女心より魚心~釣り修行は人生修行に通ず

JUN

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構いすぎに注意

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 祖父の法事で、久々に親類一同が集まった。
 この祖母の家では猫を飼っており、早速、子供達が猫を囲んで構い倒している。
「猫ちゃん、煮干し食べる?ほら、あーん」
「可愛い。毛がつやつやしてるぅ」
「猫ちゃん、私も抱っこする。おいで」
 猫はそのうち迷惑そうに一声鳴いて、その後、姿を見せなかった。
 それで僕は、思い出した。彼女に、
「鬱陶しい」
と別れを告げられ、このところずっとウジウジと元気のない友人を。
 マメに電話したり、休みの日は誘ったり、プレゼントをしたりしていたのにな。何がだめだったのだろう。
 わからない。

 空は晴れ渡り、高く澄んでいる。
 今日は船でアマダイを狙う。
「オキアミのしっぽをちぎって、そこから針を、エビの身が真っすぐになるように刺せ。そうそう」
 北倉さんの見本通りにエビを刺す。
「タナが重要だからな。違う魚がかかったら、タナを変えて探ってみるんだ」
「はい」
「誘いすぎたら釣れないからな、今時分の潮だと」
「へえ。放っておく感じですか」
「そうそう。構い過ぎてもだめなんだよなあ」
 北倉さんは
「お」
と言って仕掛けを引き上げたら、40センチのオニカサゴだった。
「うわあ。痛そうな魚ですね」
「オニカサゴだ。美味いんだけど、トゲとヒレに毒があるから触らないようにな」
 北倉さんは言って、ハサミで掴んで針から外した。
「うわあ、はい!」
 早速、仕掛けを入れる。
 と、グンッと引きが来た。
「何かきた!」
 巻いていくと、小さいタイっぽいのがついている。
「これは何ですか」
「キダイだな。ちょっとタナが浅いな」
「じゃあ、今度はもう少し落としてみます」
 もうちょい下、もうちょい下。
「うわ、何かデカイ!」
 反対隣のおじさんが、大きな何かをかけた。それに皆、チラチラと目をやる。
「お、マトウダイかあ」
「マトウダイ?」
「ほら、黒い点があるだろ、体に。これが的みたいだからマトウダイ」
 おじさんがにこにこと教えてくれる。
「へえ。確かに的みたいですねえ」
「魚の名前は、わかりやすいのが多いよなあ」
 北倉さんとおじさんは笑いながら言っていたが、いきなり竿先が、ググッと引き込まれた。
「来たぞ来たぞ」
 北倉さんはリールを巻いていく。
 やがて、魚が現れた。どこかのっぺりと間抜けな顔とでも言うのか。
「アマダイ、本命だぜ」
「おおお!」
 美味しそうだと、カンが告げている。これは、釣らなくてはーー!
 来い、来い、来い――来た!
 ガツンというあたりに大きな引き。
「お、航平にも来たか?いいぞ、いいぞ」
 少しずつ上がって来、そして、ピンクのでアマダイが海面に上がって来る。
「よっしゃあ!」
 タモですくい、取り込む。
 なるほどなあ。人との距離感も構い方も、これと同じか。近すぎ、構い過ぎてもだめ。離れすぎ、放っておきすぎてもだめ。加減が大事って事なんだな。難しいなあ。
「今日の宴も、楽しみだなあ」
 思わず僕と北倉さんは唾を飲み込んで、笑い出した。

 今日の宴も、最高だ。刺身、煮物、蒸し物、塩焼き。塩焼きはウロコが付いたままで、小さいウロコガ逆立っている。
「いただきまあす!--何だこれ!?パリパリする!?」
 塩焼きを食べて驚いた僕に、北倉さんが言う。
「アマダイのウロコは柔らかいから食べれるんだ。パリパリするだろ」
「はい!面白いなあ」
「上品で、いやあ、美味い」
 オニカサゴとアマダイとキダイの刺身3種盛りもいただく。
「オニカサゴって見た目は凄く悪そうなのに、美味しいですねえ」
「だろう?唐揚げもいけるぞ」
 塩をつけて、パクリ。
「んん!美味しい!」
 ああ、食欲の秋。魚釣り万歳!




『煮物』
   酒、しょうゆ、、みりん、しょうが、昆布だしで炊く。
『中華風蒸し物』
   耐熱皿に乗せ、酒、しょうゆ、みりん、しょうが、長ネギを乗せて蒸す。仕上
   がりにごま油を垂らして香りを付ける。




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