りましたね?」
テスターは、
「撮りました」
と笑う。
「え?何?」
キョトンとするペクに俺達は笑顔で近付いた。
「さあて。どんな仕掛けを誰の指図でしてあったのか、話してもらいますよ。まあ、証拠も残っているのでわかっているんですけどね」
ペクは真っ青になって、言葉もなく震えていた。
0
あなたにおすすめの小説
使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる